キホンのキであるアクセシビリティに関して、企業サイトが積極的とは言えない現状を踏まえ、消極的な社内を説得しWebアクセシビリティに取り組む、その第一歩を踏み出すためのヒントを紹介しました。
回答者個人を特定するおそれのある情報につきましては、割愛させていただきました。また、文意を変えない範囲で、漢字の使い方や句読点等、適宜編集のうえ掲載させていただきました。
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Q障害当事者の方にとってWebサイトはどのようなもので、どのように使われているのでしょうか?
A(いち障害当事者として回答)情報収集やネットショッピング、購入した製品を使うために必要な情報・サービスを受けるなど、そのような使い方をしています。
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Q昨今の企業サイトは障害当事者の方にとってどのように見えているのでしょうか?
A(いち障害当事者として回答)製品を探したり、購入したりすることは問題なくできることが多いように感じます。
困っていることとしては、メーカーサイトで、製品の取扱説明書がPDFで公開されており、正しい読み上げがされないことが挙げられます。また、紙の説明書をベースにした説明になっているため、書いてあることが理解できなかったり、段組みなどで読み上げ順序が正しくなかったりすることがあります。
ショッピングサイトでは、支払い方法に関する記述がなかったり、日時指定をするための操作ができなかったりといった不都合を経験することがあります。
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Qアクセシビリティを必要としている方々がサービスに対して、評価しそれを公開する仕組みや機関はありますか?
A現時点では、存在を把握していませんが、視覚障害者を中心に、利用者側の意見を伝えようという動きが始まっています。
また、公的な機関はありませんが、障害当事者をスタッフとして、アクセシビリティチェックを実施している企業があったり、アクセシビリティに優れた取り組みを行っている企業を表彰したりといったことが行われている状況にあります。
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QWebサイトに、文字拡大や背景色・文字変更・読み上げツールなどは必要ないのでしょうか?
A特定の利用者のためのユーザビリティ向上策として有効なケースはあると思われますが、誰のため、何のためなのかを考えて設置する必要があります。
例えば、スマートフォンからの閲覧時、画面全体を拡大して閲覧しなければならないケースがあります。その際、画面を拡大したままでは、画面を左右にスクロールさせながら閲覧しなくてはならず、読みにくさが生じます。ですが、文字サイズを拡大することができれば、上下のスクロールだけで閲覧できることになりますので、文字サイズ拡大が有用なケースと考えられます。
また、ツールを導入することによって、Web担当者や制作者が、読み上げの状況を確認することができるなど、副次的な利用も期待できます。
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Qあえて、サイト独自の“音声読み上げツール”を入れているサイトをよく見かけます。意図はあるのでしょうか。
A読むのが疲れる、あるいは、聞いて使いたいという利用者に対する配慮という可能性はありますが、リンクの操作ができないなど、スクリーンリーダーに代わるものではないことに注意が必要です。
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QJIS X 8341-3:2016の中に、200%の文字拡大に対応できるように、というような項目があったと思いますが、それは”文字拡大機能をつけるということではなく、なんらかの手段で200%に拡大した時にきちんと読めるように”なっていること、と考えています。この認識であっていますか?
Aご認識のとおりです。
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QWebサイトの中にGoogleマップやYouTubeなどのコンテンツを埋め込んでいた場合、Webサイト一式の準拠を目指すにはどのように対応すれば良いのでしょうか?
A第三者から提供されているコードに問題があり、修正が困難である場合、「部分適合」が適用できます。ただし、この場合、ウェブページとして「準拠」を謳うことはできません。
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Q準拠というには試験が必要とのことですが、試験を受けるのにコストがかかるということでしょうか?また、それはどれくらいですか?
A試験方法には様々あり、業者への発注が可能ですが、Web担当者自身が試験を行うこともできます。
費用は、試験実施対象となるコンテンツ数によって変わりますが、当委員会が作成した「
試験実施ガイドライン」を参照するなどして、適切な試験方法を確認してください。
なお、当委員会としては特定の業者を紹介することはしていません。
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Q既存のWebページを改修してアクセリビリティを高めたいが、レイアウト変更などは多額の経費がかかり、困難な状況です。その場合、なにから始めれば良いですか?
Aレイアウト変更をせずに、HTML記述を改めることで、アクセシビリティを向上させることのできる場合があります。
また、カルーセルパネルに停止ボタンを付与する、画像部分をテキストに改めるなど、細部からアクセシビリティ向上を進めることができます。
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Q動画や紙もの、PDFは既存のものも再構成する必要がありますか?(研究論文などを大量にPDFで掲載しています)
Aテキスト形式など、アクセシブルな代替コンテンツを用意することで、動画やPDFを再構成せずに、アクセシビリティの向上が期待できます。
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Q受注側として質問です。「アクセシビリティ」に対して、自治体のWeb担当の方の意識や知識はどのような状態なのでしょうか?
A(総務省による回答)障害者差別解消法が施行されたことによって、合理的配慮の提供は、自治体においては義務とされています。また、「
みんなの公共サイト運用ガイドライン」では、2017年度までに適合レベルAAへの準拠を目安として示しているため、自治体の意識は上がっているものと思われます。総務省では、アクセシビリティに関する講習などを実施しており、今後、自治体からの発注も増えることが見込まれます。
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Q海外企業でのアクセシビリティの取り組み事例などがありましたら教えてください。
Aカナダのオンタリオ州や韓国などでは、民間企業に対しても、アクセシビリティ確保に関して、法的義務が課せられています。
また、アメリカでは、ウェブコンテンツが「障害を持つアメリカ人法(ADA)」の適用対象であるとの考えが浸透してきており、近年、WCAG 2.0のAAを目指して、ウェブコンテンツの改善を進める企業が増えています。
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Q最近の読み上げ対応ブラウザはJavaScriptも動作するようですが、いつまでJavaScriptがoffの場合の対策を取る必要がありますか?
Aごく一部を除いて、音声ブラウザでは、JavaScriptが動作する状況にある。また、現状、ウェブコンテンツは、JavaScriptが無効な状態では成立しないケースが多いと考えられます。
JavaScriptが無効な状態を前提とすべきかどうかは、そのウェブコンテンツの利用状況や、サービスの内容に依りますが、最近では、WAI-ARIAなど新しい仕様によって、JavaScriptを用いることでスクリーンリーダーの使い勝手が向上する可能性が高まっている状況にあります。
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Qロゴに<h1>タグを使用したり、ナビゲーションのメニューのところに<h2>でNavigationと見出しをつけるのは、構造化という観点では必要だと思っていますが、アクセシビリティ的には避けるべきという意見がありました。W3Cのサイトでも同様にマークアップされていますが、皆様の見解をお聞きしたいです。
A音声読み上げのために、視覚的な情報とは異なる特別な記述をする必要はないと考えます。
音声読み上げ用に情報を付加するのは、そうしなければ意味が伝えられないケースなどに限定されるでしょう。
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Q国立研究開発法人も、省庁・自治体と同様の対応(レベルAA準拠)が必要でしょうか?
A国立研究開発法人は、独立行政法人の一部であるため、公的機関に位置づけられます。
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QiPhoneがアクセシブルなのはどの様なコンセプト、どのようなフローで作ったからだと思いますか?(ISOを守るため?)
A当委員会では把握していません。
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Q具体的なUIの事例(特にスマートフォン対応)良い例・悪い例・取り組み事例
A個別の良し悪しについて具体的に事例を紹介することは、当委員会としては控えさせていただきたく、検索サービス等を利用し探していただければと思います。
なお、良い例については、アクセシビリティ方針を掲げ、かつJIS X 8341-3に基づく試験結果を公開されているサイトが参考になるでしょう。その目的において、当委員会が定期的に実施している「方針策定と試験結果表示の実態調査」をご利用いただければと思います。
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Qプロジェクト規模とそれに応じた推進体制の事例
A対象範囲、目標とする達成度、アクセシビリティ改善前のWebサイト品質によって異なります。対象範囲がCMS配下の全ページのように広い場合は、通常のリニューアル推進体制に加え、アクセシビリティ対応のタスク(実装、試験等)に割く人的リソースが必要です。
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Q障害当事者のユーザのテストをしたいと考えたとき、どこか頼めるところはありますか?
A当委員会としては特定の業者を紹介することはしていません。
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Q公的機関のサイトにおいて、AA準拠を目指していますが、現状では動画コンテンツへの対応ができていません。対応を進めるうえでのポイントがあれば教えてください。またAA準拠の見本となるような動画の事例はありますか?
A音声解説をつける。キャプション(字幕)をつける。この2つが動画の対応における大きなポイントとなります。
「裁判所」の動画には、様々なバージョンが用意されている参考になるでしょう。
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Q月間のイベントカレンダーを作るときに、音声読み上げ対応上、注意すべきことはありますか?そもそも技術上可能なものでしょうか?
A表組を用いる場合には、その構造及びセルの属性を明示することが必要です。また、適切に構造化された箇条書きによって示すなどしたイベント一覧のページを、代替コンテンツとして用意されるのも良いでしょう。
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QFacebookページを立ち上げる予定ですが、アクセシビリティの観点から注意すべきことはありますか?そもそもFacebookってホントにアクセシブルなんでしょうか?
A当委員会としては、個別のウェブサイト・ウェブサービスの仕様を把握していないため、回答いたしかねます。
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QJIS適合試験を業者に発注する際、注意すべき点はありますか?業者から「専門性がない業者もいるから気をつけて」と言われたことがありますが、専門性の有無を判断する材料があれば知りたいです。
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Q読み上げ対応のため、例えばレシピのサイトで「5cmに切る、100g入れる」より「5センチメートルに切る、100グラム入れる」のほうが望ましいのでしょうか?
A一般的に用いられる表記で記すこと優先すべきと考えますが、正確な読み上げを目的とするのであれば、カナ表記とすることも問題とはならないでしょう。
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Q障害者権利条約の批准が日本は140番目と伺いましたが、なぜ遅かったのでしょうか?国民性などでしょうか?
A当委員会としては関知しておりません。
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Qアクセシビリティを上げると、ユーザビリティが下がる場合はないでしょうか?例えば最近東京メトロの電光掲示板が日本語→英語→中国語→韓国語と多言語に切り替わるようになりました。韓国語の時、読めず、電車の行き先が分からず、乗り遅れそうになりました。
A当委員会として、Webではない個別の製品やサービスのアクセシビリティ対応に関するコメントは、差し控えさせていただきます。
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Qワンソース・マルチデバイス対応のレスポンシブデザインで設計されたウェブサイト、ポータルに対するアクセシビリティからの課題、見解をお聞かせ願えますでしょうか?
Aレスポンシブデザインを採用したWebページと、そうではないWebページとで、アクセシビリティ対応に必要な考え方に相違はありません。しかし、特定の画面サイズにおいてページの一部を非表示にしたり、あるいはレイアウトを大きく(HTMLのソースにある記述と乖離する方向に)変更しているような場合には、それが特定のユーザーのアクセシビリティを妨げていないか、注意が必要です。
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Q取り組みを始めている企業では、トップダウンorボトムアップ、どちらが多いか?また、始めやすいのか?
A個別の事情に依ると考えます。ですが、対象範囲や、目標とする適合レベルなどを、できるだけ具体的に定め、関係者すべてが同じ意識で取り組める体制づくりが欠かせないと考えます。