意図
この達成基準の意図は、各ウェブページにその内容を示すページタイトルを付けることによって、利用者がコンテンツを見つけやすく、自分の現在位置を確認しやすくすることである。タイトルは、ページのコンテンツを読んだり解釈したりすることを利用者に要求することなしに、現在位置を特定する。タイトルがサイトマップ又は検索結果のリストに表示されたときに、利用者は自分の求めているコンテンツをより素早く確認できるようになる。ユーザエージェントは、利用者がそのページを確認できるように、ページのタイトルを容易に見つけられるようにする。例えば、ユーザエージェントは、そのページタイトルをウィンドウのタイトルバーに表示するか、又はそのページを表示しているタブの名前として表示する。
ページが文書又はウェブアプリケーションの場合、文書又はウェブアプリケーションの名称はページの目的を説明するのに十分だろう。ここで注意すべきなのは、文書又はウェブアプリケーションの名称を使用することを求められていないことである。他の要素によってページの目的又は主題が説明される場合もあるだろう。
達成基準 2.4.4 及び 2.4.9 はリンクの目的を取り扱い、その多くはウェブページへのリンクである。ここでも、リンクされた文書又はウェブアプリケーションの名称がリンクの目的を説明するのに十分だろう。リンクとタイトルが一致する又は極めて似ていることは、グッドプラクティスであり、リンクの「クリック」と利用者が着地するウェブページとの間の連続性を提供する。
メリット
- この達成基準は、そのウェブページにある情報が自分のニーズに関係があるかどうかを、すべての利用者が素早くかつ容易に確認できるようにする。
- 視覚障害のある利用者が、複数のページが開いているとき、コンテンツを区別できるようになる。
- 認知の障害、短期記憶障害、及び読字障害のある利用者も、そのページタイトルでコンテンツを確認できるようになる。
- この達成基準は、重度の運動障害があり、ウェブページ間を行き来するとき操作モードを音声に依存する利用者にも役立つ。
事例
HTML のウェブページ
HTML で制作したウェブページの内容を示したタイトルが、ユーザエージェントのタイトルバーに表示されるように、<title> 要素でマークアップされている。
文書
訳注以下、英文原文例をそのまま日本語にした。英文では 2005 年の WCAG ドラフト (英語) が参考にされた模様。
WCAG 2.1 解説書のページタイトルが、「WCAG 2.1 解説書」となっている。
- 主要なページのページタイトルが、「ガイドライン X を理解する」や「達成基準 X を理解する」となっている。
- ドキュメントのページタイトルが、「WCAG 2.0 ガイドライン」となっている。
- 附録 A のページタイトルが、「用語集」となっている。
- 附録 B のページタイトルが、「謝辞」となっている。
- 附録 C のページタイトルが、「参考文献」となっている。
ウェブアプリケーション
あるインターネット銀行のアプリケーションは、利用者が自分の銀行口座をチェックしたり、過去の明細を確認したり、振込をしたりすることができる。そのウェブアプリケーションは、例えば、「ジョン スミスさんの口座: XYZ 銀行」、「口座番号 1234-5678 の取引明細 - 2005 年 12 月: XYZ 銀行」のように、ウェブページごとにページタイトルを動的に生成している。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
- Writing Better Web Page Titles. How to write titles for Web pages that will enhance search engine effectiveness.
- Guidelines for Accessible and Usable Web Sites: Observing Users Who Work With Screen Readers (PDF). Theofanos, M.F., and Redish, J. (2003). Interactions, Volume X, Issue 6, November-December 2003, pages 38-51, https://dl.acm.org/doi/10.1145/947226.947227
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
G88: ウェブページに説明的なタイトルを提供する、かつ 下記の達成方法の一つを使ってウェブページにタイトルを結びつける:
参考達成方法
適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加の達成方法を検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、又は効果的であるとは限らない。
失敗例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。
テストルール
以下は、この達成基準の特定の側面に関するテストルールである。WCAG への適合を確認するために、これらの特定のテストルールを使用する必要はないが、これらは定義され、承認されたテスト方法である。テストルールの使用については、WCAG 達成基準のテストルールを理解するを参照のこと。
重要な用語
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム。その他のプログラムには、ウェブコンテンツの取得、レンダリング、やり取りを支援する支援技術を含む。
単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。
どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。
このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。
単体のウェブリソースであり、埋め込まれている画像及びメディアのすべてを含んだもの。
Asynchronous JavaScript and XML (AJAX) を用いたウェブメールのプログラム。そのプログラム全体は http://example.com/mail に存在しているが、受信トレイ、連絡先、カレンダーがある。受信トレイ、連絡先、又はカレンダーを表示するリンク又はボタンが提供されているが、全体としてページの URI は変更されない。
カスタマイズ可能なポータルサイトで、利用者が様々なコンテンツモジュールのセットから表示させるコンテンツを選択できるようなもの。
ブラウザで "http://shopping.example.com/" へ行くと、映画のようなインタラクティブなショッピング環境になる。そこでは、視覚的に店内を移動して、店内の棚から商品をドラッグして、目の前にある視覚的な買物カゴに商品を入れる。商品をクリックすると、同時に仕様書が浮き上がるように表示される。これは 1 ページだけのウェブサイトかもしれないし、ウェブサイトの中のほんの 1 ページなのかもしれない。