達成基準 1.3.6: 目的の特定を理解する

達成基準 1.3.6 目的の特定 (レベル AAA): マークアップ言語で実装されたコンテンツでは、ユーザインタフェース コンポーネント、アイコン、領域の目的はプログラムによる解釈が可能である。

意図

この達成基準の意図は、ページ上の多くの要素の目的をプログラムにより決定できるようにすることである。これにより、ユーザエージェントは、さまざまなモダリティを使用してその目的を利用者に抽出して提示できる。

多くの語彙が限られている利用者は、ウェブを使用するために使い慣れた用語又はシンボルに依存している。しかし、一部の利用者にとって馴染みのあるものは、別の利用者には馴染みがないかもしれない。コンテンツ制作者が目的を示すと、利用者はパーソナライズ及び利用者設定を利用して、使い慣れたシンボル又は語彙のセットを読み込むことができる。

この達成基準は、コンテンツ制作者がアイコン、リージョン、コンポーネント (ボタン、リンク、フィールドなど) の目的をプログラムにより関連付けて、ユーザエージェントがそれぞれの目的を判断し、インジケーター又は用語を利用者に理解できるように適応させることを要求する。それは、このコンテキストを提供するセマンティクス又はメタデータを追加することで達成される。役割 (role) の情報を追加するのと似ているが (4.1.2 で要求されているように) 、ユーザインタフェース コンポーネントが何であるかについての情報 (例えば画像) を提供する代わりに、そのコンポーネントが何を表すものかについての情報 (例えばホームページへのリンクなど) を提供する。

ページの領域を特定することで、利用者は自分のユーザエージェントで領域を削除又は強調表示することができる。

声を出さない人向けの製品では、コミュニケーションを促進するために、よくシンボルを使用する。これらのシンボルは事実上、人々の伝達手段としての言語である。残念ながら、これらのシンボルの多くは著作権の対象であるだけでなく、相互運用もできない。つまり、エンドユーザは一つのデバイスしか使用できず、 1 社だけで作られていないコンテンツ、アプリケーション、又は支援技術を使用できない。

この達成基準により、シンボルは相互運用可能になり、シンボルの利用者は 1 社だけで作られていない様々なコンテンツを理解できる。利用者のシンボルが同じノードに割り当てられている場合、ユーザエージェントは利用者が理解可能なシンボルを取得できる。人々はシンボルを購入し、それらを様々なデバイスやアプリケーションで使用することができる。 (シンボルはまだ独自のものであることに注意したいが、相互運用可能なものもある。)

メリット

恩恵を受ける人々は次のような認知障害を持っている:

この達成基準を満たすと、追加のサポート又は使い慣れたインタフェース (次のような必要なものを含む) を必要とする利用者に役立つ。

事例

関連リソース

リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。

達成方法

この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。

十分な達成方法

参考達成方法

適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加の達成方法を検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、又は効果的であるとは限らない。

  • ユーザエージェントが利用者のニーズに最も合うコンテンツのバージョンを見つけることができるようにする
  • セマンティクスを使用して重要な機能を特定する (coga-simplification="simplest")
  • aria-invalid 及び aria-required の使用

重要な用語

支援技術 (assistive technology)

障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。

注記

支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。

注記

支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。

注記

主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。

この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:

  • 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
  • スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
  • 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
  • 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
  • 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
  • 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
プログラムによる解釈 (programmatically determined)

支援技術を含む様々なユーザエージェントが抽出でき、利用者に様々な感覚モダリティで提示できるような形のデータがコンテンツ制作者によって提供されたとき、そのデータがソフトウェアによって解釈されること。

マークアップ言語で、一般に入手可能な支援技術が直接アクセスできる要素と属性から解釈される。

非マークアップ言語の技術特有のデータ構造から解釈され、一般に入手可能な支援技術がサポートするアクセシビリティ API を通じて支援技術に提供される。

領域 (region)

コンテンツの知覚可能、プログラムによる解釈が可能なセクション

注記

HTML では、landmark ロールが指定されたあらゆるエリアは領域になる。

ユーザエージェント (user agent)

ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。

ウェブコンテンツの取得、レンダリング及びインタラクションを支援する、ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム (支援技術も含む)。

ユーザインタフェース コンポーネント (user interface component)

コンテンツの一部分で、特定の機能を実現するための単一のコントロールとして利用者が知覚するもの。

注記

複数のユーザインタフェース コンポーネントが、単一のプログラム要素で実装されることもある。ここでいう「コンポーネント」は、プログラムの手法と結びついたものではなく、利用者が別々のコントロールとして知覚するものを指す。

注記

ユーザインタフェース コンポーネントには、フォーム要素、リンクだけでなく、スクリプトで生成されるコンポーネントが含まれる。

注記

ここでの「コンポーネント」又は「ユーザインタフェース コンポーネント」は、「ユーザインタフェース要素」とも呼ばれる。

アプレットには、コンテンツ内を行単位、ページ単位、又はランダムアクセスで移動するために用いられる「コントロール」がある。これらには、いずれも名前 (name) を割り当て、個別に設定できるようにする必要があるため、それぞれが「ユーザインタフェース コンポーネント」となる。


訳注: このページは、2022 年 9 月 2 日版の Understanding WCAG 2.1 の翻訳です。2022 年 9 月 2 日版の原文は WAIC の管理するレポジトリから入手可能です。