意図
この達成基準の意図は、ユーザエージェントがテキスト及びその他の形式の言語学上の言語によるコンテンツを正しく提示するために必要なウェブページの情報を、コンテンツ制作者が提供することを保証することである。支援技術と従来のユーザエージェントはともに、ウェブページの言語が識別されるとき、テキストをより正確に描画することができる。スクリーンリーダーは、正しい発音規則を読み込むことができる。ビジュアルブラウザは、文字や書体を正しく表示することができる。メディアプレーヤーは、キャプションを正しく表示できる。結果として、障害のある利用者がコンテンツをより理解できるようになる。
Internationalization Best Practices: Specifying Language in XHTML & HTML Content で述べられているように、ウェブページのデフォルトの自然言語が、デフォルトのテキスト処理言語となる。ウェブページがいくつかの言語を使用している時、デフォルトのテキスト処理言語は、最も使われている言語である。(複数の言語が同じ割合で使われている場合、最初に使われている言語をデフォルトの自然言語として選択する必要がある。)
適合レベル A を目指している多言語サイトについて、WCAG ワーキンググループはコンテンツ制作者に、レベル AA の達成基準ではあるが、達成基準 3.1.2 にも同じように適合することを強く推奨する。
メリット
この達成基準は、次のような利用者にメリットがある:
- スクリーンリーダー又はテキストを合成音声に変換するその他の技術を使用している利用者。
- 例えば、文字及びアルファベットを認識したり、単語を読み取ったりすることのように、流暢かつ正確に書かれたものを読むことが困難な利用者。
- テキストを音声に変換するソフトウェアを使用している、特定の認知の障害、言語の障害、及び学習障害のある利用者。
- 同期したメディアのコンテンツの音声トラックでの言語の変化を識別するのに、キャプションを頼りにしている利用者。
事例
事例 1. 二つの言語で書かれたコンテンツのあるウェブページ
ドイツで制作され、HTML で書かれたウェブページに、ドイツ語と英語の両方のコンテンツが含まれているが、コンテンツのほとんどはドイツ語である。デフォルトの自然言語は、html 要素の lang 属性によって、ドイツ語 (de)として識別される。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
参考達成方法
適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加の達成方法を検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、又は効果的であるとは限らない。
テストルール
以下は、この達成基準の特定の側面に関するテストルールである。WCAG への適合を確認するために、これらの特定のテストルールを使用する必要はないが、これらは定義され、承認されたテスト方法である。テストルールの使用については、WCAG 達成基準のテストルールを理解するを参照のこと。
重要な用語
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
人間とコミュニケーションをとるために話される、書かれる、又は (視覚的もしくは触覚的な手段で) 手話にされる言語。
手話も参照。
支援技術を含む様々なユーザエージェントが抽出でき、利用者に様々な感覚モダリティで提示できるような形のデータがコンテンツ制作者によって提供されたとき、そのデータがソフトウェアによって解釈されること。
マークアップ言語で、一般に入手可能な支援技術が直接アクセスできる要素と属性から解釈される。
非マークアップ言語の技術特有のデータ構造から解釈され、一般に入手可能な支援技術がサポートするアクセシビリティ API を通じて支援技術に提供される。
意味を伝えるために、手と腕の動き、顔の表情又は身体の姿勢の組み合わせを用いる言語。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブコンテンツの取得、レンダリング及びインタラクションを支援する、ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム (支援技術も含む)。
単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。
どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。
このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。
単体のウェブリソースであり、埋め込まれている画像及びメディアのすべてを含んだもの。
Asynchronous JavaScript and XML (AJAX) を用いたウェブメールのプログラム。そのプログラム全体は http://example.com/mail に存在しているが、受信トレイ、連絡先、カレンダーがある。受信トレイ、連絡先、又はカレンダーを表示するリンク又はボタンが提供されているが、全体としてページの URI は変更されない。
カスタマイズ可能なポータルサイトで、利用者が様々なコンテンツモジュールのセットから表示させるコンテンツを選択できるようなもの。
ブラウザで "http://shopping.example.com/" へ行くと、映画のようなインタラクティブなショッピング環境になる。そこでは、視覚的に店内を移動して、店内の棚から商品をドラッグして、目の前にある視覚的な買物カゴに商品を入れる。商品をクリックすると、同時に仕様書が浮き上がるように表示される。これは 1 ページだけのウェブサイトかもしれないし、ウェブサイトの中のほんの 1 ページなのかもしれない。