達成基準 2.3.2: 3 回の閃光を理解する

達成基準 2.3.2 3 回の閃光 (レベル AAA): ウェブページには、どの 1 秒間においても 3 回を超える閃光を放つものがない。

意図

この達成基準の意図は、発作を引き起こす可能性をさらに引き下げることである。とても過敏な利用者もいるため、発作の可能性を完全に取り除くことはできない。しかし、画面のあらゆる領域にわたって 1 秒間に 3 回閃光を放つものをすべて取り除くことにより、利用者が発作を起こす可能性は、達成基準 2.3.1 でそうしているように、単に今日の国際的な標準規格で通常用いられている基準を満たしているときよりも、さらに引き下げられる。

達成基準 2.3.1 では、十分に薄暗い又は領域が十分に小さい閃光を許容しているが、達成基準 2.3.2 は、その明るさ又はサイズに関係なく、1 秒間に 3 回よりも多く閃光を放つことを認めていない。結果として、1 ピクセルの閃光であっても、この達成基準には反することになる。その意図は、1 ピクセルよりも大きい閃光を防ぐことにあるが、コンテンツ制作者が知る術のない画面拡大又はハイコントラストの設定が適用されているかもしれないため、あらゆる閃光を禁じているのである。

注記

場合によっては、AG ワーキンググループが「点滅」と称しているものと「閃光」と称しているものが、わずかに重なり合うことがあるかもしれない。この二つに対して異なる用語を用いているのは、「点滅」は利用者を注意散漫にさせる問題を引き起こすが、停止する (又は停止させることが可能である) 限り、短い間であれば許容できるのに対して、「閃光」は発作を引き起こすものであり、許容できないものだからである。発作は、ほとんどの利用者が閃光をオフにすることができるのよりも早く起こるものである。そのため、「点滅」はゆっくりと繰り返す変化で、利用者が気を取られるものを指している。そして、「閃光」は十分に明るい又は十分に長く持続すると発作を引き起こす恐れのある変化を指している。通常、点滅は 1 秒間に 3 回以上の速度にはならないし、点滅と閃光が部分的に一致することもまずない。しかし、点滅が 1 秒間に 3 回以上の速度の場合には、部分的に一致することもありえる。点滅に関するより詳細な情報は、2.2.2: 一時停止、停止、非表示を参照のこと。

メリット

事例

関連リソース

リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。

達成方法

この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。

十分な達成方法

  1. G19: どの 1 秒間においても、コンテンツに 3 回よりも多く閃光を放つコンポーネントがないことを確認する

重要な用語

支援技術 (assistive technology)

障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。

注記

支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。

注記

支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。

注記

主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。

この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:

  • 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
  • スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
  • 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
  • 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
  • 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
  • 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
点滅 (blinking)

注意を引く意図で、二つの視覚的な状態を交互に切り替えること。

注記

閃光も参照。ある程度の面積をもち、ある程度の明るさ、特定の頻度で点滅するものは、閃光に分類されることもありうる。

閃光 (flash)

相対輝度の相反する変化の組合せで、十分な広さを持ち、かつ特定の頻度の場合に、一部の人に発作を誘発する恐れがあるもの。

注記

許容されない閃光の種類に関する情報は、一般閃光閾値及び赤色閃光閾値を参照。

注記

点滅も参照。

一般閃光閾値及び赤色閃光閾値 (general flash and red flash thresholds)

次のいずれかに該当する場合、閃光、又は急速に変化する映像シーケンスは、閾値を下回っている (すなわち、コンテンツは基準を満たしている) ことになる:

  1. あらゆる 1 秒間において、一般閃光及び/もしくは赤色閃光は 3 回以下である。又は、
  2. 典型的な閲覧距離で、同時に発生する閃光の領域の合計が、画面上のどの視野 10 度内で、合計 0.006 ステラジアン (画面上の視野 10 度の 25%) よりも多くを占めていない。

ここで:

  • 一般閃光とは、相対輝度の相反する変化が相対輝度の最大値 (1.0) の 10%以上となる組合せであり、暗いほうの映像の相対輝度が 0.80 未満であるもの、として定義される。ここでいう「相反する変化の組合せ」とは、増加した後に減少する、又は減少した後に増加するものである。そして、
  • 赤色閃光は、彩度の高い赤色を含んだ相反する遷移として定義される。

例外: ホワイトノイズや、1 辺が (典型的な閲覧距離における視野の) 0.1 度未満の市松模様のような細かくバランスの取れた閃光は、閾値を超えることにはならない。

注記

一般的なソフトウェア又はウェブコンテンツの場合、コンテンツを 1024 × 768 ピクセルで表示したときに画面上の任意の場所で 341 × 256 ピクセルの矩形を使用すると、標準的な画面サイズ及び視聴距離 (例: 15~17 インチの画面を 22~26 インチの距離で視聴) における視野 10 度の適切な見積もりとなる。この 75~85 ppi という解像度は、CSS 仕様の規定ピクセル解像度である 96 ppi よりも低いことが知られており、したがってより保守的である。高解像度のディスプレイでは、同じコンテンツのレンダリングを表示するとより小さく安全な画像が得られるため、閾値の定義には低めの解像度を使用している。

注記

遷移とは、相対輝度 (赤色閃光の相対輝度/色) の計測値を時間軸でプロットしたときの隣接する山と谷の間の相対輝度 (赤色閃光の相対輝度/色) の変化である。閃光は、2 つの相反する遷移で構成される。

注記

この分野における「彩度の高い赤色を含む相反する遷移の組合せ」の (2022 年時点での) 実用的定義は、一方の遷移が、R / (R+G+B) の値が 0.8 以上の状態への遷移、又はその状態からの遷移であり、かつ、状態間の差が、CIE 1976 UCS 色度図において0.2 (単位なし) 以上である、相反する遷移の組合せである。[ISO_9241-391]

注記

ビデオの画面キャプチャから分析を行うツールを利用できる。しかし、閃光があらゆる 1 秒間の間隔において 3 回以下であれば、ツールでこの条件を満たしているかどうかを確認する必要はない。コンテンツは自動的に条件を満たすことになる (上記 1.及び2.を参照)。

相対輝度 (relative luminance)

最も暗い黒を 0 に、最も明るい白を 1 に正規化した色空間内の任意の点の相対的な明るさ。

注記

sRGB 色空間においては、色の相対輝度は、L = 0.2126 * R + 0.7152 * G + 0.0722 * B と定義されており、RG 及び B は以下のように定義される:

  • RsRGB <= 0.04045 の場合 R = RsRGB/12.92 、そうでない場合 R = ((RsRGB+0.055)/1.055) ^ 2.4
  • GsRGB <= 0.04045 の場合 G = GsRGB/12.92 、そうでない場合 G = ((GsRGB+0.055)/1.055) ^ 2.4
  • BsRGB <= 0.04045 の場合 B = BsRGB/12.92 、そうでない場合 B = ((BsRGB+0.055)/1.055) ^ 2.4

そして、RsRGB、GsRGB、及び BsRGB は、次のように定義される:

  • RsRGB = R8bit/255
  • GsRGB = G8bit/255
  • BsRGB = B8bit/255

^ という記号は、指数演算子である(計算式は、[SRGB] を参考にしている)。

注記

2021 年 5 月以前は、定義にある 0.04045 の値が異なっていた (0.03928)。これは、古いバージョンの仕様から取り込んだものであり、現在は更新されている。本ガイドラインの文脈における計算には、実質的な影響はない。

注記

ウェブコンテンツを閲覧するのに今日用いられているほとんどすべてのシステムは、sRGB 符号化を前提としている。コンテンツを処理して表示するのに別の色空間が用いられている事が分かっているのでない限り、コンテンツ制作者は sRGB 色空間を用いて検証するべきである。もしその他の色空間を用いるのであれば、達成基準 1.4.3 を参照。

注記

表示時にディザリングが発生する場合は、元の色の値が用いられる。元々ディザリングがかけられている色については、用いられている色の平均値を用いるべきである (R の平均値、G の平均値、及び B の平均値)。

注記

コントラストと閃光を検証する際に、この計算を自動で行うツールが利用できる。

注記

MathML を用いて相対輝度の定義を与える別のページでもこの計算式を表示できる。

ユーザエージェント (user agent)

ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。

ウェブコンテンツの取得、レンダリング及びインタラクションを支援する、ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム (支援技術も含む)。

ウェブページ (Web page)

単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。

注記

どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。

注記

このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。

単体のウェブリソースであり、埋め込まれている画像及びメディアのすべてを含んだもの。

Asynchronous JavaScript and XML (AJAX) を用いたウェブメールのプログラム。そのプログラム全体は http://example.com/mail に存在しているが、受信トレイ、連絡先、カレンダーがある。受信トレイ、連絡先、又はカレンダーを表示するリンク又はボタンが提供されているが、全体としてページの URI は変更されない。

カスタマイズ可能なポータルサイトで、利用者が様々なコンテンツモジュールのセットから表示させるコンテンツを選択できるようなもの。

ブラウザで "http://shopping.example.com/" へ行くと、映画のようなインタラクティブなショッピング環境になる。そこでは、視覚的に店内を移動して、店内の棚から商品をドラッグして、目の前にある視覚的な買物カゴに商品を入れる。商品をクリックすると、同時に仕様書が浮き上がるように表示される。これは 1 ページだけのウェブサイトかもしれないし、ウェブサイトの中のほんの 1 ページなのかもしれない。


訳注: このページは、2022 年 9 月 2 日版の Understanding WCAG 2.1 の翻訳です。2022 年 9 月 2 日版の原文は WAIC の管理するレポジトリから入手可能です。