日本のウェブアクセシビリティの実装に必要な情報の整備──ウェブアクセシビリティ基盤委員会 作業部会2

ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC) 作業部会2 主査
株式会社シュアルタ 西本 卓也

ウェブアクセシビリティ基盤委員会 作業部会2とは?

WAICにはいくつかの作業部会があります。このうち作業部会2(以下、WG2)は、JIS X 8341-3の実装に必要な資料の作成及び公開、また実装の際に生じる諸問題の解決に向けた議論を行っています。現在の主な活動は以下の通りです。

  • アクセシビリティ サポーテッド(AS)情報の作成
  • 達成基準及び実装方法に関する統一見解の検討

アクセシビリティ サポーテッド(AS)とは?

視覚障害のある人や画像を表示できない環境にいる人に、ウェブページ上の画像の内容を伝えるには、どうすればよいでしょうか。画像の内容を簡潔に説明するテキストをあらかじめ用意すれば、必要な場合だけそれを使うことができます。このような情報は「代替テキスト」と呼ばれます。

例えばJIS X 8341-3:2016(WCAG 2.0)の「1.1.1 非テキストコンテンツの達成基準」を満たすために、ウェブコンテンツの画像に代替テキストを設定するとします。

この方法でこの達成基準を満たすと言えるためには、以下のことが必要です。

  • 広く使われている(あるいは、容易に入手できる)ブラウザが、画像の代替テキストに対応していること
  • 広く使われている(あるいは、容易に入手できる)スクリーンリーダーが、画像の代替テキストに対応していること
  • 日本においては、これらが、日本語のウェブコンテンツで不具合なく使えること

このとき画像の代替テキストを設定することは「アクセシビリティ サポーテッド(AS)な方法」になります。

これは実際に成り立っているので、私たちは画像に代替テキストを設定するわけです。

AS情報の作成

現実において、実装者が使いたいウェブ技術には多種多様なものがあり、日々、新しい技術も登場しています。

あるウェブ技術が、達成基準を満たす方法として使えるかどうかを判断するためには、日本語のコンテンツで、その使い方が「ASな方法」かどうかを示す情報が必要になります。そこでWAICはアクセシビリティ サポーテッド(AS)情報を公開しています。

ではAS情報はどうやって作ればいいでしょうか?

WG2では、それぞれの方法について、テストのためのウェブコンテンツと手順書を作っています。これが「ASテスト」です。このテストは実施者が正しく結果を確認できるように注意深く検討をして作成しています。

これらのテストを、ブラウザとスクリーンリーダーの組み合わせごとに手順に従って実施し、結果を集めたものが「AS情報」になります。

WG2はASテストを作成・実施し、結果をAS情報としてまとめる作業を行ってきました。しかし、必要とされるウェブ技術に加えて、広く使われるブラウザやスクリーンリーダーも日々、変化しています。AS情報のニーズに応えるために、作業を加速する必要があると考えました。

現在はウェブアクセシビリティに関心のある方々に「ASテストの実施をお手伝いいただきたい」と呼びかけて、ASテスト結果の提出をいつでも受け付けています。一方で、ASであることをより多くの人がより適切に判断できるように、ASテストの作成や改善に力を入れています。

定例会と公開イベント

WG2は毎月、オンラインの定例会を開催し、またGitHubやSlackなどのコラボレーションツールも活用して、活動しています。ASテストの作成や検討のやりとりの多くはGitHub issuesで公開しています。

ASテストに興味がある方のための公開イベント「ASテスト もくもく会」もオンラインで開催しています。このイベントでは、最初に、ASテストの実施方法と検証結果の提出方法をご説明します。その後は、参加者に各自、テスト実施と検証結果の提出を体験していただきます。最後に、ご感想やご意見を伺います。

アクセシビリティ検証に興味を持つ方々には、WCAGのガイドラインや関連文書を理解したり、スクリーンリーダーの操作を学んだりする機会にもなる、と好評です。また伺ったご意見はWG2で検討し、ASテストの改善に役立てる予定です。

この「ASテスト もくもく会」についてはイベント告知サイトconnpassをご参照ください。

おわりに

以上のように、WG2では日本のウェブアクセシビリティの実装に取り組む方々に向けた活動を行っています。

私たちの活動に参加してみたいという企業・個人の方は、「お問い合わせ」ページから入会希望の旨をご連絡ください。

  • この文章は、一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)のメールマガジンへ掲載することを目的に書かれたものです。
  • この文章は、執筆者個人の見解に基づくものであり、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の公式的な見解を示すものではありません。
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