解説書 達成基準 2.4.1:ブロックスキップ (レベル A)
要約
- 目標
- 利用者が、キーボード操作でより簡単にナビゲートできるようにする。
- 何をすればよいか
- 繰り返されているコンテンツをスキップする手段を提供する。
- ぜそれが重要か
- キーボードインタフェースに依存する利用者が、ページ内を効率的に、自由に移動できる。
意図
この達成基準の意図は、コンテンツを通して順を追ってナビゲートする人に対して、ウェブページの主たるコンテンツへより直接的なアクセスをできるようにすることである。ウェブページ及びウェブアプリケーションには、他のページ又は画面でも現れるコンテンツがしばしばある。コンテンツの中で繰り返されているブロックの例には、ナビゲーションリンク、ヘッダーコンテンツ、及び広告のフレームなどを含むが、これに限定されるものではない。個々の単語、フレーズ、又は単独のリンクなどの小さな繰り返されるセクションは、この達成基準が意図するブロックとはみなされない。
コンテンツを順を追ってナビゲートする利用者は通常、各ページで繰り返されるコンテンツを通り抜けてナビゲートする必要がある。これは、目の見える利用者が画面の中央 (通常はメインコンテンツが現れるところ) に注目して繰り返される要素を無視したり、マウスクリック 1 回でリンクを選択したりすることによって、選択したい要素より前にあるリンクもしくはフォームコントロール全てに出会わずに済ませる能力があることとは、対照的なものである。
この達成基準の意図は、コンテンツ制作者にユーザエージェントが提供している機能と重複する手段を提供するように求めることではない。ほとんどのウェブブラウザは、利用者がフォーカスをページの先頭に移動するためのキーボードショートカットを提供しているので、ナビゲーションリンク一式をウェブページの下部で提供している場合は、「スキップ」リンクの提供は不要かもしれない。
注記
この達成基準は、複数のページ上で繰り返されているコンテンツのブロックを扱っているが、単独のページにおいて、達成基準 1.3.1 にあるように、構造をマークアップすることも強く推奨する。
この達成基準では、「ウェブページ一式において」という用語は使用していないものの、一つの集合に属するページの集合の概念が示唆されている。コンテンツ制作者は、相互になんらかの関係がなく、かつ「共通の目的を共有し、同じコンテンツ制作者、グループ、又は組織により制作されたウェブページの集合」(ウェブページ一式の定義) ではない二つのページにおいて、コンテンツが重複する可能性を避けることは期待されないだろう。
注記
たとえ一つの集合に含まれていないウェブページの集合であっても、あるウェブページがそのページ内で繰り返されるテキストのブロックを持つ場合、そのブロックをスキップするための手段を提供することは (必須ではないが) 有用かもしれない。
利点
この達成基準を満たしていない場合、何らかの障害のある利用者がウェブページのメインコンテンツへ素早くかつ容易に到達するのが困難になることがある。
- 同じサイト上でいくつかのページを訪れるスクリーンリーダーの利用者は、メインコンテンツが読み上げられる前に、ページごとのすべてのヘッダーコンテンツ及び多数のナビゲーションリンクを聞かざるを得ない状態を回避できる。
- キーボード又はキーボードインタフェースのみを使用している人が、より少ないキーストロークでコンテンツに到達できる。そうでなければ、メインコンテンツ領域にあるリンクに到達する前に多数のキーストロークが必要になってしまうかもしれない。これは長い時間がかかってしまう恐れがあり、利用者にとって深刻な肉体的苦痛を引き起こすことがある。
- 画面拡大ソフトを使用している人は、新しいページに入るたびに、メインコンテンツが始まる場所を見つけるために、同じヘッダーコンテンツ又はその他の情報のブロックの中を探す必要がない。
- リンクがリストとしてグループ化されていると、認知障害のある人にも、スクリーンリーダーを使用している人にも役立つことがある。
事例
- 報道機関のホームページには、ページの中央にメインの記事があり、周囲を広告、検索、その他のサービス向けの多数のブロック及びサイドバーに囲まれている。ページの先頭に、そのメインの記事へジャンプするリンクがある。このリンクを使用しない場合、キーボードの利用者は、メインの記事へ到達するまでに約 40 のリンクを Tab キーで処理する必要がある。スクリーンリーダーの利用者は、200 単語を聞く必要がある。そして、画面拡大ソフトの利用者は、メインの記事の場所を探し回らなければならなくなる。
- eコマースウェブサイトには、検索結果リストの前にフィルターの長いリストが含まれている。リストの上のリンクを使用すると、利用者はフィルターをスキップして、製品の結果にすばやくアクセスできる。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
テクニック
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断するテクニック、又は複数のテクニックの組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらのテクニックを用いる必要はない。その他のテクニックについての詳細は、WCAG 達成基準のテクニックを理解するの「その他のテクニック」を参照のこと。
十分なテクニック
-
次のテクニックの中から一つを用いて、繰り返されるブロックをスキップするリンクを作成する:
-
次のテクニックの中から一つを用いて、スキップ可能な方法で繰り返されるブロックをグループ化する:
- ARIA11: Using ARIA landmarks to identify regions of a page
- H69: Providing heading elements at the beginning of each section of content
- PDF9: Providing headings by marking content with heading tags in PDF documents
- H70: Using frame elements to group blocks of repeated material AND H64: Using the title attribute of the iframe element
- SCR28: Using an expandable and collapsible menu to bypass block of content
参考テクニック
適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加のテクニックを検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべてのテクニックが使用可能、又は効果的であるとは限らない。
重要な用語
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
注記
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
注記
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
注記
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
与えられた規格、ガイドライン、又は仕様のすべての要件を満たすこと。
結果を得るためのプロセス又は手法。
注記
メカニズムは、宣言する適合レベルのすべての達成基準を満たしている必要がある。
ある活動を完了させるために必要な利用者の一連の動作。
ユーザエージェントがどのようにレンダリング、再生、又は実行するかを符号化するメカニズム。
注記
このガイドラインで用いられている「ウェブ技術」及び (単独で用いられている) 「技術」という用語は、どちらもウェブコンテンツ技術を指す。
注記
ウェブコンテンツ技術には、マークアップ言語、データ形式、及びプログラム言語などがあり、これらをコンテンツ制作者が単独で、又は組み合わせて用いることによって、静的なウェブページや同期したメディアによる提示、さらには動的なウェブアプリケーションに至るまでの様々なエンドユーザ体験を作ることができる。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。
注記
どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。
注記
このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。
テストルール
以下は、この達成基準の特定の側面に関するテストルールである。この特定のルールを使用して WCAG に適合しているかどうかを確認する必要はないが、これらのルールは定義され、承認されたテスト方法である。テストルールの使用については、WCAG 達成基準のテストルールを理解するを参照のこと。