リンクの目的:
達成基準 2.4.9 を理解する
2.4.9 リンクの目的: それぞれのリンクの目的がリンクのテキストだけから特定できるメカニズムが利用可能である。ただし、リンクの目的が一般的にみて利用者にとって曖昧な場合は除く。 (レベルAAA)
この達成基準の意図
この達成基準の意図は、利用者がそのリンク先に行きたいかどうかを判断できるように、コンテンツにあるそれぞれのリンクの目的を理解しやすくすることである。(達成基準 3.2.4 により)リンク先が同じリンクは同じ記述であるべきだが、目的やリンク先が異なるリンクはその記述も異なるようにすべきである。リンクの目的はそのリンクテキストによって確認できれば、例えばユーザーエージェントがページ上の全てのリンクの一覧を提供する際のように、前後の文脈に関係ない状態でも、利用者はリンクを理解することができるようになる。
この達成基準には、リンクの目的をウェブページ上にある情報からは判断できないリンクに対して例外が認められている。そのような状況では、障害のある利用者が不利な立場にあるわけではない。リンクの目的を理解するために追加入手可能な文脈が一切ないのである。しかし、この達成基準を満たすためには、そのリンクの目的を解釈するためにそのウェブページ上で利用できる文脈はどんなものであれ、そのリンクテキストで入手可能にしなればならない。
「メカニズム」という用語を用いているのは、コンテンツ制作者がすべてのリンクを前後の文脈に関係なく完全に理解できるようにするか、あるいはそのようにする方法を提供できるようにするためである。リンクすべてをリンクテキストだけでも曖昧ではないようにすることで、ページによっては、分かりやすくなる利用者もいれば、分かりづらくなってしまう利用者もいる。リンクを(それ自身により)明らかにするか そうしないか できるようにすることは、障害のある利用者にも無い利用者にも、彼らのニーズに最も合致したフォーマットのページを使えるようにすることである。
例えば、100冊の書籍のタイトルが並んでいるページに、それぞれの書籍を HTML、PDF、DOC、TXT、MP3、又は AAC でダウンロードするリンクがある場合、たいていは書籍のタイトルの後に「HTML版」のようなリンクがある。そして、「次のバージョンも利用可能:」という文が続いていて、「HTML」、「PDF」、「DOC」、「TXT」、「MP3」、そして「AAC」という短いテキストのリンクがある。レベル AAA では、ある利用者は このようにページを見ることが選べるであろう。それぞれのリンクに書籍のタイトルがあると、分かりづらかったり、使うのに時間がかかってしまったりするからである。その他の利用者は、それぞれのリンクがそれだけで理解できるように、それぞれのリンクの一部に書籍のタイトルがあるようにページを見ることが選べるであろう。前者のグループにも後者のグループにも、いろいろな使い方をしている、又は様々な種類や度合いの障害のある、視覚又は認知の障害のある利用者が含まれるであろう。
達成基準 2.4.9 の具体的なメリット
運動障害のある利用者が、関心のないウェブページをスキップできるようになり、関係のないページへ行ってからまた元のページの戻ってくるような無駄なキーストロークを避けることができるようになる。
認知に制約のある利用者が必要のないコンテンツへ行ったり来たりして現在位置を見失う、ということがなくなる。
視覚障害のある利用者は、元のページに戻ってきたときコンテンツのその場所が分からなくなる、ということがなくなり恩恵を受ける。そして、リンク先が説明されているので、情報を探す上で、スクリーンリーダーのリンク一覧がより有益になる。
達成基準2.4.9 の事例
アイコンとテキストの両方が同じリンク内にある
自動投票機のアイコンと「アイルランド政府の電子選挙委員会」というテキストが、一つのリンクになっている。
書籍名のリスト
リストにある書籍が、HTML、PDF、そして mp3(人が本を読み上げているのを録音したもの)の3つのフォーマットで利用可能である。書籍のタイトルの後に、様々なフォーマットへのリンクがある。例えば、描画されるリンクテキストにはフォーマット名しかないが、それぞれのリンクに関連付けられているテキストには、例えば「ガリバー旅行記 MP3版」というように、書籍のタイトルとフォーマットの両方がある。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
達成基準2.4.9 の実装方法及び不適合事例 - リンクの目的
この節にある番号付の項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する実装方法、又は複数の実装方法の組合せを表している。WCAG 2.0 適合要件のすべてが満たされている場合にのみ、次に挙げる実装方法により、この達成基準を満たすことができる。
達成基準を満たすことのできる実装方法
次の実装技術の一つを使用することでG91: リンクの目的を説明したリンクテキストを提供する :
次の技術特有の実装方法の一つを用いて、利用者が短めのリンクテキスト又は長めのリンクテキストを選べるようにする:
次の実装方法の一つを用いて、リンクの目的を補足説明する:
達成基準 2.4.9 でさらに対応が望まれる実装方法(参考)
適合するためには必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするためには、次の付加的な実装方法もあわせて検討するとよい。ただし、すべての状況において、すべての実装方法が使用可能、または効果的であるとは限らない。
達成基準 2.4.9 のよくある不適合事例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準 2.4.9 に適合していないとみなした、よくある不適合事例である。
重要な用語
- メカニズム
結果を得るためのプロセス又は手法。
- 一般的にみて利用者にとって曖昧
リンク及びリンクと同時に利用者に提供されているウェブページのすべての情報から、そのリンクの目的が断定できない(すなわち、障害のない利用者でも、そのリンクに対する操作を行うまで、そのリンクに対する操作結果が分からない)。
事例 : 「注目すべき輸出品はグァバです。」という文中にある「グァバ」という単語がリンクである場合、そのリンクは、グァバの定義、輸出されているグァバの量を挙げる図表、又はグァバを収穫している人々の写真へリンクされているかもしれない。この場合、リンクの目的は、そのリンクを選択するまですべての利用者が分からず、障害のある利用者だけが不利な立場にはならない。