意図
この達成基準の意図は、利用者がコンテンツ内にある各リンクの目的を理解するのを手助けすることで、利用者がそのリンクを辿りたいかどうかを判断できるようにすることである。ベストプラクティスは、同じ宛先のリンクは同じ記述になっているが、目的及び宛先が異なるリンクは異なる記述になっていることである (同じ機能を持つコンポーネントの識別に一貫性を求めている達成基準 3.2.4 も併せて参照のこと)。リンクの目的はリンクテキストから特定できるので、ユーザエージェントがページ上にある全てのリンクの一覧を提供する場合など、リンクがコンテキストから切り離されるときに、リンクを理解できる。
リンク内のテキストは、リンクの目的を説明するように意図されている。リンクが利用者を文書又はウェブアプリケーションへ導く場合、その文書又はウェブアプリケーションの名前は、リンクの目的 (その文書又はウェブアプリケーションに導くためのもの) を説明するものとして十分であろう。文書又はウェブアプリケーションの名前を使用することが必須ではないことに注意すること。他のものも、リンクの目的を説明することがある。
達成基準 2.4.2 は、ページのタイトルを取り扱っている。ここでもまた、ページに表示されている文書又はウェブアプリケーションの名前は、ページの目的を説明するのに十分であろう。リンクとタイトルが一致する又は極めて似ていることは、グッドプラクティスであり、リンクの「クリック」と利用者が着地するウェブページとの間の連続性を提供する。
この達成基準には、リンクの目的をウェブページ上にある情報からは判断できないリンクに対して例外が認められている。そのような状況では、障害のある利用者が不利な立場にあるわけではない。リンクの目的を理解するために追加入手可能な文脈が一切ないのである。しかし、この達成基準を満たすためには、そのリンクの目的を解釈するためにそのウェブページ上で利用できる文脈はどんなものであれ、そのリンクテキストで入手可能にしなればならない。
単語「メカニズム」は、制作者がデフォルトで全てのリンクをコンテキストから切り離されて完全に理解できるようにするか、このようにするための手段を提供するかのいずれかを可能にするために使用される。これは、ページによっては全てのリンクを自身で明確にすることが、ある利用者に分かりやすくなると同時に、他の利用者には分かりづらくなってしまうからである。(自身で) リンクを明確にしたり、しなかったりする能力を提供することで、障害のある利用者、ない利用者の双方の、ニーズに最も適したフォーマットでページを利用できるようになる。
例えば、100 冊の書籍のタイトルが並んでいるページに、それぞれの書籍を HTML、PDF、DOC、TXT、MP3、又は AAC でダウンロードするリンクがある場合、たいていは書籍のタイトルとその後に「HTML 版」と書いてあるようなリンクがある。そして、「次のバージョンも利用可能:」という文が続いていて、「HTML」、「PDF」、「DOC」、「TXT」、「MP3」、そして「AAC」という短いテキストのリンクがある。レベル AAA においては、一部の利用者は、このようにページが見えることを選ぶだろう。それぞれのリンクの中に書籍のタイトルがいちいち含まれていると、かえって分かりづらかったり、使うのに時間がかかってしまったりするからである。他の利用者は、各リンクがそれだけで理解可能であるように、それぞれのリンク中に書籍のタイトルが含まれるようにページが見えることを選ぶだろう。前者及び後者の両グループには、視覚障害や認知障害を持つ人々が含まれ、その障害の種類や度合いに応じて、異なる閲覧手法が用いられる可能性がある。
メリット
- この達成基準により、運動障害のある利用者が、リンク先のコンテンツへ行って、また元へ戻ってくるという無駄なキーストロークなしに、関心のないウェブページをスキップすることができるようになる。
- 認知に制約のある利用者が、余計なナビゲーションによって、必要のないコンテンツへ行ったり来たりして現在位置を見失う、ということがなくなる。
- 視覚障害のある利用者は、元のページに戻ってきたときに、コンテンツの中で居場所が分からなくなる、ということがなくなり恩恵を受ける。スクリーンリーダーのリンク一覧は、リンク先が具体的に記述されることで、情報を探す上でより便利になる。
事例
アイコンとテキストの両方が同じリンク内にある
自動投票機のアイコンと「アイルランド政府の電子選挙委員会」というテキストが、一つのリンクになっている。
書籍名のリスト
リストにある書籍が、HTML、PDF、そして mp3 (人が本を読み上げているのを録音したもの) の三つのフォーマットで利用可能である。書籍のタイトルの後に、様々なフォーマットへのリンクがある。例えば、描画されるリンクテキストにはフォーマット名しかないが、それぞれのリンクに関連付けられているテキストには、例えば「ガリバー旅行記 MP3 版」というように、書籍のタイトルとフォーマットの両方がある。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
- ARIA8: リンクの目的を示すために aria-label を使用する
- G91: リンクの目的を説明したリンクテキストを提供する
- H30: a 要素のリンクの目的を説明するリンクテキストを提供する
- H24: イメージマップの area 要素にテキストによる代替を提供する
次の達成方法の一つを用いて、利用者が短めのリンクテキスト又は長めのリンクテキストを選べるようにする:
次の達成方法の一つを用いて、リンクの目的を補足説明する:
次の達成方法の一つを用いて、セマンティックにリンクを示す:
参考達成方法
適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加の達成方法を検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、又は効果的であるとは限らない。
失敗例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。
テストルール
以下は、この達成基準の特定の側面に関するテストルールである。WCAG への適合を確認するために、これらの特定のテストルールを使用する必要はないが、これらは定義され、承認されたテスト方法である。テストルールの使用については、WCAG 達成基準のテストルールを理解するを参照のこと。
重要な用語
リンク、及びリンクと同時に利用者に提供されているウェブページのどの情報からも、そのリンクの目的を判断できない (すなわち、障害がない閲覧者でも、そのリンクを動作させるまで、そのリンクが何をするのか分からない)。
「注目すべき輸出品のひとつはグァバです」という文中にある「グァバ」という単語がリンクになっている。そのリンク先は、グァバの定義、グァバの輸出量を挙げる図表、又はグァバを収穫している人々の写真のいずれにもなり得る。リンクを動作させるまで、すべての利用者が確信を持てないため、障害のある人が不利な立場に置かれることはない。
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
与えられた規格、ガイドライン、又は仕様のすべての要件を満たすこと。
結果を得るためのプロセス又は手法。
メカニズムは、宣言する適合レベルのすべての達成基準を満たさなければならない。
ある活動を完了させるために必要な利用者の一連の動作。
ショッピングサイト上の一連のウェブページで目的を果たすためには、利用者が選択肢となりうる製品、価格及び内容を閲覧した後、製品を選択して発注し、配送先情報及び支払情報を提供する必要がある。
アカウント登録ページでは、登録フォームにアクセスする前にチューリングテストに成功する必要がある。
ユーザエージェントがどのようにレンダリング、再生、又は実行するかを符号化するメカニズム。
このガイドラインで用いられている「ウェブ技術」及び (単独で用いられている) 「技術」という用語は、どちらもウェブコンテンツ技術を指す。
ウェブコンテンツ技術には、マークアップ言語、データ形式、及びプログラム言語などがあり、これらをコンテンツ制作者が単独で、又は組み合わせて用いることによって、静的なウェブページや同期したメディアによる提示、さらには動的なウェブアプリケーションに至るまでの様々なエンドユーザ体験を作ることができる。
ウェブコンテンツ技術のよくある事例としては、HTML、CSS、SVG、PNG、PDF、Flash、 JavaScript などがある。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム。その他のプログラムには、ウェブコンテンツの取得、レンダリング、やり取りを支援する支援技術を含む。