意図
この達成基準の意図は、意味が発音に依存する場合のコンテンツを理解するために全盲の利用者、ロービジョンの利用者、及び読字障害のある利用者を支援することである。多くの場合、単語や文字は異なる意味を持ち、それぞれ独自の発音をする。そのような単語又は文字の意味は、文の前後の文脈から通常は決定される。しかし、より複雑又は曖昧な文章、いくつかの言語においては、発音を知らないと、その単語の意味を容易に決定できない又は全く決定できないことがある。文を音読やスクリーンリーダーによって間違った発音で単語を読むと、視覚的に読むよりも理解するのがさらに難しくなる可能性がある。発音が分からない限り、単語が曖昧又ははっきりしない場合は、発音を判断する手段を提供する必要がある。
たとえば、英語の同形異音異義語の "desert" (見捨てる) と"desert" (砂漠) のように、スペルは同じでも発音と意味が異なる単語がある。適切な発音を文の文脈から決定できる場合は、何も必要とされない。それができない場合は、適切な発音を決定するための何らかの仕組みが必要になる。さらに、一部の言語は、特定の文字が異なる方法で発音されることがある。例えば、日本語では、複数の発音を持つ漢字のような文字がある。スクリーンリーダーは、発音に関する情報がないと、文字を間違って話すことがある。間違って読むと、コンテンツは利用者にとって意味をなさなくなるだろう。
メリット
この達成基準は、次のような利用者にメリットがある:
- 単語を復号化しづらい。
- 前後の文脈を用いて理解するのが困難である。
- 音声で読み上げる支援技術を使用している。
事例
人名の読み方を提供
日本語のウェブコンテンツは、人名の発音を表している、漢字の後に書かれた仮名を提供する。仮名は、単語の直後にかっこで括弧書きで提供される。漢字で書かれた単語を読むことで、目の見える利用者とスクリーンリーダーの両方が、その語句を正しく読み/発音することができる。ただし、スクリーンリーダーは、単語を 2 回読むことになる。誤った発音が可能な漢字を先に読み、正しい読みを提供するために仮名が読み上げられる。
ruby 要素で読み仮名を提供
XHTML 1.1 を用いているウェブコンテンツは、ruby 要素を用いることによって、単語の読み (発音) を示すために文字の上に仮名を提供する。
発音の音声ファイルを提供
文書には、正しい発音を知らないと、その意味を判断できない単語が含まれている。それぞれの単語は、正しい発音を提供する音声ファイルにリンクされている。利用者は、単語の発音の仕方を調べるために、リンクを選択することができる。
用語集で発音の情報を提供
ウェブページに用語集の章が含まれている。用語集の一部の項目には、定義だけでなく発音情報も含まれている。発音を知らないと意味が分からない内容の単語は、用語集の適切な項目にリンクされている。
いくつかの言語で共通の文字だが、発音は言語によって異なる文字の発音に関する情報があるテキスト
日本のある大学のウェブサイトに、中国語及び韓国語の学術的なテキストから引用されたいくつかの短い節が含まれている。引用は、日本語のテキストと同じ文字を用いて書かれている。中国語及び韓国語の文字の正しい発音を示すために、発音の情報が提供されている。
日本語では、「発音」というよりも「読み仮名」を示すために ruby 要素を用いる。
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
- G120: 単語の直後に発音 (読み) を提供する
- G121: 発音 (読み) にリンクする
- そのコンテンツ特有の発音があったり、発音で意味が変わるような単語の発音に関する情報を含む G62: 用語集を提供する
- G163: オフにすることが可能な標準的な発音区別符号を使用する
- H62: ruby 要素を使用する (XHTML 1.1)
重要な用語
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
与えられた規格、ガイドライン、又は仕様のすべての要件を満たすこと。
結果を得るためのプロセス又は手法。
メカニズムは、宣言する適合レベルのすべての達成基準を満たさなければならない。
ある活動を完了させるために必要な利用者の一連の動作。
ショッピングサイト上の一連のウェブページで目的を果たすためには、利用者が選択肢となりうる製品、価格及び内容を閲覧した後、製品を選択して発注し、配送先情報及び支払情報を提供する必要がある。
アカウント登録ページでは、登録フォームにアクセスする前にチューリングテストに成功する必要がある。
ユーザエージェントがどのようにレンダリング、再生、又は実行するかを符号化するメカニズム。
このガイドラインで用いられている「ウェブ技術」及び (単独で用いられている) 「技術」という用語は、どちらもウェブコンテンツ技術を指す。
ウェブコンテンツ技術には、マークアップ言語、データ形式、及びプログラム言語などがあり、これらをコンテンツ制作者が単独で、又は組み合わせて用いることによって、静的なウェブページや同期したメディアによる提示、さらには動的なウェブアプリケーションに至るまでの様々なエンドユーザ体験を作ることができる。
ウェブコンテンツ技術のよくある事例としては、HTML、CSS、SVG、PNG、PDF、Flash、 JavaScript などがある。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム。その他のプログラムには、ウェブコンテンツの取得、レンダリング、やり取りを支援する支援技術を含む。