意図
この達成基準の意図は、利用者が略語の元の語句にアクセスできるようにすることである。
メリット
この達成基準は、次のような利用者にメリットがある:
- 文字から単語を復号化しづらい。
- 画面拡大ソフトに依存している(画面を拡大すると、前後の文脈の手がかりをつかみづらくなる)。
- 記憶力に限界がある。
- 前後の文脈を用いて理解するのが困難である。
略語は様々なかたちで利用者を混乱させることがある:
- 略語の中には、普通の単語のようには見えなくて、その言語の通常の規則に従って発音できないものがある。例えば、英語の単語 "room" は "rm" と略されるが、英語のどの単語又は音素にも該当するものがない。利用者は、正しく読むために、"rm" は単語 "room" の略語であることを知る必要がある。
- 時には、同じ略語であっても、異なる文脈において異なる意味になることがある。例えば、英語の文章 "Dr. Johnson lives on Boswell Dr.," は、最初の "Dr." は "Doctor" の略語で、二つめは "Drive" の略語である (「通り」を意味する単語)。利用者は、その略語がどういう意味なのかを知るために、文脈を理解できなければならない。
- 頭字語の中には、一般的な単語の綴りだが、異なる意味で用いられるものがある。例えば、"JAWS" は "Job Access with Speech" というスクリーンリーダーの頭字語である。それはまた、歯を保持する口の一部を指す一般的な英語の単語である。頭字語は、一般的な単語とは異なって用いられている。
- 頭字語の中には、一般的な単語と同じように発音するが、綴りが異なるものもある。例えば、Synchronized Multimedia Integration Language の頭字語である S M I L は、英語の単語 "smile" のように発音する。
また、視覚障害のある次のような利用者にも役立つ:
- 画面拡大ソフトで拡大していて前後の文脈を見失っている。
事例
コンテンツ中で初めて使用されているところで元の語句が提供されている略語
"World Wide Web Consortium" という名前が、組織のウェブページの最初の見出しとして表示されている。略語の "W3C" が、同じ見出しに括弧で囲まれている。
辞書検索フォーム
ウェブサイトには、オンライン頭字語サービスによって提供される検索フォームが含まれている。利用者が頭字語を入力すると、フォームは検索した情報源から展開可能なリストが返される。
医療系ウェブサイト
医療のウェブサイトは、医者と患者の両方に情報を提供している。そのサイトには、カスケード表示の辞書のセットが含まれている。とても専門的な医学辞書が最初にあり、一般向けの医学辞書が二番目に続いている。カスケード表示には、サイト固有の頭字語及び略語のリストも含まれ、最後に標準的な辞書もある。リストの最後にある標準的な辞書は、テキストにあるほとんどの単語の定義を提供している。専門的な医学辞書は、一般的ではない医学用語の定義をもたらしている。複数の辞書に現れる単語の定義は、カスケード表示の順序で一覧にされる。頭字語及び略語の意味は、頭字語及び略語の一覧によって提供される。
略語の元の語句
それぞれの略語の元の語句は、プログラムによる解釈が可能な方法で利用可能である。テキストを読み上げるユーザエージェントは、略語を知らせるために元の語句を用いることができる。その他のユーザエージェントは、略語のツールチップ又は状況に応じたヘルプとして利用できる元の語句となるかもしれない。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
- Acronym finder - このサイトでは、頭字語の完全一致検索、前方一致検索、ワイルドカード検索、逆引きを行うことができる。
- Abbreviations.com.
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
そのコンテンツに合致する状況を以下から選択すること。それぞれの状況には、WCAG ワーキンググループがその状況において十分であると判断する、番号付の達成方法 (又は、達成方法の組み合わせ) がある。
状況 A: 略語がそのウェブページ内で一つの意味しか持たない場合:
ウェブページ上で略語の初出時に、以下のいずれかの方法で G102: 略語の元の語又は説明を提供する:
以下のいずれかの方法を用いて、その略語がウェブページ上に出現する度に G102: 略語の元の語又は説明を提供する:
状況 B: 略語が同じウェブページで異なるものを意味している場合:
以下のいずれかの方法を用いて、その略語がウェブページ上に出現する度に G102: 略語の元の語又は説明を提供する:
重要な用語
単語、語句、又は名称の短縮形で、その略語が言語の一部になっていないもの。
これは、頭文字語及び頭字語を含む:
頭文字語は、その名称又は語句に含まれる単語又は音節の頭文字による、名称又は語句の短縮形である。
注記すべての言語で定義されているわけではない。
SNCF は、フランス国有鉄道である Société Nationale des Chemins de Fer の頭文字を含む、フランス語の頭文字語である。
ESP は、"extrasensory perception"の頭文字語である。
頭字語は、(名称又は語句の中の) 頭文字又は他の単語の一部から作られた省略形で、一つの単語のように発音されるものである。
NOAA は、米国の "National Oceanic and Atmospheric Administration" の頭文字から作られた頭字語である。
頭文字語だったものを社名として採用している会社がある。そのような場合、その会社の新しい社名はその文字列であるにすぎず (例: Ecma)、その単語はもはや略語とはみなされない。
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害者を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
与えられた規格、ガイドライン、又は仕様のすべての要件を満たすこと。
結果を得るためのプロセス又は手法。
メカニズムは、宣言する適合レベルのすべての達成基準を満たさなければならない。
ある活動を完了させるために必要な利用者の一連の動作。
ショッピングサイト上の一連のウェブページで目的を果たすためには、利用者が選択肢となりうる製品、価格及び内容を閲覧した後、製品を選択して発注し、配送先情報及び支払情報を提供する必要がある。
アカウント登録ページでは、登録フォームにアクセスする前にチューリングテストに成功する必要がある。
ユーザエージェントがどのようにレンダリング、再生、又は実行するかを符号化するメカニズム。
このガイドラインで用いられている「ウェブ技術」及び (単独で用いられている) 「技術」という用語は、どちらもウェブコンテンツ技術を指す。
ウェブコンテンツ技術には、マークアップ言語、データ形式、及びプログラム言語などがあり、これらをコンテンツ制作者が単独で、又は組み合わせて用いることによって、静的なウェブページや同期したメディアによる提示、さらには動的なウェブアプリケーションに至るまでの様々なエンドユーザ体験を作ることができる。
ウェブコンテンツ技術のよくある事例としては、HTML、CSS、SVG、PNG、PDF、Flash、 JavaScript などがある。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブコンテンツの取得、レンダリング及びインタラクションを支援する、ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム (支援技術も含む)。