利用者の要求による状況の変化:
達成基準 3.2.5 を理解する
この達成基準の意図
この達成基準の意図は、状況の変化を利用者が完全に制御できるようなウェブコンテンツの設計を推奨することである。この達成基準は、自動的に開く新しいウィンドウ、リストから項目を選択すると自動的に送信されるフォームなどのように、予期しない状況の変化によって混乱が引き起こされる可能性を取り除くことを狙いとしている。そのような予期しない状況の変化により、運動障害のある利用者、ロービジョンの利用者、全盲の利用者、及び特定の認知能力の低下している利用者には困難が生じてしまう恐れがあるからである。
状況の変化の中には、利用者を混乱させず、さらに利用者にとって有用な種類のものもある。例えば、単一のスイッチを使用している利用者は、システムによる状況の変化に依存しているし、ロービジョンの利用者の好みも一度にどれくらいのコンテンツを見ることができるか、どれくらいのセッション構造が作業記憶に残るかに依存している。中にはスライドショーのように、意図したユーザーエクスペリエンスを提供するために、状況の変化を必要とするコンテンツもある。利用者の設定が許容する際だけ自動的に状況を変化させるコンテンツは、この達成基準に適合することができる。
注記: リンクをクリックするのは、「利用者の要求によってだけ生じる」動作の一例である。
達成基準 3.2.5 の具体的なメリット
状況の変化を見つけることができない、又は状況が変化したことに気づかない利用者が、サイトをナビゲートしている間に混乱した状態になりにくい。例えば、次のような利用者が当てはまる:
全盲の利用者、又はロービジョンの利用者は、新しいウィンドウがポップアップで開くなどのように、視覚的な状況の変化がいつ起こるのかを把握するのが困難なことがある。この場合、前もって利用者に状況の変化が起こることを知らせておくと、利用者が「戻る」ボタンがいつものように動作しないことに気づいたときの混乱を最小限に抑えることができる。
ロービジョンの利用者、読字及び知的障害のある利用者、そして視覚的な手がかりを解釈しづらい利用者は、コンテンツ制作者が手がかりを追加することによって、状況の変化に気づくようになる。
自動的なリダイレクトを、ブラウザではなくウェブサーバーによって行えば、認知能力の低下している利用者は混乱しないですむ。
達成基準3.2.5 の事例
「今、更新する」ボタン
コンテンツを自動的に更新するかわりに、コンテンツの更新を要求する「今、更新する」ボタンをコンテンツ制作者が提供している。
自動リダイレクト
リダイレクトが起こったことに絶対気づかない方法で、古いページから新しいページへ利用者が自動的にリダイレクトされる。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
達成基準3.2.5 の実装方法及び不適合事例 - 利用者の要求による状況の変化
この節にある番号付の項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する実装方法、又は複数の実装方法の組合せを表している。WCAG 2.0 適合要件のすべてが満たされている場合にのみ、次に挙げる実装方法により、この達成基準を満たすことができる。
達成基準を満たすことのできる実装方法
使用法: そのコンテンツに合致する状況を以下から選択すること。それぞれの状況には、WCAG ワーキンググループがその状況において十分であると判断する、番号付の実装方法(又は、実装方法の組合せ)がある。
状況 B: 自動リダイレクトが可能な場合:
以下のいずれかの方法を用いてG110: クライアントサイドの瞬間的なリダイレクトを用いる:
達成基準 3.2.5 でさらに対応が望まれる実装方法(参考)
適合するためには必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするためには、次の付加的な実装方法もあわせて検討するとよい。ただし、すべての状況において、すべての実装方法が使用可能、または効果的であるとは限らない。
新しいウィンドウを開く際、target属性を用いず一般的なハイパーリンクを提供する。(リンク追加予定) これは、多くのユーザーエージェントではリンクを別のウィンドウ又は別のタブで開く機能を提供しているためである。
アクセシビリティの観点から最善と考えられる時以外は新規のウィンドウを開かない(リンク追加予定)
達成基準 3.2.5 のよくある不適合事例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準 3.2.5 に適合していないとみなした、よくある不適合事例である。
重要な用語
- メカニズム
結果を得るためのプロセス又は手法。
- 状況の変化
ウェブページのコンテンツにおける大きな変化で、利用者が気づかないと、ウェブページ全体を一度に見ることのできない利用者をまごつかせてしまう恐れのあるもの。
状況の変化には次に挙げるものの変化が含まれる:
注記: コンテンツの変化が、必ず状況の変化になるとはかぎらない。アウトライン表示の展開、動的なメニュー、又はタブの切替などのコンテンツの変化は、それが上記のいずれか(例:フォーカス)を変更しないかぎり、状況を変化させるとは限らない。
事例 : 新しいウィンドウを開くこと、フォーカスを異なる要素へ移動させること、新しいウェブページへ移動すること(新しいウェブページへ移動したかのように思わせてしまうことも含む)、又はウェブページの内容を大きく再配置することなどは、状況の変化の事例である。