画像の代替テキストから始めましょう

ウェブアクセシビリティ基盤委員会 作業部会1 作業協力者
木達 一仁(株式会社ミツエーリンクス)

高すぎる目標設定にご用心

個人的な印象ですが、ウェブアクセシビリティの重要性や必要性を学び、理解したばかりの方々のなかには、やる気に満ちて意気込むあまり、現実離れした高すぎる目標を掲げる方が少なくありません。

高い目標を立てること自体は素晴らしいのですが、組織においてウェブアクセシビリティの目標を達成するには、多くの関係者の理解と協力が不可欠です。その点を軽視してしまうと、遅かれ早かれ取り組みは息切れを起こし、頓挫しかねません。

そこで私は、これからウェブアクセシビリティに取り組もうとお考えの方々に対し、よくセミナーなどで「まずは画像の代替テキストから始めましょう」とお話ししています。

なぜ「まずは画像の代替テキストから」?

視覚障害者などの画像を見ることが困難なユーザーに対してや、何らかの理由で画像がダウンロードされない状況などにおいて、画像の代わりとなって等価な情報を伝える役割を担うのが、代替テキストです。

ウェブの利用に際し、障害当事者の挙げる代表的な困難の1つに、画像の代替テキストの不備・不足があります。それだけに、適切な代替テキストを画像に指定することは、数あるウェブアクセシビリティ向上施策のなかでも比較的、優先度が高いと言えます。

また画像に適切な代替テキストを指定することの重要性・必要性は理解しやすく、なおかつ「基本のキ」に分類されることの多いものですから、ウェブ担当者やウェブ制作者にとって取り組みやすいアクセシビリティ向上施策とも言えます。

適切な代替テキストの考え方

いざ取り組もうとして、適切な代替テキストの付け方をしっかりと考えたことがなかった……という方、ご安心ください。実は、その考え方にはセオリーが存在し、ウェブ上で公開されています。「altディシジョンツリー」と呼ばれるものが、それです。

ディシジョンツリー(決定木)とは、意思決定を行うためのフレームワークの一種。「altディシジョンツリー」を活用し、画像の内容に関してツリー状に並んだ問いに答えていくことで、適切な代替テキストを考えることができます。

またHTMLの仕様、HTML Living Standardには、「画像の存在に言及することなく誰かに電話で画像を含むページをどのように読むか考える」というアドバイスが記されています。altディシジョンツリーと並び、このアドバイスも適切な代替テキストを考えるうえで参考になるかと思います。

小さく始めて大きく育てる

読者のなかには、画像の代替テキストだけなんて物足りない、ほかの施策にも並行して取り組むべきとお考えの方がいらっしゃるかもしれません。それでも私は、当初はハードルをできるだけ低くして取り組み始める、「小さく始めて大きく育てる」アプローチをおすすめします。

画像に適切な代替テキストを指定する、ただそれだけのことであっても、組織で根付かせるために検討すべき事項は多岐にわたります。代替テキストはいつ、誰が考え、指定するのか。指定された代替テキストが適切かをいつ、誰が、どのような手段で確認するのか。担当者への教育は、誰がどう進めるのか。

担当者やルール、プロセスを決めて、実践するだけでも結構、大変なものです。ウェブサイトの規模が大きい場合、いきなりサイト全体を対象とするのではなく、特定のコンテンツに限定して取り組み始めるべきかもしれません(それもまた「小さく始めて大きく育てる」アプローチ)。

継続的にPDCAサイクルを回し、画像のアクセシビリティを維持・向上させることができれば、組織にとって素晴らしい成功体験になります。画像にとどまらない、より高い目標の達成、より高いウェブアクセシビリティの実現に向けては、その成功体験が貴重な足がかりとなるでしょう。

  • この文章は、一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)のメールマガジンへ掲載することを目的に書かれたものです。
  • この文章は、執筆者個人の見解に基づくものであり、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の公式的な見解を示すものではありません。
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