「障害者基本計画(第5次)案に関する意見募集について」へのパブリックコメントを提出しました

2023年1月18日から1月31日まで意見募集が行われていた「障害者基本計画(第5次)案に関する意見募集について」に関して、ウェブアクセシビリティ基盤委員会は、JIS X 8341-3の原案作成団体として以下5つのパブリックコメントを提出しました。

コメント1: 本文案の箇所 iiページ

「3.情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実[基本法第22 条関係、条約第 9,21,24 条関係]」に関して、障害者基本法第22条では「(情報バリアフリー)」とある一方で、この障害者基本計画(第5次)本文案では、情報バリアフリーではなく、情報アクセシビリティと呼称していると理解しており、基本法と基本計画との間で語の不一致が生じていることに懸念を覚える。

また、2022年に採択された国連の障害者権利委員会による総括所見(パラ7(d))では、accessibilityの翻訳が不正確であると指摘されている。現に、障害者権利条約第9条は、accessibilityを「施設及びサービス等の利用の容易さ」と翻訳しており、外務省訳からはアクセシビリティについて言及していることを理解することが困難な状況にある。

さらに、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律は、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」と略称が登録されている一方で、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律は、登録こそされていないものの、「読書バリアフリー法」と通称されているものと理解している。

このように、情報分野のアクセシビリティに関連する、条約(外務省訳)や法令等上の語について、少なくともバリアフリーとの語の混用が生じている。ここで問題となるのは、アクセシビリティとバリアフリーが同じものを指すのか、異なるものを指すのかについて、明確に定義されておらず、人によって異なる捉え方がされうることにあると考える。

以上のことから、次期(第6次)障害者基本計画に向けて、総括所見で指摘された条約の翻訳の正確性の向上とともに、アクセシビリティとバリアフリーの語の関係性について議論・整理されることを期待しつつ、特に情報分野のアクセシビリティに関係する法令等において、条約にあるように情報アクセシビリティに統一することを要望する。

コメント2: 本文案の箇所 26ページ[3-(1)-4]

以下の理由により、「日本版VPAT」という通称を用いるのであればVPAT®を提供するInformation Technology Industry Council (ITI)との協調を前提とすべきであり、現状ではこの名称を使うべきではない。

  • 『「情報アクセシビリティ自己評価様式」(通称:「日本版 VPAT」)』について、総務省のウェブページ(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/b_free/b_free02.html)では、「日本版VPAT」という通称を用いていない。
  • 「情報アクセシビリティ自己評価様式」はその内容に関する技術、運用の観点での議論の途上であり、評価の技術的な根拠となる各規格の関係者(原案作成者など)、生産者、使用者をはじめとする関係者による十分な検討や合意形成も得られていない状況にある。
  • 米国やEUで用いられている国際的な情報アクセシビリティの自己評価様式であるVPAT®と技術面、運用面で同等な様式となるとは限らず、その提供元である ITIとの合意も得られていないと認識している。

また、自己評価様式の普及展開自体は進めるべきと考えるが、現在総務省のウェブページで公開されている「情報アクセシビリティ自己評価様式」はその技術面、運用面での詳細が定まっておらず、国際的な自己評価様式との整合性も担保されていないため、現状の下での様式の「普及展開」は困難が伴うことが懸念される。今後、十分な検討や合意形成を経て普及展開されることを期待する。

コメント3: 本文案の箇所 27、28ページ[3-(2)-4]

「アクセシビリティに配慮された電子出版の普及に向けた取組を進めるとともに、」について、電子書籍のアクセシビリティに関する日本産業規格であるJIS X 23761:2022が制定された(https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220822001/20220822001.html)ことから、この規格の認知が電子出版業界に浸透することに期待したい。

「関連する規格等を踏まえ、アクセシビリティに配慮された電子出版の普及に向けた取組を進めるとともに、」のように文言を追加することを提案する。

コメント4: 本文案の箇所 28、29ページ[3-(4)-2]

「キーボードのみで操作可能な仕様の採用、動画への字幕や音声解説の付与など、」について、JIS X 8341-3:2016の具体的な技術内容への言及となっていると考える。基本計画においては、個別・具体的な対応ではなく、JIS X 8341-3:2016のより包括的な原則に言及することが適当であると考えることから、「キーボードのみで操作可能な仕様の採用、動画への字幕や音声解説の付与など、」を「知覚可能、操作可能、理解可能、堅ろう(牢)の原則を基礎とする、」に置換することを提案する。

また、JIS X 8341-3:2016は、ISO/IEC 40500:2012との一致規格であるが、この規格の基になる技術仕様は、ウェブに関する標準化団体であるW3C(World Wide Web Consortium)でWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG)として策定が進められているものである。ISOの規格発行のルール上、W3Cによって策定されるコンソーシアム標準が、必ずしもISOの発行する国際規格と一致しているわけではない。

ISO/IEC 40500:2012はWCAG 2.0をISO化した規格であるが、2023年1月時点でW3Cの策定している技術標準はWCAG 2.1が最新である。そのことから、「最新のウェブアクセシビリティ規格」を「最新のウェブアクセシビリティ規格等」とすることを提案する。それによって「規格」ではない「標準」を実態に即して適用することも考慮できるようになり、障害者にとってより必要な対応を含めることが可能になると考える。

最後に、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」の脚注26について、特に行政機関に対しては一定程度、本ガイドラインは普及したと思われること、また、他のガイドラインには脚注にて補足情報が提供されていないことから、削除を提案する。

コメント5: 本文案の箇所 26ページ [3-(1)-2]脚注24

脚注24に関して、「ウェブコンテンツ」から広く一般に想起されるものはウェブサイト上のウェブページであるが、サービスやシステムとして、スマートフォン等で扱われるモバイルアプリも「情報通信機器等」の対象範囲であるから、それらを含む多様なデジタルコンテンツについて補足情報として明示するのが適当と考える。よって、「ウェブサイトやモバイルアプリ等、多様なデジタルコンテンツに関するサービスやシステムを含む。」とすることを提案する。

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