イベントで得た「気づき」を、確かな「実装」へと繋ぐために
5月の風物詩、GAAD(世界アクセシビリティ啓発デー)を迎えて
今年も、GAAD(Global Accessibility Awareness Day:世界アクセシビリティ啓発デー)の季節がやってきました。GAADは、2011年にロサンゼルスのウェブ開発者Joe Devonのブログ記事をきっかけに始まったムーブメントです。アクセシビリティの知識が開発現場に届いていないことへの問題意識から生まれたこの呼びかけは、カナダのアクセシビリティ専門家Jennison Asuncionとの協力を経て、2012年に第1回が開催されました。今や世界中のIT企業やコミュニティが参加する大きなイベントへと成長しています。
「Awareness(啓発)」という言葉の通り、「こんな不便があったのか」「こうすれば解決できるのか」という個人の気づきが、アクセシビリティ向上の出発点になります。当委員会も、この日に生まれる多くの気づきや熱量を、嬉しく感じています。
「気づき」を、一過性で終わらせないために
GAADの素晴らしい点は、エンジニアやデザイナーだけでなく、広報、経営者、そして一般のユーザーまで、多様な人々が「アクセシビリティ」という言葉をキーワードに繋がることです。「こんな不便があったのか」「こうすれば解決できるのか」という発見は、より良いウェブを目指すための最大の原動力になります。
しかし、同時に私たちが忘れてはならないのは、その「気づき」を一過性のイベントで終わらせず、日々の業務、そして自社の様々な品質として定着させていくプロセスです。イベントで得た感動や熱量を、具体的にどう「形」に落とし込み、どう「継続」させていくか。そこには、共通の「ものさし」と、客観的な「手法」が必要不可欠です。
GAADをきっかけにウェブのアクセシビリティに関心を持ったら、ぜひ当委員会の技術的リソースも覗いてみてください。「なんとなく」を「ちゃんと」に変えるヒントが見つかるかもしれません。
実践:WAICのリソースを活用した「ウェブアクセシビリティの健康診断」
「何から手を付ければいいかわからない」という方は、ぜひこのGAADを、自社サイトの「健康診断」の機会にしてみてください。感覚的な評価ではなく、JIS X 8341-3に基づいた客観的な評価を行うための道標として、WAICでは以下のリソースを公開しています。
1. JIS X 8341-3:2016 解説と達成基準
まずは、自分たちが目指すべき「基準」を知ることから始まります。WAICのサイトで公開している解説書は、難解になりがちな規格の意図を紐解くための重要な資料です。例えば、GAADをきっかけに参加したイベントで「キーボード操作」の重要性に触れる機会があれば、対応する達成基準(2.1.1など)をあわせて読み込んでみてください。そこには、単なる「動く・動かない」を超えた、アクセシビリティの本質的な要件が記されています。
2. 試験実施ガイドラインとチェックリスト
「健康診断」に欠かせないのが、試験のプロセスです。当委員会では、JISに基づいた試験をどのように実施すべきかを示す「試験実施ガイドライン」や、具体的なチェックリストを提供しています。GAADをきっかけに、「まずはトップページだけでも、キーボードとスクリーンリーダーで試験をしてみる」といった具体的なアクションに繋げる際、これらのドキュメントは役に立ちます。
3. ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン
組織としてウェブアクセシビリティを継続するには、「今日はやったけれど、明日はやらない」という状態を防がなければなりません。イベントの熱量が高い今の時期は、組織としての「ウェブアクセシビリティ方針」を見直す、あるいは策定する絶好のタイミングです。WAICが提供する策定ガイドは、企業の社会的責任や法的義務、そして何よりユーザー体験の向上を、どのように組織の目標として言語化すべきかのヒントが得られます。
GAADの学びを、日常の実践へ
当委員会は、JIS X 8341-3の普及と現場で活用できる情報の提供を通じて、皆様の取り組みを支えていきます。GAADをきっかけに関心を持った方が、次の一歩を踏み出してくれることを楽しみにしています。
- この文章は、一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)のメールマガジンへ掲載することを目的に書かれたものです。
- この文章は、執筆者個人の見解に基づくものであり、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の公式的な見解を示すものではありません。
