セミナー「企業WebサイトにおけるJIS X 8341-3:2010対応の実践例」 開催報告

2013年12月10日、セミナー「企業WebサイトにおけるJIS X 8341-3:2010対応の実践例」を開催しました。 本セミナーは、2013年10月4日に「CEATEC JAPAN 2013」で開催された「アクセシビリティセミナー 2013」にて大変ご好評をいただいたセッションの再演・拡大版です。 事前に191名の方々よりお申し込みいただき、当日は128名の方々にご参加いただきました。うち、99名の皆様よりアンケートにご回答いただきました。セミナーへのご参加、またアンケートへのご協力、誠にありがとうございました。

企業のWeb担当者、Web制作者必見! 企業WebサイトにおけるJIS X 8341-3:2010対応の実践例

イントロダクション

講師
WAIC委員長 植木 真

講演中の植木氏

NECのアクセシビリティとJIS X 8341-3:2010への取り組み

講師
WAIC作業部会1委員 安 浩子

講演中の安氏

キヤノンのウェブサイトにおけるアクセシビリティへの取り組み

講師
WAIC作業部会2委員 澤田 望

講演中の澤田氏

質疑応答

質疑応答の様子(左から植木氏、澤田氏、安氏) 質疑応答の内容(一部)の要約です。

  • Qアクセシビリティに取り組むことで、SEOの効果は期待できますか?
    A 澤田氏:Googleのような検索サービスのロボットからのアクセスには、アクセシビリティ対応も有効ですが、Web標準に準拠することも大事だと思います。 植木氏:最近では、JIS対応したら検索順位が上昇したというような、以前ほどの目に見える相乗効果があるとは言えないと思います。しかし、SEOとアクセシビリティには、コンテンツをマシンリーダブルにすることが基本だという共通点があります。良いコンテンツを作ったら、それをマシンリーダブルにすることによって、より多くのユーザーに届けられることになります。
  • Qキヤノンのサイトへの指摘です。ヘッダーが画面上部に固定しているのは、スマートフォンで画面を拡大表示させた際に、ページを読みにくくしており、モバイルファーストとは言えないと思います。
    A 澤田氏:ご指摘ありがとうございます。その点は認識しており、ヘッダーの位置固定を維持するかどうか、検討しているところです。デフォルトの状態での使いやすさ、読みやすさを踏まえてデザインした結果ですが、今後必要に応じて改善していきます。
  • QJIS X 8341-3:2010の箇条7.2.2.1、調整可能な制限時間に関する達成基準については、対応していますか?
    A 澤田氏:現在は対応できておらず、制限時間に対する実装要件は満たせていません。情報発信するページについてのみ、JIS準拠を進めているところです。 安氏:JIS準拠への取り組みはこれからという状況であり、2015年までには対応していきます。
  • Q社内ではどのような調整を、どれぐらいの頻度で実施していますか?
    A 澤田氏:原稿はコンテンツオーナーが作るのですが、形式がバラバラだったり、必要な情報が抜けていたりするので、制作会社に依頼する前に、構成等がルールに則っているかどうかチェックするなどしています。 安氏:Web推進連絡会でやりとりしています。事業ごとのWeb責任者から構成されている会です。CMSの運用に関する連絡やその他の情報共有は日々メールで共有しています。また、大規模リニューアルの場合などは、勉強会を数回開き情報共有しています。
  • Q制作の現場と企画側とで、アクセシビリティへの意識に差があると思いますが、どのような啓蒙活動をしていますか?
    A 澤田氏:制作会社にはアクセシビリティの取り組みを伝えているので、特に問題ないと思っていますが、社内の理解を得るほうが大変です。たとえば、視覚障害者がカメラを使うことは無く、ゆえにカメラのコンテンツをアクセシブルにする必要はないなどと考えている人もいます。そういう人には、誰にでも一時的に不自由な状況は起こり得ること、またアクセスできるかどうかは、自分たちの公開している情報がお客様に届くかどうかである、と伝えています。 安氏:Webの制作部門や会社は、予め基本的なWeb標準の知識を持っていることが多いです。事業部門などコンテンツを作り発信する側では、アクセシビリティをコンプライアンスと同等のものとして捉える傾向があり、きちんと説明をすれば重要だという認識を持って頂くことはできます。ただし、具体的な対応方法を知らない事が多いので、理解を深めてもらえるよう、教育を繰り返し行っています。

アンケート集計結果

アンケート回答数:99 回答者個人を特定するおそれのある情報につきましては、割愛させていただきました。また、文意を変えない範囲で、漢字の使い方や句読点等、適宜編集のうえ掲載させていただきました。

参加者の属性
参加された立場 回答数(%)
企業のWeb担当者 39(39%)
企業内のWeb制作者 29(29%)
制作会社・フリーランス等のWeb制作者 22(22%)
省庁のWeb担当者 0(0%)
自治体のWeb担当者 2(2%)
その他公的機関のWeb担当者 2(2%)
その他 5(5%)
CEATEC JAPANでのセミナーへの参加の有無
参加の有無 回答数(%)
参加した 3(3%)
参加しなかった 86(87%)
無回答 10(10%)

NECのアクセシビリティとJIS X 8341-3:2010への取り組み

理解度

5段階評価で、5が「理解できた」、1は「難しかった」です。

理解度 5 4 3 2 1 無回答
回答数(%) 31(31%) 36(36%) 24(24%) 5(5%) 0(0%) 3(3%)
役立ち度

5段階評価で、5が「役に立った」、1は「役に立たなかった」です。

役立ち度 5 4 3 2 1 無回答
回答数(%) 17(17%) 31(31%) 42(42%) 7(7%) 0(0%) 2(2%)
お寄せいただいたコメント(一部)
  • 取り組み方についての流れが参考になりました。
  • 興味深く拝聴した。社内体制は参考になります。
  • 多様な人へのアクセスという点で改めて気づきが得られました。
  • Webサイト方針なども開示していただき、大変参考になりました。ありがとうございました。
  • 取り組みのレベルが非常に高く驚きました。
  • Eラーニングで社内教育を徹底されているのは、うちも参考にさせていただきたいと思った。
  • 全盲の方たち(多様なユーザ)に対して、ウェブサイトのあるべき姿がわかり、制作時の注意すべき所を理解できました。
  • テンプレートの仕様が気になりました。企業としての取り組みレベルが高いと感じました。
  • 現在の共通テンプレートで、具体的にどこがアクセシビリティ的に目玉なのか、詳しく説明がほしかった。alt属性の記述の良い例、悪い例など。
  • 組織体制すごいですね……。
  • まず方針策定が大切だと分かった。
  • 社内教育や体制整備など、周知・啓蒙・推進といった活動の必要性を改めて強く感じました。CMSのアクセシビリティ対応テンプレートの整備についても、具体的で参考になりました。
  • 全盲の方の意見があり、どのような課題があり、どうしていくのが良いのか参考になりました。もう少し制作時にどう意見が反映されるのか、JIS基準で困ることがないのか、という点を聞いてみたかったです。
  • 全盲の方のWeb活用方法がわかり、具体的な意見を聞くことができて、より重要性を実感した。
  • 視覚障がい者の方の実際の声は参考になった。
  • アクセシビリティ担当に障碍者の方がいると、説得力があると思いました。
  • 「突出したニーズを持ったユーザーと生活を共にする」方法は、とても説得力がありました。
  • 数万人の組織でのアクセシビリティの普及に取り組むのは、他にはない難しさがあったと思います。これからますます多様化・複雑化するだけでなく、スピードも増していきます。こうしたなか、いかに大企業という「大船」を動かしていくのか気になります。
  • NECグループの取り組み方、考え方が明確にされていることがわかって、役に立ちました。
  • 企業ビジョンの必要性ということを改めて感じた。“アクセシビリティの必要性を感じる場面”の内容が具体的でわかりやすかったので、もっと多くの事例をきいて対応に活かしたい。
  • 社内教育の徹底ぶりに感心した。
  • Eラーニングや、実際に必要とされる方がいらっしゃる現場など、取り組み方法を知ることができ大変参考になりました。
  • 社内への情報発信活動は重要だと思うので、ぜひ参考にしたい。
  • 組織の説明が非常に役にたちました。

キヤノンのウェブサイトにおけるアクセシビリティへの取り組み

理解度

5段階評価で、5が「理解できた」、1は「難しかった」です。

理解度 5 4 3 2 1 無回答
回答数(%) 42(42%) 42(42%) 7(7%) 2(2%) 0(0%) 6(6%)
役立ち度

5段階評価で、5が「役に立った」、1は「役に立たなかった」です。

役立ち度 5 4 3 2 1 無回答
回答数(%) 33(33%) 38(18%) 19(19%) 3(3%) 0(0%) 6(6%)
お寄せいただいたコメント(一部)
  • 具体的で大変参考になりました。
  • 取り組み内容が具体的で想起しやすかったです。
  • 非常に分かりやすかった。特にWeb作成者に必ずある苦労話は大変参考になりました。
  • モバイル対応の考え方、運用面の見直し方針など、見直し方が参考になりました。またCSS3や動画の代替コンテンツなど具体例がとてもわかりやすかったです。デザインをあきらめない…頑張りたいです。
  • 粘り強い活動と信念が伝わりました。苦労・体制の部分は特に参考になりました。
  • 制作側の意見、見解が拝聴でき、大変良かったです。
  • 細かい運用の話が聞けてよかったです。
  • 具体的なデザインを示しながらの説明がわかりやすく良かった。
  • 具体例が各所にちりばめられていて、大変参考になりました。特に、きれい事では片づかないお話(苦労点等)がありがたかったです。
  • Wordのスタイル機能をマネしたい。いいですね。
  • ランキングの功罪の話は、なるほど、と思いました。また、弊社でも「このサイトに高齢者・障害者はあまり見にこないから…」という考えでアクセシビリティへの取組みへの理解が得られない点があるので、そのあたりの対応をお聞きできて良かったです。
  • 苦労された点はまさしく今悩んでいることが多く今後のためになりました。
  • 取り組み前後の紹介、運用の課題と現状の紹介で、具体的な理解ができました。
  • 担当者の苦労がわかりました。
  • 大企業ならいろいろ対応しやすいと思いますが、小さめのところだと、まず対応を提案しても通りません。今のこちらの立場としては、大企業の取り組みから、日本全体の企業にWebアクセシビリティが浸透するのを待っているという感じです。
  • テンプレートや原稿作成の話など参考になりました。
  • 身近な問題としてとらえられる内容が多くて面白かった。アクセシビリティを優先するとデザインがダサくなりがちなのは切実な問題として常に感じています。制作会社との連携も、その理解度によりとても難しいです。
  • 非常に共感できる内容でした。
  • 実際のソースレベルのお話を聞くことができ、現場に落とし込みやすい内容をありがとうございました。
  • 運用面の見直し、テンプレートは参考にしたい。
  • 制作フローの話が良かったです。

JIS X 8341-3:2010対応やアクセシビリティ確保においてお困りのこと(一部)

  • サイトの目的(活用)とアクセシビリティのバランス。サイトの目的・活用、その前提の商品・サービスは、ペルソナやターゲティングなど利用者を特定。アクセシビリティは広く多くの人にという考え方に違いがあり、どうすべきか悩む。ウェブの作り方だけに絞ってみても、デザインだけでなくアクセシビリティを優先して、ユーザビリティが下がったら本末転倒だと思うが、どう考える・どう対応すべきか?
  • 定性的な達成基準に対する判断。
  • 予算が限られたWebサイト制作において、対応するための時間やお金がない。準拠したテンプレートの開発ができれば良いが、そのための予算もどのように確保するか?運用面においても教育予算がないと、更新によってルールが壊されるケースができてしまう点が悩みどころです。
  • 社内教育。必要性を肌で感じられる人はなかなかいない。社内に選任者もいない。
  • 各事業部のWeb担当者へアクセシビリティに関する理解を深めてもらうための施策。
  • 運用時、チェック等に工数がかかる(テンプレート化してないページ等)。新しいデバイス、ブラウザもだが、旧デバイス、ブラウザの扱いについてどこまで対応すべきか。
  • アクセシビリティ維持のための工数が半端ないです。
  • アクセシビリティ確保の正解(ゴール)がみえない。100点の見本みたいなものがあると参考になる。
  • 試験が日常的にはしんどい。
  • アクセシビリティに対する意識を持ってもらう事。
  • 音声ブラウザなど、特殊なブラウザを実際に使う機会がない。使い方がわからないため、テストができない。
  • ガイドラインの制作が他社の参考にすることができず、必要な項目など含め本来どのようなものなのかアウトプットがイメージできない。スマホのアプリに対するアクセシビリティ確保。
  • 現行のコーポレートサイトに1万を超えるコンテンツがあり、かつ日々新しくコンテンツが追加されているため、古いコンテンツに対してどうしていくべきか悩んでいる。
  • 基準そのものに詳しくないのですが、基準に則ったサイト構築のアドバイスが得意先にてきていないこと。JIS対応の効果を説明できないこと。
  • ビジュアル面でインパクトのあるデザインが作りにくく全て同じ様なサイトになってしまい差別化がはかれない。
  • JISは難解なので、もっと分かりやすく具体例を挙げたガイドラインがあるとよいと思う。
  • スマートデバイス対応ばかりに注力していて、アクセシビリティをおろそかにしていないか不安だ。サイトリニューアル開発担当にその意識があるか心配。
  • 数回JIS試験対応も行なってきましたが、いまだに判断に迷う点が多いのも実情です。ネット上にも詳しい解説が少ないので、わかりやすいサイト例や説明が欲しい。
  • 社内での関係者の理解、周知。
  • 障がい者のものと思われてしまうのが…。
  • JIS規格への理解と意識の統一。社内でのアクセシビリティへの意識統一と啓蒙方法。
  • 社内の案件が、担当者によって対応状況がバラバラであること。品質に対しての意識が低いこと。

当委員会へのご要望等(一部)

  • 多くの制作会社、制作者はこの規格を知らないと思うのでもっとセミナー、講演を行い啓蒙してほしい。
  • とても分かりやすいセミナーだと思います。どんどん続けてほしい。W3Cの新しい情報について解説してくれるセミナー等。
  • より身近な例を用いた実装方法の紹介、FAQの充実。
  • チェックツールやテンプレート例などの情報提供があると助かります。
  • わかりやすい解説書が必要かと。
  • 制作者に対して具体的な実装・テスト方法のワークショップを開いて欲しいです。特にマークアップ、デザイン上で。
  • 実装方法から事例など、理解に苦しむ内容があり、制作メンバーへの徹底に苦慮しております。もう少しやさしい言葉、説明があると嬉しいです。
  • アクセシビリティのチェックツールをいくつか確認したが、どれも解説が難解。また規格に対する解釈にズレがある。チェックツール自体は各社の製品ですが、業界を底上げしてもらえると助かります。
  • 制作者向けに特化したセミナーを開催してもらえると嬉しいです。
  • 各企業のアクセシビリティに関するノウハウをまとめたコンテンツやサービスができたら、多くの企業でできることから活用するのではないかと思いました。
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