収録済の音声コンテンツの手話通訳:
達成基準 1.2.6 を理解する
この達成基準の意図
この達成基準の意図は、デフ又は音声が聞こえにくい利用者で手話の分かる利用者が、同期したメディアのプレゼンテーションにおける音声トラックのコンテンツを理解できるようにすることである。例えば、キャプションに書かれているテキストというのは、第二言語であることがよくある。手話は、イントネーション、感情、及び、キャプションには反映されないが手話通訳には反映されるその他の音声情報を提供するので、手話通訳は同期したメディアの内容に対してキャプションよりも豊富でより等価な情報を提供することができる。また、手話で頻繁にコミュニケーションを図っている利用者にとっては、手話で提供された情報のほうがより早く理解できるので、同期したメディアが時間の経過に伴って変化するプレゼンテーションとなる。
達成基準 1.2.6 の具体的なメリット
普段使う言語が手話である利用者は、読解力に限界があることがある。そういった利用者は、キャプションを読んで理解することができない恐れがあり、同期したメディアのコンテンツを利用するには手話を必要とする。
達成基準1.2.6 の事例
事例 1.ある企業が、従業員すべてに対して重要な発表をしている。総会は本社で行われていて、その模様がウェブでストリーミング配信されている。総会の場には手話通訳者がいて、ライブの映像にはプレゼンテーションをしている人物及び手話通訳者の全身が映し出されている。
事例 2.事例 1 にあるのと同じ発表が、遠隔地にいる従業員にはウェブキャストで届けられている。画面が一つしかないため、手話通訳者は画面のコーナーに映し出されている。
事例 3.ある大学が、講義をする教授の同期したメディアによるプレゼンテーションを作成して、講義のオンライン版を提供している。そのプレゼンテーションには、化学の実験を解説して実演している教授の映像がある。講義内容の手話通訳を制作して、ウェブ上で同期したメディア版とあわせて提供している。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
National Institute on Deafness and other Communication Disorders: Information on American Sign Language
達成基準1.2.6 の実装方法及び不適合事例 - 収録済の音声コンテンツの手話通訳
この節にある番号付の項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する実装方法、又は複数の実装方法の組合せを表している。WCAG 2.0 適合要件のすべてが満たされている場合にのみ、次に挙げる実装方法により、この達成基準を満たすことができる。
達成基準を満たすことのできる実装方法
達成基準 1.2.6 でさらに対応が望まれる実装方法(参考)
適合するためには必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするためには、次の付加的な実装方法もあわせて検討するとよい。ただし、すべての状況において、すべての実装方法が使用可能、または効果的であるとは限らない。
達成基準 1.2.6 のよくある不適合事例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準 1.2.6 に適合していないとみなした、よくある不適合事例である。
(今のところ、文書化されている不適合事例がない)
重要な用語
- 収録済
ライブではない情報。
- 同期したメディア
情報を提示するために、他のフォーマットと同期した音声もしくは映像、又は時間の経過に伴って変化するインタラクティブな構成要素と同期した音声又は映像。ただし、そのメディアが テキストの代替メディアであって、代替メディアであることが明確にラベル付けされているものは除く。
- 手話通訳
ある言語、通常は発話された言葉を、手話に訳すこと。
注記: 手話は、本来、同じ国や地域で話されている言葉とは関係がない独立したものである。
- 音声
音声再生の技術。
注記: 音声は、合成的に生成されたもの(音声合成を含む)、実世界で録音したもの、又はその両方でもありうる。