解説書 達成基準 2.4.6:見出し及びラベル (レベル AA)
要約
- 目標
- ページのコンテンツが、見出し及びラベルによって説明されている。
- 何をすればよいか
- 説明的な見出し及びラベルを提供する。
- なぜそれが重要か
- 特に認知障害又は視覚障害のある人々が、ページ上の自分の位置を確認することができる。
意図
この達成基準の意図は、ウェブページにどんな情報があるのか、及びその情報がどのように構成されているのかを、利用者が理解するのを手助けすることである。見出しが明快かつ内容が分かるように記述されている場合、利用者は自分の探している情報をより容易に見つけることができ、コンテンツ内の様々な部分間の関係をより容易に理解できる。内容が分かるように記述されているラベルは、利用者がコンテンツ内にある特定のコンポーネントを識別するのに役立つ。
ラベル及び見出しを長くする必要があるわけではない。単語一つ又は一文字だけであっても、コンテンツを見つけてナビゲートする手がかりとして適切であれば、それだけで十分なこともある。
この達成基準は見出しやラベルを必要としない。見出しやラベルが提供されている場合、それらの内容が分かるように記述されていることが求められる。この達成基準は見出し又はラベルとして機能するコンテンツを正しくマークアップすること又は識別することも必要としない。この点は 1.3.1: 情報及び関係性で別途取り扱っている。コンテンツがこの達成基準を満たしながら (見出し又はラベルとして機能する説明的なコンテンツを提供している)、達成基準 1.3.1 (見出し又はラベルを誤ってマークアップ / 識別している場合) に失敗することがありえる。反対に、コンテンツが達成基準 1.3.1 を満たしながら (見出し又はラベルが正しくマークアップ又は識別されている)、この達成基準には失敗するということもありえる (それらの見出し又はラベルが十分に明確又は説明的ではない場合)。
さらに、ラベルの場合、この達成基準はフォームコントロール及び入力にアクセシブルな名前を提供する代替手段が用いられているか否かを考慮しない。この点は 4.1.2: 名前 (name)・役割 (role)・値 (value) で別途取り扱っている。コントロール及び入力欄が適切なアクセシブルな名前 (accessible name) を (例えば aria-label="..."
を使用して) 持っており、これによって達成基準 4.1.2 を満たすが、この達成基準には失敗するということもありえる (ラベルが十分に明確又は説明的ではない場合)。
この達成基準はラベルの使用を求めていない。しかし、ラベルが存在する場合、それらが十分に明確又は説明的でなければならないことは求めている。ラベルの使用の詳細については、3.3.2: ラベル又は説明を参照すること。
利点
- 内容が分かるように記述された見出しは、読む速度が遅くなる障害のある利用者及び短期記憶に制約のある利用者に特に役立つ。そのような利用者にとっては、それぞれのセクションの内容を予測できるようにセクションの見出しが記述されていると役立つ。
- 入力が予想されるコンテンツを明確に説明するラベルの付いたフォーム入力コントロールは利用者がフォームに正しく入力するのを手助けする。
- 見出し及びラベルが 1.3.1: 情報及び関係性にも従って正しくマークアップ及び識別されている場合、この達成基準は、ラベル及び見出しは異なるフォーマット (例えば、自動的に生成される見出しのリスト、目次、又はページ内の見出しから見出しへの移動) で提示されても明快であることが保証されるので、スクリーンリーダーの利用者にとって手助けとなる。
事例
- ニュースサイト
- ニュースサイトのホームに、その時間帯のトップニュースの見出しが並んでいる。それぞれの見出しの下には、記事の冒頭の 35 ワードと、記事の全文へのリンクがある。そして、見出しはどれも、記事の主題を明快に伝えている。
- 上手な文章の書き方ガイド
- 文章の書き方に関するガイドに、次のようなセクション見出しがある。
上手な文章の書き方
、無駄な語句を取り除く
、不要な語句を見つけ出す
、などである。これらのセクション見出しは明快かつ簡潔で、情報の構造が見出しの構造にも反映されている。 - 様々な記事での一貫した見出し
- ウェブサイトには、ある学会の会議での論文が掲載されている。その学会の会議への投稿する論文は、次のような構成とすることが必須となっている:
要約
、イントロダクション
、(その論文に固有なその他のセクション)、結論
、筆者略歴
、用語集
、そして参考文献
。そうして、論文の独自性とセクション見出しの一貫性とのバランスをうまくとりながら、各ウェブページのタイトルはそのページにある論文をはっきりと特定している。 - 利用者に氏名を要求するフォーム
- 利用者に氏名を要求するフォーム。姓と名を要求する二つのテキストフィールドから成る。最初のフィールドは
姓
、次のフィールドは名
とラベルづけされる。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
- How Users Read on the Web ほとんどの利用者が 1 語ずつ読むのではなく、ウェブページを走り読みすることを示す調査。
- Applying Writing Guidelines to Web Pages ウェブサイトを簡潔に、走り読みしやすく、客観的にする効果についてのレポート。
テクニック
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断するテクニック、又は複数のテクニックの組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらのテクニックを用いる必要はない。その他のテクニックについての詳細は、WCAG 達成基準のテクニックを理解するの「その他のテクニック」を参照のこと。
十分なテクニック
注記
達成基準 1.3.1 により、見出し及びラベルは、プログラムによる解釈がされなければならない。
上記注記で「見出し及びラベルは、プログラムによる解釈がされなければならない。」と記述されているが、これは達成基準 1.3.1 を正確に反映したものではない。よって、この記述は達成基準 1.3.1 にあるとおり、「見出し及びラベルは、プログラムで決定できるか又はテキストで利用できなければならない。」と解釈するのが妥当と考えられる。w3c/wcag#315 で改善が提案されているので、あわせて参照されたい。
重要な用語
文字又はグリフの空間的配置によって作られた図画 (典型的には、ASCII で定義されている 95 の印字可能文字から作られる)。
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
注記
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
注記
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
注記
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
コンテンツの構造、提示、及びインタラクションを定義するコード又はマークアップも含めて、ユーザエージェントによって利用者に伝達される情報及び感覚的な体験。
人間とコミュニケーションをとるために話される、書かれる、又は (視覚的もしくは触覚的な手段で) 手話にされる言語。
注記
手話も参照。
テキスト、又はテキストによる代替を伴うコンポーネントで、ウェブコンテンツ内のコンポーネントを識別するために利用者に提示されているもの。
注記
名前 (name) は隠されていて、支援技術に対してだけ公開される場合がある一方で、ラベルはすべての利用者に提示される。多くの場合 (すべてではないが)、名前 (name) とラベルは同じである。
注記
ラベルという用語は、HTML における label 要素だけに限定されない。
ソフトウェアが、ウェブコンテンツのコンポーネントを利用者に識別させることができるテキスト。
注記
ラベルはすべての利用者に提示される一方で、名前 (name) は隠されていて、支援技術に対してだけ明らかにされる場合もある。多くの場合 (すべてではないが)、ラベルと名前 (name) は同じである。
注記
これは、HTML の name 属性とは関係がない。
プログラムによる解釈が可能な文字の並びではないコンテンツ、又は文字の並びが自然言語においても何をも表現していないコンテンツ。
注記
これには、 (文字による図画である) ASCII アート、顔文字、 (文字を置き換える) リートスピーク、文字を表現している画像が含まれる。
利用者が知覚できる形式でコンテンツをレンダリングすること。
支援技術を含む様々なユーザエージェントが抽出でき、利用者に様々な感覚モダリティで提示できるような形のデータがコンテンツ制作者によって提供されたとき、そのデータがソフトウェアによって解釈されること。
意味を伝えるために、手と腕の動き、顔の表情又は身体の姿勢の組み合わせを用いる言語。
- ウェブページの各部を相互の関係性によりまとめる方法論。及び、
- 一連のウェブページをまとめる方法論。
プログラムによる解釈が可能な文字の並びで、自然言語で何かを表現しているもの。
非テキストコンテンツとプログラムで関連付けられるテキスト。又は非テキストコンテンツとプログラムで関連付けられるテキストから参照されるテキスト。プログラムで関連付けられたテキストとは、その場所を、非テキストコンテンツからプログラムによる解釈が可能なテキストである。
注記
より詳細な情報は、テキストによる代替を参照。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。
注記
どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。
注記
このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。
テストルール
以下は、この達成基準の特定の側面に関するテストルールである。この特定のルールを使用して WCAG に適合しているかどうかを確認する必要はないが、これらのルールは定義され、承認されたテスト方法である。テストルールの使用については、WCAG 達成基準のテストルールを理解するを参照のこと。