解説書 達成基準 2.5.6:入力メカニズムの共存 (レベル AAA)
要約
- 目標
- 利用者は、コンテンツを入力するための様々な方法を選択できる。
- 何をすればよいか
- 利用者が入力モードを切り替えるのを妨げない。
- なぜそれが重要か
- 利用者は一つの入力方法だけでは作業できない場合がある。
意図
この達成基準の意図は、人々がウェブコンテンツとやりとりするときに、入力の様々なモードを使用したり切り替えたりできるようにすることである。利用者はウェブコンテンツとやりとりするとき、多様な入力メカニズムを使うことができる。これらのメカニズムは、キーボード又はキーボードのようなインタフェース、及び、マウス又はスタイラスペンもしくはタッチスクリーンのようなポインタデバイスの、組み合わせであってもよい。
デバイスが主たる入力メカニズムを備えていても、利用者はデバイスとやりとりするときに、代替の入力メカニズムの使用を選択してもよい。例えば、スマートフォン及びタブレットにおける主たる入力メカニズムはタッチスクリーンである。これらのデバイスの利用者は、タッチスクリーンを使用する代わりに、ペアリングされたマウス又は外付けキーボードを使用することを選択してもよい。
特定のタスク及びインタラクションが代替の入力メカニズムを使用することでより簡単に遂行できると利用者が判断した場合、利用者はいつでも入力メカニズムを切り替えることができるべきである。コンテンツは、利用者によるインタラクションを、特定の入力メカニズムの使用に限定してはならない。ただし、その制限が必要不可欠である場合、すなわちコンテンツのセキュリティを確保する、又は利用者による設定を尊重する必要がある場合を除く。
注記: 利用者がキーボード上でどのようにタッチタイピングするかを教える、及び/又はその習熟度及び速度を測定する、タッチタイピング練習ウェブアプリケーションは、特定の入力メカニズムに対する必要不可欠な制限の例である。
利点
- 利用者は、好みの入力メカニズムを使用してウェブコンテンツとやりとりができる。
- 利用者は、自らの意図又は状況の求めに応じて、入力メカニズムを切り替えることができる。
- 利用者は、オペレーティングシステムがサポートしていれば、任意で入力メカニズムを追加及び削除することができる。
事例
- 運動障害のある利用者は、マウス及びキーボードを、タッチスクリーン付きスマートフォンにペアリングする。これにより、スマートフォンはそれらの入力デバイスによっても操作することができるようになり、コンテンツがタッチスクリーンを唯一の入力メカニズムとすることはなくなる。
- 精度の低いタッチ対応ノートパソコンでは、手の震えや身体運動の巧緻性の制限などの理由で小さなターゲットを動作させるのが困難な場合でも、キーボード及びトラックパッドを使用してコンテンツとやりとりすることができる。
- 利用者がデスクトップのキーボードを使用してページとのやりとりを開始し、その後、タッチ対応モニターをセカンダリーモニターとして接続する。コンテンツは、この新たに追加された入力メカニズムを使用しても操作することができ、最初に検出された入力メカニズムであるキーボードのみが使用中であるとは想定していない。
- 音声入力の利用者は、音声コマンドを使用して、マウス (及びキーボード) コマンドをシミュレーションするための変換をしてコンテンツをナビゲートする。ただし、同僚と話すときは、利用者は音声認識をオフにし、代わりにマウスを使用する。
- 利用者はマウスでメニューを開き、矢印キーでメニュー項目間を移動する。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
- W3C Pointer Events - Level 2
- Patrick H. Lauke - Detecting touch: it's the 'why', not the 'how'
- Chris Wilson / Paul Kinlan: Touch And Mouse - Together Again For The First Time
- W3C Touch Events - Level 2: Interaction with Mouse Events and click
- W3C CSS Media Queries Level 4: Interaction Media Features
テクニック
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断するテクニック、又は複数のテクニックの組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらのテクニックを用いる必要はない。その他のテクニックについての詳細は、WCAG 達成基準のテクニックを理解するの「その他のテクニック」を参照のこと。
十分なテクニック
- JavaScript において、
focus
、blur
、click
, といった高レベルの、特定の入力方法に依存しないイベントハンドラのみを使用する。(将来、テクニックに追加される可能性あり) - Javascript において、キーボードもしくはキーボードのような入力、及びポインタ入力のためのイベントハンドラを、同時に登録する。Pointer Events Level 2 の EXAMPLE 1 (将来、テクニックに追加される可能性あり)
失敗例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。
重要な用語
もし取り除いてしまうと、コンテンツの情報又は機能を根本的に変えてしまい、かつ、適合する他の方法では情報及び機能を実現できない。