解説書 達成基準 1.2.1:音声のみ及び映像のみ (収録済) (レベル A)
要約
- 目標
- 音声のみ及び映像のみコンテンツを、より多くの人が理解できる。
- 何をすればよいか
- コンテンツが一つの感覚でしか知覚できないとき、代替コンテンツを提供する。
- なぜそれが重要か
- コンテンツを見たり聞いたりすることが完全にはできない人が、内容を理解できる。
意図
この達成基準の意図は、収録済の音声しか含まないコンテンツ及び収録済の映像しか含まないコンテンツの伝える情報を、すべての利用者が入手できるようにすることである。テキストは利用者のニーズに合った、あらゆる感覚モダリティ (例えば、視覚、聴覚、又は触覚) を通じてレンダリング可能であるため、時間依存メディアの代替は、情報をアクセシブルにする。将来的には、テキストを記号、手話、又はその言語のより単純な形態に変えることも可能になるかもしれない。
音声情報や利用者のインタラクションを伴わない収録済の映像の例は、無声映画である。書き起こしの目的は、視覚的に提示されるものと同等のものを提供することである。収録済の映像コンテンツの場合、コンテンツ制作者には音声トラックを提供するという選択肢がある。音声による代替の目的は、映像と同等のものになることである。これにより、視覚障害の有無に関係なく、利用者はコンテンツを同時に楽しむことが可能になる。このアプローチはまた、映像と音声の並行した提示を提供するため、認知障害、言語障害、及び学習障害のある利用者がコンテンツを理解しやすくすることができる。
注記
音声情報がない映像に対し同等として提供されている音声に対しては、テキストによる代替は必要ない。例えば、無声映画の代替として提供されている音声解説にキャプションを付与する必要はない。
1.2.9: 音声のみ (ライブ)も参照のこと。
メリット
- この達成基準は、視覚的なコンテンツを知覚するのが困難な利用者の役に立つ。支援技術が、テキストによる代替を音声で読み上げる、視覚的に提示する、又は点字に変換することが可能になる。
- テキストベースの時間依存メディアの代替は、収録済の映像コンテンツの意味を理解するのが困難な利用者の役に立つことがある。
- ろう、難聴、又は何らかの理由で音声情報を理解するのが困難な人が、テキストによる提示を読むことができる。テキストを手話に自動翻訳する研究が現在進められている。
- 盲ろうの利用者が、テキストを点字で読むことができるようになる。
- 加えて、テキストは、非テキストコンテンツを検索可能なものにし、コンテンツを様々な方法で再利用できるようにする。
事例
- 演説を録音した音声
- 「議会での議長の演説」という音声クリップへのリンクがある。そして、音声クリップへのリンクの直後に、テキストの書き起こしへのリンクが提供されている。
- 記者会見を録音した音声
- ウェブページに、録音音声であることが分かる記者会見の録音音声へのリンクがある。また、そのページには記者会見のテキストによる書き起こしへのリンクもある。テキストによる書き起こしには、話者が発言したすべての逐語的な記録が含まれる。そこには、例えば、喝采、笑い、聴衆からの質問など、その録音の一部であるその他の重要な音声に言及するだけでなく、誰が話しているのかも記されている。
- 車のエンジンがどのように動くのかを説明するアニメーション
- 車のエンジンがどのように動くのかを見せているアニメーションがある。音声はなく、そのアニメーションはエンジンがどのように動くかを説明するチュートリアルの一部である。チュートリアルのテキストがすでに完全な説明をしているため、そのアニメーションはテキストの代替物であり、画像はテキストの代替物であり、テキストによる代替はそのアニメーションの簡潔な説明のみを含み、詳細についてはチュートリアルのテキストを参照している。
- 音声トラック付きの、映像しか含まないファイル
- 無音映画に、映像の動きを説明している音声トラックがある。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
テクニック
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断するテクニック、又は複数のテクニックの組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらのテクニックを用いる必要はない。その他のテクニックについての詳細は、WCAG 達成基準のテクニックを理解するの「その他のテクニック」を参照のこと。
十分なテクニック
そのコンテンツに合致する状況を以下から選択すること。それぞれの状況には、WCAG ワーキンググループがその状況において十分であると判断する、番号付のテクニック (又は、テクニックの組み合わせ) がある。
状況 A: 収録済の音声しか含まないコンテンツの場合:
状況 B: 収録済の映像しか含まないコンテンツの場合:
参考テクニック
適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加のテクニックを検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべてのテクニックが使用可能、又は効果的であるとは限らない。
失敗例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。
- F30: Failure of Success Criterion 1.1.1 and 1.2.1 due to using text alternatives that are not alternatives (e.g., filenames or placeholder text)
- F67: Failure of Success Criterion 1.1.1 and 1.2.1 due to providing long descriptions for non-text content that does not serve the same purpose or does not present the same information
重要な用語
時間依存の視覚的及び聴覚的情報を正しい順序で説明したテキストを含み、あらゆる時間依存のインタラクションによる結果を得る手段を提供している文書。
注記
同期したメディアのコンテンツを作るために用いられる脚本は、編集が終了した最終版の同期したメディアを正確に描写した脚本に修正されている場合だけ、この定義を満たす。
音の再生技術。
注記
音声には、合成して作られたもの (音声合成を含む)、実世界の音を収録したもの、又はその両方が含まれる。
現実の出来事から取り込まれ、放送遅延以上の遅延なく受け手に送信される情報。
注記
放送遅延は、短時間の (通常は自動的な) 遅れで、例えば放送局に放送のタイミング[queue→cue]の調整や音声 (又は映像) の検閲のための時間を与えるものだが、意味のある編集ができるほどのものではない。
注記
もし情報が完全にコンピュータで生成されたものならば、それはライブではない。
テキストで (直接又はテキストによる代替によって) 既に提示されている情報以上のものを提示していないメディア。
注記
メディアによるテキストの代替は、テキストを代替する提示の恩恵を受ける人たちのために提供される。テキストの代替メディアになりうるのは、音声しか含まないメディア、映像しか含まない (手話の映像を含む) メディア、又は音声付映像メディアである。
ライブではない情報。
写真又は画像を動かす、又はシーケンス化する技術。
注記
映像は、アニメーション画像もしく実写画像、又はその両方で構成され得る。
テストルール
以下は、この達成基準の特定の側面に関するテストルールである。この特定のルールを使用して WCAG に適合しているかどうかを確認する必要はないが、これらのルールは定義され、承認されたテスト方法である。テストルールの使用については、WCAG 達成基準のテストルールを理解するを参照のこと。