WCAG 2.0解説書

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部分的に用いられている言語:
達成基準 3.1.2 を理解する

3.1.2 部分的に用いられている言語: コンテンツの一節又は語句それぞれの自然言語がどの言語であるかを、プログラムが解釈可能である。ただし、固有名詞、技術用語、どの言語なのか不明な語句、及びすぐ前後にあるテキストの言語の一部になっている単語又は語句は除く。 (レベルAA)

この達成基準の意図

この達成基準の意図は、複数の言語で書かれているコンテンツをユーザーエージェントが正しく提示できるようにして、利用者がテキストを理解するのを助ける支援技術が、その言語を処理する上で必要な特有の知識及びリソースを適切に用いることができるようにすることである。これは、グラフィカルブラウザ及びスクリーンリーダー、点字ディスプレイ、そしてその他の音声ブラウザに当てはまる。

支援技術及び従来のユーザーエージェントはともに、テキストを構成する節それぞれの記述に用いられている言語が示されていると、テキストをより正確に描画できる。スクリーンリーダーは、テキストの言語の発音規則を用いることができる。また、ビジュアルブラウザは文字及び書体を適切に表示することができる。左から右へ読む言語と右から左へ読む言語が切り替わる際、又はテキストが異なる種類のアルファベットを用いる言語で描画される際に、特にこれは重要である。そのウェブページで用いられているすべての言語を理解できる場合、テキストを構成する節それぞれが適切に描画されると、障害のある利用者は、コンテンツをよりよく理解できるようになる。

テキスト中の語句又は一説に何も言語が指定されていない場合、その語句や説の自然言語は、そのウェブページのデフォルトの自然言語となる(達成基準 3.1.1 を参照)。そのため、単一の言語で記述されたドキュメントの場合は、すべてのコンテンツの自然言語をプログラムが解釈できることになる。

ある言語の個々の単語又は語句が、他の言語の一部になることがある。例えば、"rendezvous" は、英語に持ち込まれたフランス語の単語で、英語の辞書にも掲載されているし、英語のスクリーンリーダーでも適切に発音される。それゆえ、英語のテキストの一節に "rendezvous" という単語が、その自然言語がフランス語であることが示されることなく含まれていることがあるが、これはこの達成基準を満たしていることになる。しばしば、テキストの自然言語が一つの単語に対してだけ変化するようなとき、その単語は周囲にあるテキストの言語の一部となっていることがある。これは、言語によっては一般的なことなので、言語を意図的に変えていることが明白でない限り、その単語は周囲にあるテキストの言語の一部であるとみなすべきである。言語を意図的に変えているかどうかが疑わしい場合は、その単語が隣接するテキストの言語で同じように発音されるかどうかを考えてみるとよいだろう(ただし、アクセントやイントネーションは除く)。

ほとんどの専門的な職業では、もともとは外国語からきた技術用語を頻繁に使うことを必要とする。そのような用語は、通常すべての言語に翻訳されるわけではない。技術用語は広く共通のものが用いられる傾向があり、専門家の間でのコミュニケーションの促進につながっている。

技術用語のよくある例としては、次のようなものがある: ホモ・サピエンス (Homo sapien)、アルファケンタウリ (Alpha Centauri)、ヘルツ (hertz)、ヘイビアス・コーパス (habeas corpus) など。

言語の変化を示すことは、多くの理由から重要である:

達成基準 3.1.2 の具体的なメリット

この達成基準は、次のような利用者にメリットがある:

  • スクリーンリーダー又はテキストを合成音声に変換するその他の技術を使用している利用者。

  • 例えば、文字及びアルファベットを認識したり、単語を読み取ったりすることのように、書かれたものを流暢かつ正確に読むのが困難な利用者。

  • テキストを音声に変換するソフトウェアを使用している、特定の認知の障害、言語の障害、及び学習障害のある利用者。

  • 同期したメディアのコンテンツの音声トラックでの言語の変化を識別するのに、キャプションを頼りにしている利用者。

達成基準3.1.2 の事例

  1. 英語の文章中にあるドイツ語の一節

    文章中に "He maintained that the DDR (German Democratic Republic) was just a ' Treppenwitz der Weltgeschichte'," とあり、ドイツ語の一節 'Treppenwitz der Weltgeschichte' がドイツ語であることが示されている。マークアップ言語によっては、特定している箇所を除いては英語を文書全体の言語として示すこともできるし、段落レベルで示すこともできる。スクリーンリーダーがドイツ語の一節を読み上げる際は、その単語を正確に発音するために、発音規則を英語からドイツ語に変更する。

  2. 代わりの言語へのリンク

    ある HTML のウェブページには、そのページの他言語版へのリンクがある(例: Deutsch, Français, Nederlands, Castellanoなど)。それぞれのリンクのテキストは言語名で、その言語で書かれている。リンクの言語はそれぞれ、lang 属性で示されている。

  3. フランス語の文章中で使われている "Podcast"

    "podcast" は、次の引用ではすぐ周囲にあるテキストの言語の一部である。"A l'occasion de l'exposition "Energie eternelle. 1500 arts d'art indien", le Palais des Beaux-Arts de Bruxelles a lance son premier podcast. Vous pouvez telecharger ce podcast au format M4A et MP3," この場合、言語の変化を示す必要はない。

関連リソース

リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。

達成基準3.1.2 の実装方法及び不適合事例 - 部分的に用いられている言語

この節にある番号付の項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する実装方法、又は複数の実装方法の組合せを表している。WCAG 2.0 適合要件のすべてが満たされている場合にのみ、次に挙げる実装方法により、この達成基準を満たすことができる。

達成基準を満たすことのできる実装方法

  1. 以下のいずれかの方法を用いて自然言語の変化を維持する:

達成基準 3.1.2 でさらに対応が望まれる実装方法(参考)

適合するためには必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするためには、次の付加的な実装方法もあわせて検討するとよい。ただし、すべての状況において、すべての実装方法が使用可能、または効果的であるとは限らない。

  • そのウェブページのデフォルトの自然言語とは異なる言語で記述されているテキストを視覚的に区別できるようにする(リンク追加予定)

  • 外国語で記述された節や語句で用いられているすべての原語の名前を表示する(リンク追加予定)

  • 固有名詞の原語をマークアップして、スクリーンリーダが正しく発音できるようにする(リンク追加予定)

達成基準 3.1.2 のよくある不適合事例

以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準 3.1.2 に適合していないとみなした、よくある不適合事例である。

(今のところ、文書化されている不適合事例がない)

重要な用語

プログラムが解釈(プログラムが解釈可能)

コンテンツ制作者が提供したデータからソフトウェアが解釈できること。またそのときに、 支援技術を含む様々なユーザエージェントが、この情報を抽出して利用者に様々な感覚モダリティで提示できること。

事例 1: マークアップ言語では、一般に入手可能な支援技術が、要素および属性に直接アクセスすることにより解釈できる。

事例 2: 非マークアップ言語では、ウェブコンテンツ技術特有のデータ構造から、一般に入手可能な支援技術がサポートするアクセシビリティ API を通じて支援技術に提供される。

自然言語

人間とコミュニケーションをとるための言語で、話す、書く、又は(視覚的あるいは触覚的な手段で)手話にするもの。

注記: 手話も参照のこと。