WCAG 2.0解説書

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「WCAG 2.0 解説書」のイントロダクション

「WCAG 2.0 解説書」は、"WCAG (Web Content Accessibility Guidelines) 2.0" [WCAG20]を理解して実践するために不可欠な案内書である。WCAG 2.0 の規定となる定義や要件はすべて WCAG 2.0 自体の文書で読むことができるが、その考え方や条項に馴染みのない方もいるかもしれない。「WCAG 2.0 解説書」は、読者の皆さんがその意図やどのようにガイドラインと達成基準が連携しているのかをよりよく理解できるように、各ガイドライン、及び、各達成基準について、WCAG 2.0 の規定にはならない詳細な解説を提供している。また、それぞれの達成基準を満たすのに十分であることをワーキンググループが確認した実装方法、及び、実装方法の組合せの事例も紹介している。そして、それぞれの実装方法の詳細にもリンクを提供している。

この文書は、入門書ではなく、ガイドラインとその達成基準に関する詳細な技術解説である。WCAG やその関連技術文書、教育用素材などへのイントロダクションは、ウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン (WCAG) 概要を参照のこと。

「WCAG 2.0 解説書」は、ガイドラインごとに構成されている。各ガイドラインには、ガイドライン X.X を理解する という節がある。そのガイドラインの意図が説明されているほか、実装方法の中でも、そのガイドラインには関係あるが特定の達成基準には関係のない実装方法が、そこに列挙されている。ガイドライン X.X を理解するという節がある。そのガイドラインの意図が説明されているほか、実装方法の中でも、そのガイドラインには関係あるが特定の達成基準には関係のない実装方法が、そこに列挙されている。

ガイドライン X.X を理解する という節の後には、そのガイドラインの達成基準ごとに、達成基準 X.X.X を理解するという節が続いている。これらの節にはそれぞれ以下の情報が提供されている:

WCAG 2.0 文書の各ガイドラインからは、この文書のガイドライン X.X を理解する という節に直接リンクしている。同様に、WCAG 2.0 文書の各達成基準からも、この文書の 達成基準 X.X.X を理解する という節に直接リンクしている。

個々の実装方法に関する情報については、この文書中にあるリンクから、WCAG 2.0 の実装方法(英語) で関心のある実装方法を参照のこと。

様々な障害や支援技術に関する情報については、Wikipedia にある「障害 (disabilities)」(英語) を参照のこと。

アクセシビリティの4つの原則を理解する

ガイドライン及び達成基準は、誰もがウェブコンテンツにアクセスして利用するために必要な土台となる、次の4つの原則を中心に構成されている。ウェブを利用したい誰もが、コンテンツに求めるのは次のことである:

  1. 知覚可能 - 情報及びユーザーインタフェース・コンポーネントは、利用者が知覚できる方法で利用者に提示可能でなければならない。

    • これは、利用者が提示されている情報を知覚できなければならないことを意味する(利用者の感覚すべてに対して知覚できないものであってはならない)。

  2. 操作可能 - ユーザーインタフェース・コンポーネント及びナビゲーションは操作可能でなければならない。

    • これは、利用者がインタフェースを操作できなければならないことを意味する(インタフェースが、利用者の実行できないインタラクションを要求してはならない)。

  3. 理解可能 - 情報及びユーザーインタフェースの操作は理解可能でなければならない。

    • これは、利用者がユーザーインタフェースの操作と情報とを理解できなければならないことを意味する(コンテンツ又は操作が、理解できないものであってはならない)。

  4. 堅牢性 - コンテンツは、支援技術を含む様々なユーザーエージェントが確実に解釈できるように十分に堅牢でなければならない。

    • これは、利用者が技術の進歩に応じてコンテンツにアクセスできなければならないことを意味する(技術やユーザーエージェントの進化していったとしても、コンテンツはアクセシブルなままであるべきである)。

もし、これらのいずれかが当てはまらなければ、障害のある利用者はウェブを利用することができなくなる。

それぞれの原則の下には、障害のある利用者のためのこれらの原則に対処するのに役立つ、ガイドライン及び達成基準がある。障害のある利用者を含むすべての利用者にとってコンテンツをより使いやすくする一般的なユーザビリティ・ガイドラインは数多く存在する。しかし、WCAG 2.0 においては、障害のある利用者に特有の問題に対処するガイドラインだけが含まれている。つまり、障害のある利用者がウェブにアクセスすることを阻む問題、あるいはアクセスをひどく妨げる問題が、WCAG 2.0 には含まれている。

ガイダンスのレイヤー

ガイドライン

それぞれの原則の下には、その原則に対応するガイドラインのリストがある。全部で12のガイドラインがある。ガイドラインだけの一覧は、WCAG 2.0 目次で見ることができる。ガイドラインの重要な目的の一つは、コンテンツが、できるだけ多くの利用者にとってそのままでアクセシブルであるようにすることであり、様々な利用者の感覚的、身体的及び認知的能力に合った様々な形態で再提示できるようにすることである。

達成基準

それぞれのガイドラインの下には、WCAG 2.0 に適合するためには何をしなければならないのかを具体的に記述した達成基準がある。それは、WCAG 1.0 における「チェックポイント」によく似たものである。それぞれの達成基準は、特定のウェブコンテンツをその達成基準によってテストしたときに適合もしくは不適合が判別できるように記述されている。そして、達成基準はウェブコンテンツ技術に依存しないように書かれている。

WCAG 2.0 の達成基準はすべて、コンテンツがその達成基準を満たしているかどうかを客観的に判断するテスト可能な基準として記述されている。テストには、評価プログラムのソフトウェアを用いた自動化可能なものもあれば、その一部又は全部に人間によるテストを必要とするものもある。

コンテンツが達成基準を満たしていたとしても、そのコンテンツは様々な障害のある利用者にとって利用可能であるとは限らない。ある利用者にとってのアクセシビリティを確保する上では、専門家による広く認められている定性的なヒューリスティック評価が重要である。さらに、ユーザビリティ・テスティングが推奨される。ユーザビリティ・テスティングは、その用途に応じて、利用者がコンテンツをどれだけうまく使えるかを判断することを目的としている。

様々な種類の障害のある人がどのようにウェブを利用しているのかを理解している人が、コンテンツをテストすべきである。人間によるテストを行う際には、障害のある利用者をテストグループに含めることを推奨する。

ガイドラインの各達成基準には、「WCAG 2.0 への適合方法」という文書へのリンクがあり、その文書では次のものが提供されている:

  • その達成基準を満たすことのできる実装方法

  • 任意の参考にすべき実装方法

  • 達成基準の意図、及びメリットの説明、事例

達成基準を満たすことのできる実装方法及び参考にすべき実装方法

WCAG 2.0 の中にウェブコンテンツ技術特有の実装方法を記述するのではなく、ガイドライン及び達成基準自体は、ウェブコンテンツ技術に依存しない方法で記述されている。特定のウェブコンテンツ技術(例えば、HTML)を用いてガイドラインを満たすためのガイダンスや事例を提供するために、ワーキンググループは達成基準ごとにその達成基準を満たすのに十分であると考えられる達成基準を満たすことのできる実装方法というものを特定した。達成基準を満たすことのできる実装方法の一覧は、「WCAG 2.0 文書群」の中で維持管理されている(「WCAG 2.0を満たす方法」にも反映されている)。 こうすることで、新しい実装方法が見つかったときやウェブコンテンツ技術及び支援技術の進化に応じて、その一覧を更新していくことが可能である。

留意すべきは、すべての実装方法は参考情報であるということである。「達成基準を満たすことのできる実装方法」は、WCAG ワーキンググループがその達成基準を満たすのに十分であると考えたものである。しかし、必ずしもそれらの特定の実装方法を用いる必要はない。もし、ワーキンググループが挙げた実装方法以外のものを用いるのであれば、その達成基準を満たすことのできる実装方法として確立する何らかの手段が必要となるであろう。

ほとんどの達成基準では、達成基準を満たすことのできる実装方法が複数、記載されている。記載されている達成基準を満たすことのできる実装方法のいずれかを用いて、達成基準を満たすことができる。他にも、ワーキンググループが文書化していない、達成基準を満たすことのできる実装方法があるかもしれない。達成基準を満たすことのできる実装方法が新たに確認されれば、追加されることだろう。

達成基準を満たすことのできる実装方法に加えて、数多くの参考にすべき実装方法がある。それらはアクセシビリティをさらに向上させることができるが、達成基準を満たすことのできる実装方法としては認められなかったものである。なぜなら、達成基準の要件を完全に満たすことができない、テスト可能ではない、及び/又は、ある状況においては有効で効果的な実装方法だが効果的でも役に立つわけでもない状況もある、といった理由からである。それらは、参考にすべき実装方法としてリストに挙げられていて、この文書中では達成基準を満たすことのできる実装方法のすぐ下に掲載されている。コンテンツ制作者には、ウェブページのアクセシビリティを向上させるために、必要に応じてこれらの実装方法を用いることを推奨する。

編集注記: ワーキンググループが実装方法の解説を書き上げていない場合、その実装方法のタイトルの後に「(リンク追加予定)」と記述してある。