WCAG 達成基準のテクニックを理解する
WCAG 2.2 のガイドライン及び達成基準は、動的アプリケーション、モバイル、デジタルテレビなどを含む現在及び将来のウェブ技術に対して広く適用可能となるよう設計されている。これらは安定しており変わることはない。
WCAG 2.2 の達成基準を満たすための、制作者や評価者に対する個別のガイダンスはコード例、リソース及びテストを含むテクニック集で提供されている。W3C の Techniques for WCAG 2.2 文書は概ね年に 2 回、より最新の成功事例及び技術やツールの変化をカバーするよう定期的に更新されている。
Techniques for WCAG 2.2 における三つのタイプのガイダンスを以下に説明する:
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十分なテクニック
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参考テクニック
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失敗例
また以下についても説明する:
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達成基準を満たすことのできる、又は参考にすることができる、一般的な及び技術特有のテクニック
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W3C の発行文書を超えた、その他のテクニック
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テクニックの検証
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ユーザエージェント及び支援技術のサポート
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重要な考慮とともに、テクニックを使用する
適合を理解するでは、アクセシビリティサポートを理解するに関するものを含む関連情報を提供している。
テクニックは参考情報である
テクニックは、参考情報である。つまり、テクニックは必須要件ではない。WCAG 2.2 への適合を判断する根拠は、WCAG 2.2 で規定している達成基準であり、テクニックではない。
注記 1: W3C は、W3C の十分なテクニックを必須としないように警告する。求められる唯一のことは WCAG 2.2 達成基準を満たすことである。より詳しくは、以下を参照のこと:
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WCAG 2 FAQ における What would be the negative consequences of allowing only W3C's published techniques to be used for conformance to WCAG 2?
注記 2: Techniques for WCAG 2.2 では、そのテクニックのガイダンスを明確にするためにのみ "しなければならない" 及び "することが望ましい" という用語を用いており、WCAG 2.2 への要求事項を伝えるためには用いない。
十分なテクニック
十分なテクニックは達成基準を満たすのに信頼できる方法である。
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制作者の視点から: 与えられた基準に対して、十分なテクニックを正しく用い、かつそれが利用者に対してアクセシビリティ サポーテッドらば、その達成基準を満たしていると確信できる。
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評価者の視点から: 与えられた達成基準に対して、ウェブコンテンツが、十分なテクニックによって正しく実装され、かつコンテンツの利用者に対してアクセシビリティ サポーテッドならば、その達成基準を満たしている。(逆は真ではない。ウェブコンテンツがこれらの十分なテクニックで実装されていなくても、以下のテクニックの検証 で説明しているように、必ずしも達成基準を満たしていないとはいえない。)
以下のその他のテクニックで説明しているように、W3C の Techniques for WCAG 2.2 文書にある十分なテクニック以外にも、達成基準を満たす方法はあるだろう。(上記 テクニックは参考情報である 参照のこと。)
番号付きリスト、"かつ"
W3C 文書にある十分なテクニックは番号付きリストになっており、各リスト項目はその十分なテクニック、あるいはテクニックの組み合わせとなっている。一つの番号付きリスト項目に、"かつ" で連結された複数のテクニックがある場合、テクニックを満たすためにはすべてのテクニックを用いなければならない。例えば、達成基準 1.3.1 を満たすことのできるテクニックでは "G115: Using semantic elements to mark up structure AND H49: Using semantic markup to mark emphasized or special text (HTML)" とある。
参考テクニック
参考テクニックはアクセシビリティを改善するために推奨される方法である。これは一部の利用者にとっては非常に有用であり、またある利用者がある種のコンテンツにアクセスできる唯一の方法となることもあるかもしれない。
参考テクニックは以下のようなさまざまな理由で、十分なテクニックとはならない:
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達成基準のすべての要求事項を満たすのに十分でない。
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まだ安定していない技術に基づいている。
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多くの場合においてアクセシビリティ サポーテッドでない (例えば、支援技術がまだ対応できていない)。
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テスト可能でない。
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ある状況においてそのテクニックが適用可能でないあるいは実用的でなく、かつその他の利用者に対してはアクセシビリティを向上させる一方、一部の利用者に対してアクセシビリティを低下させる可能性がある。
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達成基準そのものには対処しておらず、代わりに関連するアクセシビリティ上の利点を提供している。
コンテンツ制作者には、最も幅広い利用者のニーズに対処するのに最適なすべてのテクニックを適用することが推奨される。
失敗例
失敗とは、アクセシビリティのバリアを引き起こし、特定の達成基準を満たさないことである。文書化された失敗例は以下の点で有益である:
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コンテンツ制作者にとっては、避けるべきことを知ることができ、
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評価者にとっては、コンテンツが WCAG 2.2 の達成基準を満たしていないかどうかのチェックに用いることができる。
失敗のあるコンテンツは、失敗のない代替版が提供されていない限り、WCAG 2.2 の達成基準を満たさない。
文書化された失敗例が正しくないような状況を確認した場合は、修正もしくは適切に削除できるように WCAG 2 コメントとしてその状況を報告していただきたい (英語)。
一般的及び技術特有のテクニック
一般的なテクニック には、すべての技術に適用する基本事例を記載している。技術特有のテクニックは個別の技術に適用する。
いくつかの達成基準は技術特有のテクニックを持っておらず、一般的なテクニックのみによりカバーされる。したがって、一般的なテクニックと、それに関連する技術特有のテクニックの両方を考慮するとよい。
特定の技術に対するテクニックを公開しているからといって、WCAG 2.2 達成基準及び適合要件を満たすコンテンツを制作するあらゆる状況においてその技術が用いられるわけではない。開発者は個々の技術の限界を知り、障害を持つ人にとってアクセシブルな方法でコンテンツを提供する必要がある。
その他のテクニック
W3C の Techniques for WCAG 2.2 文書にあるテクニックに加えて、WCAG 2.2 の達成基準を満たすその他の方法がある。W3C のテクニックは包括的なものではなく、より新しい技術や状況をカバーしていないかもしれない。
ウェブコンテンツは、WCAG 2.2 に適合するために W3C が公開しているテクニックを用いなくてもよい。(上記テクニックは参考情報である も参照のこと。)
コンテンツ制作者はさまざまなテクニックを開発できる。例えば、制作者は HTML5 や WAI-ARIA、あるいはその他の新しい技術に対するテクニックを開発できる。他の組織が WCAG 2.2 達成基準を満たすテクニック集を開発してもよい。
任意のテクニックは、以下のような場合に達成基準を満たすことができる:
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それらが達成基準を満たし、かつ
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すべての WCAG 2.2 適合要件が満たされている。
テクニックの提出
WCAG Working Group では、Techniques for WCAG 2.2 文書の更新において取り入れることを検討できるように、新しいテクニックを提出することを推奨する。Techniques Submission Form を用いて、検討のためのテクニックを提出いただきたい。
テクニックの検証
それぞれのテクニックには以下のように役立つ検証がある:
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コンテンツ制作者が、テクニックを正確に実装しているか確認し、かつ
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評価者が、ウェブコンテンツがそのテクニックを満たしているか判断する。
この検証はテクニックに対してのみのものであり、WCAG 2 の達成基準への適合を検証するものではない。
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テクニックは離散的であり (すなわち、特定の 1 点のみを扱っており)、かつこれらは要求事項ではないため、テクニックの検証失敗は必ずしも WCAG 2 への不適合を意味していない。
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コンテンツは、W3C が公開している十分なテクニック以外にも様々な方法で WCAG 2 の達成基準を満たすことができる。
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技術特有のテクニックの検証を通過したコンテンツは、必ずしもすべての WCAG 2 の達成基準を満たしていない。いくつかの達成基準は一般的なテクニックのみを持っており、技術特有のテクニックを持っていない。
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コンテンツはその利用者に対してアクセシビリティ サポーテッドでなければならない。いくつかの十分なテクニックは、一部の利用者が持っていないかもしれないブラウザ、支援技術またはその他のサポートを必要とする。
このようにテクニックはコンテンツの評価において有益であるが、コンテンツが WCAG 2 の達成基準にどのくらい適合しているか評価するためには、評価は十分なテクニックをただ検証することを超えて行わなければならない。
失敗例は、(失敗のない代替版が提供されていない場合) 不適合を意味するため、評価において特に有益である。
ユーザエージェント及び支援技術のサポートに関する注記
いくつかのテクニックでは、ウェブコンテンツの利用者に対して、そのテクニックがアクセシビリティ サポーテッドとなるために、特定のブラウザや支援技術を持つことを求めている。個々のテクニックにおけるユーザエージェント及び支援技術のサポートに関する注記の節は、アクセシビリティ サポーテッドを判断するのに役立つ情報を含んでいる。
サポートに関する注記は時間とともに変化する
時間の経過に伴い、列挙されているユーザエージェント (ブラウザなど) や支援技術のバージョンが最新のバージョンではなくなるかもしれない。ワーキンググループでは、新しいバージョンが公開されてもこれらの注記の多くを更新しないだろう。制作者は、利用者が現時点で利用可能なユーザエージェントや支援技術を用いてテクニックを検証することが望ましい。アクセシビリティサポートを理解するも参照のこと。
テクニック集の使用
Techniques for WCAG 2.2 は単体の文書として用いられることを意図していない。代わりに、コンテンツ制作者は、WCAG 2 の達成基準を参照するために How to Meet WCAG 2.2: A customizable quick reference を用い、そこからリンクをたどって WCAG 2.2 解説書の特定の項及び特定のテクニックを参照することが想定している。
代替版は達成基準を満たしていなければならない
いくつかの達成基準では、ユーザがコンテンツを得るための代替方法をどのように提供するかについて述べている。例えば、G73: Providing a long description in another location with a link to it that is immediately adjacent to the non-text content では音声ファイルの代替としてトランスクリプトについて言及している。いくつかの代替はまた WCAG 2 に適合していなければならない。例えばそのトランスクリプト自体は、関連するすべての達成基準を満たしていなければならない。
コード例
テクニック集にあるコード例は、そのテクニックにおいて議論された特定の点についてのみ明示することを意図している。これらは、そのテクニックと無関係なアクセシビリティ、ユーザビリティ、またはコーディングのその他の側面に対する最良の実例を示しているわけではない。これらはウェブコンテンツ開発の基礎としてコピーして用いられることを意図していない。
多くのテクニックではより堅牢で、ウェブコンテンツにコピーしたり統合するのに適した "動作する例" を挙げている。