JIS X 8341-3とは何なのか? ウェブコンテンツのアクセシビリティのために

動画の概要

「JIS X 8341-3:2016 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ」は、ウェブコンテンツのアクセシビリティを確保するための要件をまとめた規格です。

この動画では、ウェブコンテンツに関する基本的な概念を整理するとともに、アクセシビリティを確保するための原則、ガイドライン、達成基準について解説しています。

また、適合レベルの考え方や、JIS X 8341-3が国際規格であるISO/IEC 40500およびWCAG 2と技術的に一致していることについても説明します。

さらに、ISOの改訂に伴って行われるJIS改正のプロセスについても解説しています。

動画

書き起こしテキスト

00:01

ウェブアクセシビリティ基盤委員会の委員長を務めております太田と申します。今から「JIS X 8341-3とは何なのか―ウェブコンテンツのアクセシビリティのために」と題してお話しします。日本産業規格であるJIS X 8341-3:2016について、この規格の対象と考え方について説明をします。

次のスライドをお願いします。

00:36

「ウェブコンテンツのアクセシビリティについての規格であること」からご説明いたします。

次のスライドをお願いいたします。

00:49

JIS X 8341-3の正式名称は「高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器、ソフトウエア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ」です。規格の対象は、正式名称にある通りウェブコンテンツです。高齢や障害などの理由があってもウェブコンテンツを理解し利用できるように、アクセシビリティを確保した設計を求める規格です。

次のスライドをお願いします。

01:23

では、規格の対象となっているウェブコンテンツとは何でしょうか。次のスライドをお願いします。

01:32

ウェブコンテンツの理解のために、まずウェブのついていない「コンテンツ」について確認しましょう。

コンテンツとは、情報や表現など伝えたい中身を指します。新聞の場合だと記事や写真、テレビの場合は番組そのもの、本なら文章や図版がコンテンツに当たります。つまり、コンテンツとは誰かに伝えるために作られた中身そのものを指します。

次のスライドをお願いします。

02:06

ウェブコンテンツという場合も考え方は新聞やテレビのコンテンツと同じです。文章、写真、動画、音声、図表、アイコン、地図などはコンテンツです。しかし、ウェブコンテンツという場合、情報以外のもの、すなわちボタン、メニュー、リンク、そしてフォームの入力欄など、操作する部分もコンテンツに含めます。利用者にとっては、情報も操作もすべてがコンテンツであるという考え方になっています。なお、JIS X 8341-3には用語としての定義がありますが、今回は平易な表現を用いています。

次のスライドをお願いします。

02:58

では、当委員会のウェブサイトを例に理解を深めていきましょう。画面には一般的なウェブページ閲覧用のアプリケーションであるブラウザが映っています。ブラウザにはURL入力欄やウィンドウ操作ボタン、スクロールバーがありますが、これらはブラウザの要素であり、規格ではウェブコンテンツではないものとされています。

次のスライドをお願いします。

03:32

では、どういった部分がウェブコンテンツなのでしょうか。引き続き同じ画面を用いて説明します。画面には当委員会のウェブページが表示されています。ウェブページではよくある形式で、画面の上部4分の1ほどにウェブサイトの名称や、サイト内で共通したメニューが表示されています。メニューより下にはピックアップニュースとあり、委員長就任のご挨拶など、当委員会からのお知らせが表示されています。

このピックアップニュースはいわゆる本文であり、当然コンテンツですが、サイト名称、サイト共通のメニュー、サイト内検索の入力欄やボタンがある部分も、JIS X 8341-3の規格が対象とするウェブコンテンツに当たります。

また、ブラウザのウィンドウに表示されているタイトルの内容も、ウェブコンテンツの一部です。

次のスライドをお願いします。

04:33

ブラウザはコンテンツではないため、この規格の対象ではないと説明しました。このほかにも物理的な対象は規格の対象になりません。例えばPC本体、スマートフォンの物理ボタン、ATMの物理テンキー、キオスク端末のボタン配置や高さなどです。これらはJIS X 8341シリーズの別の規格(例えばJIS X 8341-4電気通信機器など)でカバーされることがあります。

次のスライドをお願いします。

05:12

ここまで説明したように、この規格はウェブコンテンツを対象としていますが、アクセシビリティには他の要素もあります。コンテンツのアクセシビリティが確保されているだけでは、十分ではありません。

まず、情報にアクセスするための端末が、アクセシブルである必要があります。ボタンやスイッチが押せるかどうかなど、物理的なアクセシビリティの確保です。

次に、オペレーションシステムのような基本システムやブラウザなどのアプリケーションがアクセシブルである必要があります。

その上で、ボタンやリンクなどの操作を含めてのウェブコンテンツがアクセシブルであることで、初めてアクセシブルであると言えます。

これらのすべてが必要になりますが、JIS X 8341-3は、この「ウェブコンテンツ」の部分に焦点を当てています。

次のスライドをお願いします。

06:08

次に規格の内容をご説明いたします。次のスライドをお願いします。

06:15

JIS X 8341-3には、アクセシブルなウェブコンテンツを作成するルールが書かれています。

多様な利用者を想定するために、ルールを4つの原則に分類しています。知覚可能、操作可能、理解可能、堅ろうの4つです。

1 知覚可能:コンテンツを見たり、聞いたり、感じたりできること。

2 操作可能:コンテンツにおいて選択や決定など操作ができること。

3 理解可能:コンテンツが理解できること。そのために、利用者を混乱させないこと、無理なく操作方法を理解できること。

4 堅ろう:PCやスマートフォンといった様々な異なる端末や、今後将来的に出てくるかもしれない新しいブラウザなどでも、同じウェブコンテンツを問題なく描画解釈できること。

次のスライドをお願いします。

07:19

4つの原則をご紹介しましたが、その具体例を高めたものとして12のガイドラインを細分化しています。

各ガイドラインには番号が付与されています。その番号の1つ目、1桁目は、4つの原則の番号に対応します。

例えば、1.1や1.2であれば、1 知覚可能に分類されるガイドラインということになります。

2.1、2.2の場合は、2 操作可能に分類されるガイドラインです。

画面には12のガイドラインが表示されています。規格が改正されると「2.5 入力モダリティ」が加わり、13のガイドラインになる予定です。

続くスライドで、原則ごとにガイドラインの目的を簡単に説明しながら紹介していきます。

次のスライドをお願いいたします。

08:14

最初の原則は、1 知覚可能です。この原則には4つのガイドラインがあります。

1.1 代替テキスト:画像の代わりになる説明文を提供すること。

1.2 時間依存メディア:動画や音声をみんなが理解できるようにすること。

1.3 適応可能:利用者がコンテンツを様々な方法で利用できるようにすること。

1.4 判別可能:視覚聴覚における明瞭性を確保すること。

次のスライドをお願いします。

08:57

次の原則は、2 操作可能です。この原則にも4つのガイドラインがあります。

2.1 キーボード操作可能:全ての操作がキーボードで完了できること。

2.2 十分な時間:理解や利用に時間がかかる人がいるということを想定すること。

2.3 発作の防止:てんかんなどの発作を防止するために、画面の一部または全部を点滅させないこと。

2.4 ナビゲーション可能:ウェブ上の現在位置を把握しやすくし、目的地にたどり着けるようにすること。

次のスライドをお願いします。

09:43

3番目、理解可能です。この原則に分類されるガイドラインは3つあります。

3.1 読みやすさ:文字の情報を読みやすくすること。

3.2 予測可能:表示や挙動を予測可能にすること。

3.3 入力支援:利用者の間違いを防ぎ、修正を支援すること。

次のスライドをお願いします。

10:14

最後の原則が、4 堅ろう性です。ここに分類されるガイドラインは一つだけです。

4.1 互換性:将来登場するであろう技術も含め、さまざまな技術に対応できるようにしておくこと。

次のスライドをお願いします。

10:35

ここまで4つの分類と12のガイドラインについて見てきました。これらを実際の要求事項に落とし込んだものが「達成基準」です。2016年版では61個あり、改正では26個追加される予定です。数が多いのでここでは個別の達成基準の紹介は省略させていただきます。

達成基準には3つの適合レベルが設定されています。

・レベルA:この規格における最低限のレベル。不適合があると規格に適合できません。

・レベルAA:国内外の公的機関などで一般的に満たすことが求められる適合レベルです。

・レベルAAA:ウェブページの目的や対象に応じて採用し、アクセシビリティをさらに高めるためのものです。すべてのAAAの項目の達成を目標とすることは、推奨されていません。

次のスライドをお願いします。

11:48

達成基準のレベルは、スライドに書いてあるような指標に基づいて定められています。

必要不可欠であるかどうか。必要不可欠な基準が満たせていないと、支援技術を用いてもアクセスすることができなくなります。つまり、支援技術でアクセシブルにできるかどうかが、問われるということです。

次に、さまざまなウェブサイト及びコンテンツがこれを満たすことができるかどうかです。

それから、コンテンツ制作者が無理なく必要なスキルを習得できるかどうか。

見た目や機能に過度な制限を与えないかどうか。

基準が満たされない場合に、代替手段が存在したり、利用者が次善策をとることができるかどうか。

こういったことを勘案して、達成基準のレベルが定められています。

次のスライドをお願いします。

12:41

ここまで規格に書かれている、記載事項について説明してきました。ここからは、規格表に「書かれていないこと」について説明します。

JIS X 8341-3の規格票には、アクセシビリティを確保するためのルールが書かれています。しかし、その具体的な方法までは書かれていません。

ウェブ技術の進歩は速く、また大変多様なので、限られた紙面にそれぞれの技術ごとのアクセシビリティの確保の方法を記載することは、現実的ではなかったためです。

このため、JIS X 8341-3の規格票は、とても抽象的な内容が多い文章になっています。しかし、抽象的なままでは規格を利用してもらえなくなるため、「解説書」と「テクニック集」という副読書のような文書が提供されています。

「解説書」は、JISの4つの原則、ガイドライン、達成基準について、なぜこういったガイドラインや達成基準が存在するのか、どういった障害に対して意味があるのかといったことを説明しています。

「テクニック集」という文書は、以前は「達成方法集」と呼ばれていたものです。

ウェブを作るときに使われるHTML、CSS、JavaScript、PDFなどの具体的な技術について、どう作ればアクセシブルになるかという具体例を集めたものです。特定の技術に依存しない考え方や進め方を示したテクニックも含まれています。

いずれの文書も、その翻訳を当委員会のウェブサイト waic.jp から無料で閲覧していただくことができます。

次のスライドをお願いします。

14:32

最後に、規格の作られ方について説明いたします。

次のスライドをお願いします。

14:41

ウェブアクセシビリティのガイドラインに関する文書は3つあります。

1つ目がWCAG、ウェブコンテントアクセシビリティガイドラインです。これは事実上の標準となっているもので、ウェブ技術の標準化推進団体W3Cが作成したガイドラインです。最新版はWCAG 2.2となっています。

2つ目がISO/IEC 40500です。これは先程のWCAGを国際規格、ISO規格にしたものです。

そして3つ目が今回お話ししているJIS X 8341-3です。これは日本産業規格という日本国内の規格ですが、現在の内容は、先程のISO規格と同じものになっています。ただし、最新である2016年版のJISは、2012年版のISOを元にしています。

つまり、この3つの文書は、内容が同じものになっています。

JIS X 8341-3:2016は、国際規格ISO/IEC 40500:2012との一致規格であるという言い方をします。

次のスライドをお願いします。

16:13

一致規格とすることで、国内外で異なる基準を理解、対応する手間が減じ、国際的な取引や技術共有での互換性、信頼性が高まります。国際規格と一致しない日本独自の規格を定めてしまうと、既に基準を満たしている海外のウエブサービスが、日本では追加の対応を求められるといった可能性があります。

海外の事業者が参入しにくくなるため。これを非関税障壁であると言われます。WTO世界貿易機関などでも、既に対応する国際規格がある場合、または国際規格の発効が間近な場合には、その国際規格を基礎として原案を作成することが求められています。

JIS X 8341-3の場合も、日本特有のアクセシビリティ上の問題がない限りは、技術的に同等の内容を維持、つまり一致規格を目指すということが基本になります。

次のスライドをお願いします。

17:21

次に、JISの見直しや改正の流れと、規格内容へのご意見についてお話ししていきます。まず、JISは原則として5年に1回、見直しが行われることになっています。

見直しの際には、改正原案作成団体と呼ばれる団体が中心となって改正案を作成します。

今回のJISは、もとになっているISO規格の改訂を受けて改正が予定されています。今回の場合、2025年9月にISOが改訂されましたので、JISはスムーズにいけば2027年、遅くとも2028年には改正される予定です。大きな問題がなければ、一致規格となる見込みです。

次のスライドをお願いします。

18:11

改正の際にはパブリックコメントも受け付けられます。ただし、先ほど説明したように、JISの内容は、ISO/IECやWCAGとの一致が原則となっています。

抜本的な変更に対するご意見は、JIS側では対応が難しいことがあります。今後のために元の規格を作っているW3Cへ直接コメントすることも可能となっています。

次のスライドをお願いします。

18:54

最後に、本日の内容のまとめとなります。

次のスライドをお願いいたします。

19:05

ウェブコンテンツのアクセシビリティを対象としています。ブラウザや端末のアクセシビリティは非常に重要ではあるものの、JIS X 8341-3の対象には含まれていません。

あくまでウェブコンテンツ、つまり、ページ内の情報の内容だけでなく、リンクやボタン、フォームなどの操作内容も含めた部分になりますが、この部分が対象になります。

このJISでは4つの原則、12のガイドライン。そして61の達成基準が定められています。

達成基準にはAからAAAまで、3つの適合レベルがあります。

JIS X 8341-3を読み解くための副読書として、「解説書」そして「テクニック集」がWAICのサイト(waic.jp)で公開されていますので、ぜひ参考にしてください。

JIS X 8341-3:2016は、ISO/IEC 40500:2012との一致規格になっています。また、WCAG2.0と技術的に同等です。つまり、これら3つの内容は基本的に同じです。

規格が改正される際には、パブリックコメントの受付があります。抜本的な内容については、W3Cに直接コメントをすることもできます。

次のスライドをお願いします。

20:44

以上で、「JIS X 8341-3とは何なのか、ウェブコンテンツのアクセシビリティのために」を終わりとします。

この動画についてのお問い合わせは、ウェブアクセシビリティ基盤委員会のウェブサイト(https://waic.jp/contact/)までお願いいたします。ありがとうございました。

資料

このページのトップへ