達成基準 2.2.2: 一時停止、停止、非表示を理解する

達成基準 2.2.2 一時停止、停止、非表示 (レベル A): 動きのある、点滅している、スクロールする、又は自動更新する情報は、次のすべての事項を満たしている

動き、点滅、スクロール

動きのある、点滅している、又はスクロールしている情報が、(1) 自動的に開始し、(2) 5 秒よりも長く継続し、かつ、(3) その他のコンテンツと並行して提示される場合、利用者がそれらを一時停止、停止、又は非表示にすることのできるメカニズムがある。ただし、その動き、点滅、又はスクロールが必要不可欠な動作の一部である場合は除く。

自動更新

自動更新する情報が、(1) 自動的に開始し、 (2) その他のコンテンツと並行して提示される場合、利用者がそれを一時停止、停止、もしくは非表示にする、又はその更新頻度を調整することのできるメカニズムがある。ただし、その自動更新が必要不可欠な動作の一部である場合は除く。

画面がちらつく、又は閃光を放つコンテンツに関する要件は、ガイドライン 2.3 を参照。

この達成基準を満たさないコンテンツでは、利用者がそのウェブページ全体を使用できない恐れがあるため、ウェブページ上のすべてのコンテンツは他の達成基準を満たすために用いられているか否かにかかわらず、この達成基準を満たさなければならない。適合要件 5: 非干渉を参照。

定期的にソフトウェアによって自動的に更新されるコンテンツ、又はユーザエージェントにストリーム配信されるコンテンツでは、コンテンツ再生の一時停止と再開の操作の間に生成、又は受信される情報を保持、又は提示する必要はない。これは技術的に不可能であることが考えられ、多くの状況において利用者の混乱を招くことにつながる可能性があるためである。

コンテンツの読み込み中やそれに類似した状況の一部として表示されるアニメーションについては、この段階ですべての利用者に対していかなるインタラクションも発生する可能性がなく、かつコンテンツ読み込みの進行状況を表示しないことが利用者の混乱を招いたり、コンテンツが動作を停止した、又はコンテンツが破損しているという誤解を生じたりする可能性がある場合には、必要不可欠なものと考えることができる。

意図

この達成基準の意図は、利用者がウェブページとやりとりしている間、他の事に注意をそらされないようにすることである。

「動き、点滅、スクロール」は、目に見えるコンテンツが動きの感覚を伝えているコンテンツのことを指している。一般的な例は、動画、同期したメディアによる提示、アニメーション、リアルタイムのゲーム、スクロールする株価表示などがある。「自動更新」は、あらかじめ設定された間隔で更新したり、消えたりするコンテンツのことを指している。一般的な時間依存コンテンツは、音声、自動的に更新される天気情報、ニュース、株価更新、及び自動進行する提示やメッセージなどがある。動き、点滅、スクロールするコンテンツ及び自動更新するコンテンツに対する要件は、次のものを除いて同じである:

動きのある又は自動更新するコンテンツは、動きのあるオブジェクトを追うのが困難な利用者だけでなく、動かないテキストをすばやく読み取ることが困難な利用者にも障壁になりうる。スクリーンリーダーにも問題が発生する可能性がある。

特定のグループ、具体的には注意欠陥障害をもつグループは、点滅しているコンテンツに気を取られ、ウェブページの他の部分に集中することが困難となる。5 秒は、利用者の注意を引くのに十分な長さであるが、ページを使用するために利用者が必要に応じて待つことができないほど長くはないために選択された。

一時停止したコンテンツは、リアルタイムで再開するか、利用者が一時停止したところから再生を続けるかのどちらかである。

  1. 一時停止した後、利用者が一時停止したところから再開することが、コンテンツを読むために一時停止したいと思う利用者にとっては最適であり、コンテンツがリアルタイムのイベント又は状態に関係のないときには最も良い方法である。

    注記

    読むための制限時間に関するその他の要件については、達成基準 2.2.1 タイミング調整可能 を参照のこと。

  2. 一時停止した後、(一時停止を解除した時に) 最新の表示へ移ることが、リアルタイム又は本来の「状態」にある情報にとってよりよいことである。例えば、気象レーダー、株価表示、交通情報カメラ、又はオークションのタイマーなどは、コンテンツ再開時に一時停止したことで古い情報が表示されると、誤った情報を提供してしまうことになる。

    注記

    コンテンツを非表示にすることは、一時停止した後、(一時停止を解除した時に) 最新の表示へ移るのと同じ効果が得られる。

メカニズムが「利用者が一時停止するためのメカニズム」と判断されるためには、それが利用者に一時停止の手段として提供されつつも、利用者やフォーカスをそこに縛り付けてページが使用できなくなるようなものではない必要がある。ここでの「一時停止」という単語は「一時停止ボタン」という意味で使われているが、ボタンではないほかのメカニズムを使用することもできる。利用者がフォーカスしている時だけアニメーションが停止する(そしてフォーカスを解除し次第再開する)ようなものは、その過程でページが使い物にならなくするため「利用者が一時停止するためのメカニズム」とは判断されず、この達成基準も満たさないだろう。

「点滅」と「閃光」は、同じコンテンツを指すこともあることに注意することが重要である。

メリット

事例

関連リソース

リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。

達成方法

この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。

十分な達成方法

  1. G4: コンテンツを一時停止させて、一時停止させたところから再開できるようにする
  2. SCR33: コンテンツをスクロールし、かつそれを一時停止するメカニズムを提供するためにスクリプトを使用する
  3. G11: 5 秒未満で点滅するコンテンツを制作する
  4. G187: ユーザエージェントによって点滅するコンテンツを停止できるウェブコンテンツ技術を使用する
  5. G152: (5 秒以内の) 数回のループ後に点滅を停止するように、アニメーション GIF を設定する
  6. SCR22: 点滅を制御し、5 秒以内に停止させるために、スクリプトを使用する
  7. G186: 動きのあるコンテンツ、点滅するコンテンツ、又は自動更新するコンテンツを停止させるコントロールを使用する
  8. G191: 点滅するコンテンツのないページを再読み込みするリンク、ボタン、又はその他のメカニズムを提供する

参考達成方法

適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加の達成方法を検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、又は効果的であるとは限らない。

失敗例

以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。

重要な用語

点滅 (blinking)

注意を引く意図で、二つの視覚的な状態を交互に切り替えること。

注記

閃光も参照。ある程度の面積をもち、ある程度の明るさ、特定の頻度で点滅するものは、閃光に分類されることもありうる。

必要不可欠 (essential)

もし取り除いてしまうと、コンテンツの情報又は機能を根本的に変えてしまい、かつ、適合する他の方法では情報及び機能を実現できない。

閃光 (flash)

相対輝度の交互の変化で、ある程度の面積と特定の頻度によって、一部の人の発作を誘発する恐れがあるもの。

注記

許容されない閃光の種類に関する情報は、一般閃光閾値及び赤色閃光閾値を参照。

注記

点滅も参照。

一般閃光閾値及び赤色閃光閾値 (general flash and red flash thresholds)

次のいずれかに該当する場合、閃光、又は急速に変化する映像シーケンスは、閾値を下回っている (すなわち、コンテンツは基準を満たしている) ことになる:

  1. あらゆる 1 秒間において、一般閃光及び/もしくは赤色閃光は 3 回以下である。又は、
  2. 典型的な閲覧距離で、同時に発生する閃光の領域の合計が、画面上のどの視野 10 度内で、合計 0.006 ステラジアン (画面上の視野 10 度の 25%) よりも多くを占めていない。

ここで:

  • 一般閃光とは、相対輝度の相反する変化が相対輝度の最大値 (1.0) の 10%以上となる組合せであり、暗いほうの映像の相対輝度が 0.80 未満であるもの、として定義される。ここでいう「相反する変化の組合せ」とは、増加した後に減少する、又は減少した後に増加するものである。そして、
  • 赤色閃光は、彩度の高い赤色を含んだ相反する遷移として定義される。

例外: ホワイトノイズや、1 辺が (典型的な閲覧距離における視野の) 0.1 度未満の市松模様のような細かくバランスの取れた閃光は、閾値を超えることにはならない。

注記

一般的なソフトウェア又はウェブコンテンツの場合、コンテンツを 1024 × 768 ピクセルで表示したときに画面上の任意の場所で 341 × 256 ピクセルの矩形を使用すると、標準的な画面サイズ及び視聴距離 (例: 15~17 インチの画面を 22~26 インチの距離で視聴) における視野 10 度の適切な見積もりとなる。この 75~85 ppi という解像度は、CSS 仕様の規定ピクセル解像度である 96 ppi よりも低いことが知られており、したがってより保守的である。高解像度のディスプレイでは、同じコンテンツのレンダリングを表示するとより小さく安全な画像が得られるため、閾値の定義には低めの解像度を使用している。

注記

遷移とは、相対輝度 (赤色閃光の相対輝度/色) の計測値を時間軸でプロットしたときの隣接する山と谷の間の相対輝度 (赤色閃光の相対輝度/色) の変化である。閃光は、2 つの相反する遷移で構成される。

注記

この分野における「彩度の高い赤色を含む相反する遷移の組合せ」の (2022 年時点での) 実用的定義は、一方の遷移が、R / (R+G+B) の値が 0.8 以上の状態への遷移、又はその状態からの遷移であり、かつ、状態間の差が、CIE 1976 UCS 色度図において0.2 (単位なし) 以上である、相反する遷移の組合せである。[ISO_9241-391]

注記

ビデオの画面キャプチャから分析を行うツールを利用できる。しかし、閃光があらゆる 1 秒間の間隔において 3 回以下であれば、ツールでこの条件を満たしているかどうかを確認する必要はない。コンテンツは自動的に条件を満たすことになる (上記 1.及び 2.を参照)。

一時停止 (paused)

利用者の要求により停止し、利用者の要求があるまで再開しない。

相対輝度 (relative luminance)

最も暗い黒を 0 に、最も明るい白を 1 に正規化した色空間内の任意の点の相対的な明るさ。

注記

sRGB 色空間においては、色の相対輝度は、L = 0.2126 * R + 0.7152 * G + 0.0722 * B と定義されており、RG 及び B は以下のように定義される:

  • RsRGB <= 0.04045 の場合 R = RsRGB/12.92 、そうでない場合 R = ((RsRGB+0.055)/1.055) ^ 2.4
  • GsRGB <= 0.04045 の場合 G = GsRGB/12.92 、そうでない場合 G = ((GsRGB+0.055)/1.055) ^ 2.4
  • BsRGB <= 0.04045 の場合 B = BsRGB/12.92 、そうでない場合 B = ((BsRGB+0.055)/1.055) ^ 2.4

そして、RsRGB、GsRGB、及び BsRGB は、次のように定義される:

  • RsRGB = R8bit/255
  • GsRGB = G8bit/255
  • BsRGB = B8bit/255

^ という記号は、指数演算子である(計算式は、[SRGB] を参考にしている)。

注記

2021 年 5 月以前は、定義にある 0.04045 の値が異なっていた (0.03928)。これは、古いバージョンの仕様から取り込んだものであり、現在は更新されている。本ガイドラインの文脈における計算には、実質的な影響はない。

注記

ウェブコンテンツを閲覧するのに今日用いられているほとんどすべてのシステムは、sRGB 符号化を前提としている。コンテンツを処理して表示するのに別の色空間が用いられている事が分かっているのでない限り、コンテンツ制作者は sRGB 色空間を用いて検証するべきである。もしその他の色空間を用いるのであれば、達成基準 1.4.3 を参照。

注記

表示時にディザリングが発生する場合は、元の色の値が用いられる。元々ディザリングがかけられている色については、用いられている色の平均値を用いるべきである (R の平均値、G の平均値、及び B の平均値)。

注記

コントラストと閃光を検証する際に、この計算を自動で行うツールが利用できる。

注記

MathML を用いて相対輝度の定義を与える別のページでもこの計算式を表示できる。


訳注: このページは、2022 年 9 月 2 日版の Understanding WCAG 2.1 の翻訳です。2022 年 9 月 2 日版の原文は WAIC の管理するレポジトリから入手可能です。