活動背景
本委員会の前身であるウェブアクセシビリティ作業部会は、高齢者・障がい者がウェブを簡単に利用できるようにするため、ウェブアクセシビリティの確保・向上を図ることを目的に、2000年9月4日、電気通信アクセス協議会(現:情報通信アクセス協議会)に発足しました。
日本では、財団法人 日本規格協会・情報技術標準化研究センター(INSTAC)のワーキンググループで策定したJIS X 8341-3:2004「高齢者・障害者等配慮設計指針 -情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス- 第3部:ウェブコンテンツ」が2004年6月に公示され、ウェブのアクセシビリティが注目されました。一方、W3C (World Wide Web Consortium) では、2008年12月にWCAG 2.0 (Web Content Accessibility Guidelines 2.0) が勧告となり、世界のウェブアクセシビリティに新しい時代が訪れました。WCAG 2.0には、JIS X 8341-3:2004の成果も取り込まれています。日本でも、WCAG 2.0と国際協調したJIS X 8341-3の改正原案がINSTACのワーキンググループで2008年度に策定され、2010年8月20日にJIS X 8341-3:2010として改正版が公示されました。
WCAG 2.0は技術非依存に記述されているために、解説文書や技術資料がないとわかりにくいことがわかっています。そこでW3Cは、WCAG 2.0以外に次に示す文書も公開しています。
- Understanding WCAG 2.0
- Techniques for WCAG 2.0
- How to Meet WCAG 2.0 -A customizable quick reference to WCAG 2.0 requirements and techniques-
- The WCAG 2.0 Documents
しかしJIS改正原案を策定したINSTACのワーキンググループでは、規格ではないこのような資料のJIS改正原案版を作成することができませんでした。また、(英米圏と比較して機能が遅れている)日本のユーザエージェント(ブラウザやメディアプレーヤー、支援技術)が上記Techniques(実装方法)にどの程度対応しているかを示す「アクセシビリティ・サポーテッド情報」も必要ですが、これもINSTACでは作成できませんでした。さらに、JIS改正版を基盤として日本のウェブアクセシビリティを向上させるためには、(日本工業規格では扱うことが難しいウェブというメディアのアクセシビリティに対応するためにも)WCAG 2.0やJISの枠組みを超えた、制作者や利用者を巻き込んだ活動が必要でした。
このような背景から、INSTACのワーキンググループの後継活動として、日本の現場で改正版JISを適用する際に必要な活動組織が必要でした。このような組織として、公的な団体として周知されている情報通信アクセス協議会のウェブアクセシビリティ作業部会が最適であると考え、2009年9月に部会員を大幅に入れ替えて「ウェブアクセシビリティ作業部会」を再立ち上げし、改正後のJIS X 8341-3をサポートする資料の作成に取り組むことになりました。
2009年9月に再立ち上げしたウェブアクセシビリティ作業部会は、2010年8月20日のJIS X 8341-3:2010公示に合わせて、2010年8月4日から、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(Web Accessibility Infrastructure Committee)として活動が強化されました。