略語:
達成基準 3.1.4 を理解する
この達成基準の意図
この達成基準の意図は、利用者が略語の元の語句を知ることができるようにすることである。
達成基準 3.1.4 の具体的なメリット
この達成基準は、次のような利用者にメリットがある:
文字から単語を復号化しづらい。
画面拡大ソフトに依存している(画面を拡大すると、前後の文脈の手がかりをつかみづらくなる)。
記憶力に限界がある。
前後の文脈を用いて理解するのが困難である。
略語は様々なかたちで利用者を混乱させることがある:
略語の中には、普通の単語のようには見えなくて、その言語の通常の規則に従って発音できないものがある。例えば、英語の単語 "room" には "rm," という略語があるが、英語のどの単語又は音素にも該当するものがない。利用者が正しく読むためには、"rm" が "room" という単語の略語であるということを知っていなければならない。
時には、同じ略語であっても、異なる文脈においては異なる意味になることがある。例えば、英語の文章 "Dr. Johnson lives on Boswell Dr.," の場合、最初の "Dr." は "Doctor" の略語で、2つめは "Drive" の略語である(「通り」という意味の単語)。利用者がその略語がどういう意味なのかを知るためには、前後の文脈を理解できなければならない。
頭字語には、よくある単語と同じスペルだが、異なる意味で使われているものがある。例えば、"JAWS" は "Job Access with Speech." というスクリーンリーダーの頭字語である。それは、顎(あご)のことを指す英語の単語でもある。この場合、頭字語がよく使われる単語とは異なる意味で用いられている。
頭字語の中には、よくある単語と同じように発音するが、綴りが異なるものもある。例えば、Synchronized Multimedia Integration Language の頭字語である S M I L は、英語の単語の "smile" と同じように発音する。
また、視覚障害のある次のような利用者にも役立つ:
画面拡大ソフトで拡大していて前後の文脈を見失っている。
達成基準3.1.4 の事例
コンテンツ中で初めて使用されているところで元の語句が提供されている略語
"World Wide Web Consortium" という名前が、ウェブページの最初の見出しとして使われている。略語の "W3C" が同じ見出しで括弧書きで示されている。
辞書検索フォーム
あるウェブサイトには、オンライン頭字語辞書サービスが提供する検索フォームが設置されている。利用者が頭字語を入力すると、検索結果として、考えられうる元の語句の一覧が表示される。
医療系ウェブサイト
医療系のあるウェブサイトは、医者と患者の両方に情報を提供している。そのサイトには、カスケード式の辞書がある。とても専門的な医学辞書が最初で、一般向けの医学辞書が二番目にある。また、カスケードには、そのサイト固有の頭字語及び略語があり、最後に普通の辞書もある。リストの最後にある普通の辞書は、テキストにあるほとんどの単語の定義を提供している。また、専門的な医学辞書は、一般的ではない医学用語の定義を提供している。複数の辞書にある単語の定義は、カスケードの順序で一覧表示される。頭字語及び略語の意味は、頭字語及び略語の一覧が提供している。
略語の元の語句
それぞれの略語の元の語句が、プログラムで判断可能な方法で提供されている。テキストを読み上げるユーザーエージェントは、その元の語句を用いて略語を読み上げることができる。その他のユーザーエージェントは、ツールチップ又は状況に応じたヘルプで、その略語の元の語句を提供することができるかもしれない。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
Acronym finder - このサイトでは、頭字語の完全一致検索、前方一致検索、ワイルドカード検索、逆引きを行うことができる。
達成基準3.1.4 の実装方法及び不適合事例 - 略語
この節にある番号付の項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する実装方法、又は複数の実装方法の組合せを表している。WCAG 2.0 適合要件のすべてが満たされている場合にのみ、次に挙げる実装方法により、この達成基準を満たすことができる。
達成基準を満たすことのできる実装方法
使用法: そのコンテンツに合致する状況を以下から選択すること。それぞれの状況には、WCAG ワーキンググループがその状況において十分であると判断する、番号付の実装方法(又は、実装方法の組合せ)がある。
状況 A: 略語がそのウェブページ内で一つの意味しか持たない場合:
ウェブページ上で略語の初出時に、以下のいずれかの方法でG102: 略語の元の語又は説明を提供する:
以下のいずれかの方法を用いて、その略語がウェブページ上に出現する度にG102: 略語の元の語又は説明を提供する:
状況 B: 略語が同じウェブページで異なるものを意味している場合:
以下のいずれかの方法を用いて、その略語がウェブページ上に出現する度にG102: 略語の元の語又は説明を提供する:
達成基準 3.1.4 でさらに対応が望まれる実装方法(参考)
適合するためには必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするためには、次の付加的な実装方法もあわせて検討するとよい。ただし、すべての状況において、すべての実装方法が使用可能、または効果的であるとは限らない。
そのウェブページ上で一意な略語を用いる(リンク追加予定)
利用者が略語を認識しやすいような視覚的フォーマットを用いる(リンク追加予定)
音声読み上げ機能がある辞書の利用を可能にし、表示された文字情報を復号化することが困難な利用者を支援する(リンク追加予定)
音声で検索できる辞書を提供し、キーボードの操作や単語を綴ることが難しい利用者が発声することで言葉の意味を検索できるようにする(リンク追加予定)
達成基準 3.1.4 のよくある不適合事例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準 3.1.4 に適合していないとみなした、よくある不適合事例である。
(今のところ、文書化されている不適合事例がない)
重要な用語
- メカニズム
結果を得るためのプロセス又は手法。
- 略語
単語、語句、又は名称の短縮形で、その略語が言語の一部になっていないもの。
注記 1: これには、次のような頭文字語及び頭字語を含む:
頭文字語は、その名称あるいは語句に含まれる単語や音節の頭文字による、名称あるいは語句の短縮形である。
注記 1: すべての言語で定義されているわけではない。
事例 1: SNCFは、フランス語の頭文字語で、フランス国有鉄道の "Societe Nationale des Chemins de Fer "の頭文字を含んでいる。
事例 2: ESPは、"extrasensory perception"(超感覚的知覚)の頭文字語である。
頭字語 は、(名称や語句にある)頭文字あるいは他の単語の一部で一つの単語のように発音されるような省略形である。
事例 : NOAAは、米国の "National Oceanic and Atmospheric Administration" の頭文字による頭字語である。
注記 2: 会社名の頭字語だったものをそのまま会社名とする会社がある。そのような場合、その会社の新しい名前は単語(例:Ecma)であり、その単語はもはや頭字語ではない。