公的機関Web担当者のためのアクセシビリティセミナー 開催報告(名古屋会場)
セッション3 質疑応答コーナー「JIS X 8341-3:2010対応やWebアクセシビリティに関するQ&A」
質疑応答の内容(一部)の要約です。
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QPDFはHTMLと同じように対応できますか?A元のファイルの作り方に依ります。AdobeのAcrobatを使い、たとえば見出しを見出しとして(文字の大小のような見た目ではなく)指定することや、画像に代替テキストを指定することもできるので、対応は可能です。ただ、日本の主要な読み上げソフト(スクリーンリーダーなど)で読上げができるかどうかが重要であり、現在委員会でも調査を検討中です。またレイアウトが複雑なものや、画像としてスキャンしただけのPDFファイルは、相当手を加える必要が出てくるため、対応は難しくなるでしょう。
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Q複数のページを含む単一のPDFファイルは、どう数えれば良いですか?A「ウェブページ」の定義は、URLを指定することでアクセスできるものです。複数のページを有するPDFファイルであっても、ウェブページとしては一つになります。HTML形式のウェブページと、そこからリンクされているPDFファイルとは、それぞれ異なるURLをもちますので、それぞれ別個のウェブページとして考えます。
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QOffice系の文書ファイルは、どう考えれば良いですか?AWordファイルやExcelファイル、あるいはプレーンテキスト(拡張子がそれぞれ.doc、.xls、.txt)も考え方は同様で、それらがウェブページとして存在するのであれば、アクセシブルにする必要はあります。なお、プレーンテキストについてはW3CのTechniques for WCAG 2.0にテクニック(Plain Text Techniques | Techniques for WCAG 2.0)が掲載されていますので、参考にご覧ください。
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Qテキスト自体の簡単さ(理解の容易さ)まで考える必要はありますか?A等級AAAでは、中等教育レベルを超えるものに関する達成基準があります。英語では文章の容易さ、読みやすさなどの基準を図る方法が確立されていますが、日本語についてはそうした手法は確立されておらず、判定できません。そのため、現状では対応する達成基準に含めない方が良いと考えます。
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Qユーザが参加してWebサイトを検証するという考え方はありますか?現状、試験を行う側が、試験にとって都合の良いページのみを選んで試験をする懸念があります。AJIS X 8341-3が扱うのはアクセシビリティであり、達成基準を満たしているかどうか、すなわち使えるかどうかを意味するため、ユーザーテストは必須ではありません。元になっているW3CのWCAG 2.0の策定時においては、ユーザー観点からも検討をしており、全く考慮していないわけではありません。ただし、ユーザーテストが実施できるので あれば、なお良いとは考えられます。
試験にとって都合の良いページのみが選ばれるのでは、との懸念については、作業部会内でも議論がありました。仮にそのような選定がなされたとしても、試験結果の公開によって第三者にそれと伝わる可能性はあるわけですから、最終的には試験を行う側が不利益を被ると考えています。
なお、試験結果について確認する際は、Webページ単位かWebページ一式単位かという点に注意する必要があります。Webページ単位で50ページを試験したのか、Webページ一式単位で50ページを試験したかでは、意味合いが全く異なります。 -
Qマルチデバイス対応についてはどう考えれば良いですか?Aタブレット、スマートフォンについては、WCAG2.0の策定より後になって普及した経緯があるため、そうした新興のデバイスにW3C/WAIとしてどう対応するか(WCAGをバージョンアップさせるのか、テクニック文書を充実させるのか、等)は目下検討中の状況と認識しています。ただし、WCAG2.0は多くの部分で参考に資する内容であり、まずはWCAG 2.0をベースに制作していただいて、必要に応じAppleやGoogleの提供している個別のデザインガイドライン類を参照すると良いでしょう。
アンケート集計結果
アンケート回答数:44
回答者個人を特定するおそれのある情報につきましては、割愛させていただきました。また、文意を変えない範囲で、漢字の使い方や句読点等、適宜編集のうえ掲載させていただきました。
セッション1 講演「公的機関Webサイトに求められるJIS X 8341-3:2010対応」について
セッション1の理解度
5段階評価で、5が「理解できた」、1は「難しかった」です。
理解度 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|
回答数(%) | 14(32%) | 17(39%) | 3(7%) | 8(18%) | 1(2%) | 1(2%) |
セッション1の役立ち度
5段階評価で、5が「役に立った」、1は「役に立たなかった」です。
役立ち度 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|
回答数(%) | 16(36%) | 19(43%) | 8(18%) | 1(2%) | 0(0%) | 0(0%) |
セッション1へのコメント
- JIS規格や法律等を含め、公的機関のWebサイトで実施しなければならないことや、理由など簡潔にまとめられて、分かりやすく、役立つ情報であった。
- 予備知識が無いため、具体的にイメージがしづらかったです。
- (少しずつでもよいので)重要なページから取り組もう、という現実的な目標があると、取りくみやすくて良いと思いました。
- JIS規格への対応の必要性の根拠について知ることができました。方針の策定について難しく考えていたのですが、そこまで難しく考えなくてよいということを知ることができました。
- 「さまざまなユーザー」で一時的な“障害”は想定していなかったため気付かされました。
- 担当者としてどのようなJIS対応が必要か分かりやすい説明でした。
- 公共機関の状況が分かって良かった。状況に応じて、段階的に進めていいということが分かって良かった。
- 初めてWeb担当となり、こういった知識がないため。これを機に勉強したいと感じました。
- JISの位置づけや関連する法律、国の指針、取り組みの現状が分かって良かった。不勉強でその辺りのことを知らなかったので。公的機関用の内容であったことも有用であった。
- 今年度からWeb担当になったのですが、アクセシビリティについての不勉強を感じました。JIS X 8341-3:2010をまず目を通してみることから始めたいと感じました。
- 少しずつ始めれば良いことが分かり、安心しました。
- JIS規格の詳細を十分知っていないので、理解できないところもあったが、今後Webサイトの更新があるので、JISに準拠した形で仕様作成したい。
- 資料のありかや、全体の流れはわかったが、具体的に何をすればいいかというのが分からない。Web作成者向けに大量な資料を要約した様なセミナーも開催して欲しい。
- 内容は非常に興味があったが、口調も早く、理解する前に次の話題になっていて理解しきれなかったように思う。
- WAICは「ウェイク」と言います。WCAGは「ダブキャグ」と言うのかと思っていましたが本当は何と言うのでしょうか?
セッション2 講演「JIS X 8341-3:2010準拠のための試験方法」について
セッション2の理解度
5段階評価で、5が「理解できた」、1は「難しかった」です。
理解度 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|
回答数(%) | 9(20%) | 16(36%) | 7(16%) | 9(20%) | 1(2%) | 2(5%) |
セッション2の役立ち度
5段階評価で、5が「役に立った」、1は「役に立たなかった」です。
役立ち度 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|
回答数(%) | 10(23%) | 18(41%) | 13(30%) | 2(5%) | 0(0%) | 1(2%) |
セッション2へのコメント
- 具体例などもあり、分かりやすく、今後実施していく上で、役立つ。
- ダメな例を例示してくれると分かりやすいと思う。全盲、弱視、色盲、肢体不自由者、高齢者に実際に触ってもらって、当事者から評価を得ないと、自己満足に陥ると思う。チェックリストを例示して欲しかった。
- 試験結果がすべて、ではなく、情報公開しようと努力すること、少しでも先に進めよう、とすることが大事、というのが良かったと思います。
- 自分の考えていたアクセシビリティ方針の策定と試験の方法が間違っていることを強く実感しました。ケース毎の試験結果の公表が研修の中に含まれており、分かりやすかったです。
- 試験のためにどのようなことを進めていけばよいか分かりやすい説明でした。
- 部署間の役割分担(どこも引き受けなさそう)。日々アップデートされるコンテンツの管理。
- 一部しか対応していなくても公開するという点は勉強になった。公開の例が分かりやすかった。
- 試験について詳しくわかりました。今後、実施していきたいと思います。
- 概要は分かりましたが、具体的な進め方がイメージしにくかったです。
- 表示例は具体的で分かりやすかった。試験の前の検証についてもふれて欲しかった。
- 自治体サイトを見ながら、もっと具体的な説明が欲しかった。
- 試験結果の表示例は役に立ちます。
JIS X 8341-3:2010対応においてお困りのこと
- 対応するための予算面の確保(リニューアルが5年後であること)。試験をする事業者の選定(業者の資格などあるか)。既にJIS規格に準拠し、情報公開など行っている自治体(上手に運用している自治体)情報を知りたい。
- 試験をするための予算どりが難しい。
- 受注側、発注側ともに、まだまだアクセシビリティの重要性が知られていないように思います。
- 当市では本年リニューアルを控えておりますが、リニューアル費用の中にアクセシビリティ対応を明確に含まれておりません。先にアクセシビリティ方針を策定して、リニューアル後のサイトを試験すべきなのか、リニューアル後に先に試験を行って、弱い点を確認した後にそれを踏まえて方針を定めるべきか悩んでおります。また、試験について委託契約を結んだ場合、妥当な金額はいくら程度でしょうか?
- CMSでウェブページを作成しているが、各作成担当者のスキルがまちまちなので、各ページの出来がばらばら。研修をするのにも人がいないので、普段の仕事におわれて人が集まらない。ページ作成の仕事が二の次になりがち。
- 中々幅広い範囲の仕事をしていて、取り組めない。担当者以外の者への周知が進まない。(当事者意識の欠如等)
- 動画の字幕対応。
- HPのリニューアルを行う。これまでに作成したページを移行しなくてはいけないがどこまでAAに準拠させることができるか…。職員への周知なども難しいと思われる。
- 既存のページの改修に手間がかかること。(特にPDF)
- 現在、CMSにより、ホームページ管理及び情報コンテンツ作成しているが、情報提供者全員がJIS準拠に意識を統一するのが難しい。
- HP更新を考えていて、業者さんから見積もりを出してもらったら「すべてアクセシビリティ等級AAに対応すると高額になる。」と言われたこと。
- 関連資料の文書が難しい。「読解レベル」に準拠していないのでは?
- 全く対応できていない。
- そもそもピンときていない。
- 具体的な対応方法が示されていない→現時点での技術における対応方法を知りたい。
ウェブアクセシビリティ基盤委員会へのご要望等
- 本日の講演内容や質疑について、基盤委員会様のホームページなどで公表されますでしょうか できましたら、資料や各会場での質疑などを公開していただきたいと思います。
- ありがとうございました。
- 全体通して、Webアクセシビリティは障害者高齢者の当事者の視点ではなく、アリバイ作りのような仕事になりそう。心配。
- とても分かりやすい説明でした。参加して良かったです。今後、ここで得た知識などをウェブページ作成にフィードバックしていきたいと思います。
- 本日はありがとうございました。
- 出張アドバイスして欲しい。
- 今後も様々なセミナーを開催して欲しいです。
- とても分かりやすかったです。また開催して下さい。
- 実際のどこかの自治体のHPを例にして、視覚的な説明があると良かった。
- JIS対応を一覧化した表を提供して欲しい。
- もう少し初心者向けのセミナーをお願いしたい。
会場の模様
セッション1の講演の模様
セッション2の講演の模様
セッション3の質疑応答の模様