1. ガイドラインの目的
ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン(以下、「本ガイドライン」という。)は、ウェブコンテンツ(ウェブアプリケーションを含む)のウェブアクセシビリティ方針を作成する際に、文書に明記すべき事項を示すためのものである。
JIS X 8341-3:2010では、次のようにウェブアクセシビリティ方針を定めることを求めている。
6 ウェブアクセシビリティの確保・向上に関する要件
6.1 企画
企画段階においてウェブページ一式の責任者は,ウェブアクセシビリティ方針を策定し,文書化しなければならない。ウェブアクセシビリティ方針には,目標とするウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級を含まなければならない。
注記 ウェブアクセシビリティ方針は,ウェブサイトではサイト上,ウェブアプリケーションではマニュアル,パッケージなどで公開するとよい。
この要件を踏まえ、ウェブアクセシビリティ方針に明記すべき事項について、コンテンツ提供者がウェブアクセシビリティ方針を策定しやすいように具体例を交えて解説する。
2. 方針に明記すべき事項
次の各事項について検討した上で、ウェブアクセシビリティ方針に明記する。
なお、国及び地方公共団体等の公的機関のウェブコンテンツ(公式ホームページ、団体が提供する関連サイト、ウェブシステム等)については、総務省の「みんなの公共サイト運用モデル(2010年度改訂版)」(以下「運用モデル」という。)も参照すること。
2.1 対象範囲
JIS X 8341-3:2010に対応する対象範囲を明記する。
- ウェブサイト名やドメインを明示して、対象とする範囲を具体的に示す。
- 対象に含まないウェブコンテンツがある場合には、URIを明示するなどして、その部分が特定できるように明記する。
- ウェブページ一式(例:ウェブサイト全体やウェブアプリケーション全体など)を対象範囲とするが全てのウェブページで対応することが困難な場合は、最終目標は全体を対象とするという前提で、以下の例のように当面の目標を併記する。
注記:ウェブアクセシビリティ方針で以下の例1.~6.のように当面の対象範囲を限定した場合、ウェブページ一式として試験を実施して試験結果を表示する際には、第三者がその対象範囲を特定できるように明記しなければならない。
例1. 特定のディレクトリのみを当面の対象とする場合
対象範囲:
株式会社○○○のウェブサイト (http://www.example.co.jp/)。
ただし、2013年度は△△コーナー(http://www.example.co.jp/example/以下)のみを対象とし、それ以外のコンテンツは2014年度以降の対応とします。
例2. 特定のディレクトリを対象外とする場合
対象範囲:
○○市のウェブサイト(http://www.city.example.jp/)。
ただし、2013年度は△△コーナー(http://www.city.example.jp/example/以下)を対象から除外し、△△コーナーのコンテンツは2014年度以降の対応とします。
例3. HTML以外のウェブページを除外する場合
対象範囲:
株式会社○○○のウェブサイト (http://www.example.co.jp/)。
ただし、2013年度はXYZファイル(拡張子が.xyzのウェブページ)を対象から除き、XYZファイルは2014年度以降の対応とします。
例4. 動画を除外する場合
対象範囲:
○○市のウェブサイト(http://www.city.example.jp/)。
ただし、2013年度は動画コンテンツを含むウェブページを除く。動画コンテンツは、2014年度以降に対応します。
例5. 新規作成ページのみを対象とする場合
対象範囲:
株式会社○○○のウェブサイト (http://www.example.co.jp/)。
ただし、ウェブページに明記した公開日または最終更新日が2013年10月1日以降の日付であるウェブページのみを対象とします。それ以外のコンテンツは、2014年度以降に対応します。
例6. CMS配下にあるページのみを対象とする場合
対象範囲:
○○市のウェブサイト(http://www.city.example.jp/)。
ただし、2013年度はCMSで管理しているウェブページのみを対象とします(具体的な対象ページについては、試験結果を公開する際に明記します)。それ以外のコンテンツは、2014年度以降に対応します。
参考
運用モデルの付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」も参考にするとよい。
(引用元)付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」(PDF)『3-1.対象範囲及び目標達成期限の設定』(P6)
- ドメインが異なるホームページなど、管理形態やコンテンツの特性が異なるホームページについて、個別にウェブアクセシビリティ方針を策定することが可能です。
- 全ページを一度に対応できない場合は、利用者にとって重要な情報や基本的な情報の掲載されているページから、優先的に対応するようにします。(例:「暮らしのガイド」のページは全ページ対応する。お知らせは新規掲載ページのみ対応し、過去の掲載分は次年度以降の課題とする など)
2.2 達成等級及び対応度
三つの達成等級(等級A、等級AA、等級AAA)のうち、どの達成等級を目標とするかを定めて明記する。また、ウェブアクセシビリティ基盤委員会が作成した「ウェブコンテンツの JIS X 8341-3:2010 対応度表記ガイドライン」で提示されている次の五つの対応度のうち、どの対応度とするかを定めて明記する。
- 適合
- 準拠
- 一部準拠
- 配慮し試験
- 配慮
参考
運用モデルの付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」では、達成等級について以下の記載がある。
(引用元)付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」(PDF)『3-2.目標とする達成等級・達成基準の選定』(P6)
- 目標とする達成等級として、等級A または等級AA のどちらかを選択します。等級Aは最低限の等級と位置づけられています。公的機関は「等級 AA に準拠」することが推奨されます。(ウェブコンテンツによっては等級AAAを完全に満たすことができない場合があるため、目標として「等級 AAA に準拠」を選択することは推奨しません。)
- 達成等級を満たすには、選択した等級に該当する達成基準をすべて採用することが基本です。これを「準拠」と言います。ただし、「2.現状把握(4 ページ)」で明らかとなった自団体の技術や運用などの事情によって、現時点では対応できない達成基準があるかもしれません。その場合は例外事項として、特定の達成基準を目標から除外することが可能です。
- 一部の達成基準を目標から除外する場合は、「準拠」ではなく「一部準拠」と表記します。
- 目標とする達成等級として等級 A を選択した場合は、等級 AA 及び等級 AAA の達成基準の中から、目標とする達成等級として等級 AA を選択した場合は、等級 AAA の達成基準の中から、対応可能なものを積極的に追加採用します。
国及び地方公共団体等の公的機関の場合は、運用モデルの付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」で提示されている期限と達成等級を目標とすることが望ましい。
- 国及び地方公共団体等の公的機関は、「みんなの公共サイト運用モデル」を参考に、各団体の事情を踏まえて期限と達成等級を検討し、できるだけ速やかに対応してください。
期限と達成等級の目安
既に提供しているホームページ等
- 2012 年度末まで 「ウェブアクセシビリティ方針」策定・公開
- 2013 年度末まで JIS X 8341-3:2010 の等級A に準拠(試験結果の公開)
- 2014 年度末まで JIS X 8341-3:2010 の等級AA に準拠(試験結果の公開)
ホームページ等を新規構築する場合
(引用元)付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」(PDF)『はじめに』(P1)
- 構築前に 「ウェブアクセシビリティ方針」策定
- 構築時に JIS X 8341-3:2010 の等級AA に準拠(試験結果の公開)
また、運用モデルの付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」では、段階的に目標を設定することも選択肢として挙げている。
(引用元)付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」(PDF)『3-1.対象範囲及び目標達成期限の設定』(P6)
- 「2012 年までに等級A に準拠、2014 年までに等級AA に準拠」、「2012 年までに等級AAに一部準拠、2014 年までに等級AAに準拠」、「利用者にとって特に重要な情報を掲載しているページは2011 年中に、その他のページは2014 年までに等級AA に準拠」など、段階的に目標を設定することも可能です。
2.3 その他、明記するとよい事項
JIS X 8341-3:2010の要件ではないが、次のような事項についても検討し、必要に応じてウェブアクセシビリティ方針に文書化しておくとよい。
- 目標を達成する期限
- 例外事項(ある場合)
- 対応度が一部準拠の場合:満たすことのできない達成基準を明記する
- 対象外となるコンテンツがある場合:範囲が特定できるように明記する
- 追加する達成基準
- 担当部署名
- あわせて、連絡手段(電話番号、Eメールアドレス等)も明記するとよい
- 現時点で把握している問題点及びその対応に関する考え方
- 試験を実施した後であれば、試験結果を表示しているページへのリンクを追加するとよい
注記:このうち、目標を達成する期限、例外事項(ある場合)及び追加する達成基準の三つは、運用モデルの付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」では「必ず含める事柄」とされている。
参考
運用モデルの付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」も参考にするとよい。
必ず含める事柄
- (1) 対象範囲
- アクセシビリティ対応の対象とするホームページ等を記載します。
(例:●●県公式ホームページ、●●市子育て支援サイト、●●区施設予約システム等)- (2) 目標を達成する期限
- いつまでに目標を達成する予定かを記載します。
- (3) 目標とする達成等級
- 目標とする達成等級を記載します。
- (4) 例外事項(ある場合)
- 選択した達成等級に該当する全ての達成基準を適用することが原則となりますが、「2.現状把握(4 ページ)」で明らかとなった諸事情により、適用できない達成基準がある場合は記載します。同様に、対象外とするコンテンツが有る場合は記載します。
- (5) 追加する達成基準
- 選択した達成等級以上の達成基準を追加する場合は、記載します。
含めることが望ましい事柄
(引用元)付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」(PDF)『3-3.ウェブアクセシビリティ方針に含める事柄』(P7)
- (1) 担当部署名
- 担当部署名を記載します。
- (2) 現時点で把握している問題点
- 「2.現状把握(4 ページ)」で明らかとなった問題点を記載します。
- (3) 現時点で把握している問題点への対応に関する考え方
- 問題点について、対応の考え方を記載します。
3. 事例
本ガイドラインをふまえたウェブアクセシビリティ方針の例を以下に示す。
3.1 民間企業のウェブサイトの例
ウェブアクセシビリティ方針
株式会社○○○のウェブサイトでは、「JIS X 8341-3:2010 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」に対応することを目標とし、アクセシビリティの確保と向上に取り組んでいます。
対象範囲
株式会社○○○のウェブサイト(http://www.example.co.jp/)全体
目標とする達成等級及び対応度
JIS X 8341-3:2010の等級Aに準拠
注記:弊社のウェブアクセシビリティ方針における「準拠」という表記は、情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会「ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2010 対応度表記ガイドライン 第1版 - 2010年8月20日」で定められた表記による。(URI http://waic.jp/docs/jis2010-compliance-guidelines/)
- 目標とする達成等級及び対応度が明記されている
- 対象範囲となるウェブサイトのドメインが明示されている
3.2 公的機関のウェブサイトの例
運用モデルをふまえて、より詳細に文書化されている。
ウェブアクセシビリティ方針
○○市のウェブサイトでは、「JIS X 8341-3:2010 高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」に対応することを目標とし、アクセシビリティの確保と向上に取り組んでいます。
対象範囲
○○市のウェブサイト(http://www.city.example.jp/)全体
目標とする達成等級及び対応度
JIS X 8341-3:2010の等級AAに準拠
注記:○○市のウェブアクセシビリティ方針における「準拠」という表記は、情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会「ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2010 対応度表記ガイドライン 第1版 - 2010年8月20日」で定められた表記による。(URI http://waic.jp/docs/jis2010-compliance-guidelines/)
目標を達成する期限
2015年3月31日
担当部署
○○市○○○○課
- 目標とする達成等級及び対応度が明記されている
- 対象範囲となるウェブサイトのドメインが明示されている
- 目標を達成する期限が明示されている
- 対応部署が明示されている
その他の具体例については、付属資料1「ウェブアクセシビリティ方針策定・公開の手順書」(PDF)『4. ウェブアクセシビリティ方針の公開』(P8)を参照。
4. 参考資料
参考となる資料や情報の入手先の一覧を以下に示す。
- (1) JIS X 8341-3:2010
-
- 購入方法
- オンラインでは日本規格協会の「JSA Web Store」より購入することができる。
- 一時的な閲覧方法
- 日本工業標準調査会(JISC)のウェブサイトでは規格票の閲覧が可能である。ただし、ダウンロードや印刷することはできない。よって、必ず、規格票を購入するようにすること。
- (2) みんなの公共サイト運用モデル(2010年度)
- JIS X8341-3:2010に基づき、実施すべき取組み項目と手順等を示している。
ウェブアクセシビリティ方針策定に関しては、特に次の資料が参考になる。