解説書 達成基準 2.4.5:複数の手段 (レベル AA)
要約
- 目標
- 利用者が、複数の手段でコンテンツにアクセスできる。
- 何をすればよいか
- 同じコンテンツに到達できる手段として、少なくとも二つの選択肢を提供する。
- なぜそれが重要か
- 誰もが同じ手段でコンテンツをナビゲートできるわけではない。
意図
この達成基準の意図は、利用者が自分のニーズに最も合う方法によってコンテンツを見つけることができるようにすることである。コンテンツを見つける手段が複数あれば、利用者は、自分にとって使いやすい又は分かりやすい手段を選ぶことができる。
小規模なサイトであっても、利用者に複数の探索手段を提供すべきである。すべてのページがサイトのホームからリンクされている 3~4 ページのサイトでは、ホームから各ページへのリンクと、各ページからホームへのリンクを提供するだけで十分かもしれない。ホームにあるリンクがサイトマップのような役割も果たすからである。
利点
- 複数の手段でサイトをナビゲートする機会を提供することによって、人々が情報をより早く見つけるのに役立つことができる。視覚障害のある利用者は、画面拡大ソフト又はスクリーンリーダーを用いて大きなナビゲーションバーを経由してスクロールするよりも、検索機能を使用してサイト内の適切な部分へナビゲートしていくほうが容易なことがある。認知障害のある人は、複数のウェブページを読んで横断するよりも、サイト全体を見渡すことのできる目次又はサイトマップを好むことがある。中には、サイトのコンセプトやレイアウトを最もよく理解できるように、ウェブページからウェブページへと順番に移動しながらサイト内を探索するのを好む利用者もいるかもしれない。
- 認知機能に制約のある人は、理解が難しいかもしれない階層的なナビゲーションスキームを使用するよりも、検索機能を使用する方が簡単だと感じるかもしれない。
事例
- 検索メカニズム
- ある大手食品加工企業は、その企業の製品を使用して作成されたレシピを含むサイトを提供している。そのサイトは、特定の食材を使ったレシピを検索するための検索メカニズムを提供している。さらに、食品のいろいろなカテゴリを挙げたリストボックスを提供している。その企業のスープ製品から作られたレシピのリストを含むページに移動するには、利用者は検索エンジンに「スープ」を入力してもよく、又はリストボックスから「スープ」を選択してもよい。
- ウェブページ間のリンク
- あるヘアサロンが、サービスを宣伝するためにウェブサイトを制作した。そのサイトは 5 ページしかない。各ウェブページには、ウェブページ間を順に前後へ移動できるリンクがある。さらに、各ウェブページには、その他のウェブページへ移動するリンクの一覧がある。
- コンテンツがプロセス又はタスクの結果である場合 - 送金確認
- あるオンライン銀行サイトでは、ウェブを通じて口座間の送金ができる。口座の名義人が送金を完了する以外には、送金確認ページを見つける方法はない。
- コンテンツがプロセス又はタスクの結果である場合 - 検索エンジンの検索結果
- ある検索エンジンが、利用者の入力に応じた検索結果を提供している。その検索プロセスを行う以外に、その検索結果ページを見つける方法はない。
テクニック
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断するテクニック、又は複数のテクニックの組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらのテクニックを用いる必要はない。その他のテクニックについての詳細は、WCAG 達成基準のテクニックを理解するの「その他のテクニック」を参照のこと。
十分なテクニック
-
次のテクニックのうち二つ以上を用いる:
参考テクニック
適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加のテクニックを検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべてのテクニックが使用可能、又は効果的であるとは限らない。
重要な用語
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
注記
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
注記
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
注記
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
ある活動を完了させるために必要な利用者の一連の動作。
共通の目的を共有し、同じコンテンツ制作者、グループ、又は組織により制作されたウェブページの集合。
注記
他言語版は、異なるウェブページ一式と見なされることもある。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。
注記
どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。
注記
このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。