委員長就任のご挨拶

ウェブアクセシビリティ基盤委員会 委員長 太田 良典(弁護士ドットコム株式会社)

2025年9月1日より、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の委員長を務めさせていただくことになりました。

WAICは、日本産業規格 JIS X 8341-3 を理解し、活用するための基盤を提供するための組織として作られました。具体的には、関連文書の日本語訳の公開、アクセシビリティ方針の策定や試験の実施、結果の公開といった周辺のガイドラインの作成と公開などを行なっています。また、それらについての問い合わせの対応や、規格の普及、利活用推進のための広報活動なども行なっています。

新しい JIS 規格に向けて

そして今、WAIC では、JIS X 8341-3 の改正作業を予定しています。詳しくは、「JIS X 8341-3の改正に関する準備──ウェブアクセシビリティ基盤委員会 作業部会 6」の記事をご覧いただければと思います。

2025年の10月に改正原案作成委員会を立ち上げ、2026年度中の新規格発行を目指しています。この改正作業をやり遂げ、新しい規格を世に出すことが、直近の大きなミッションになります。

新しい規格ができても、それでWAICの活動が終わるわけではありません。その後はまた質問への対応や、普及・啓発のための活動を進めていくことになります。

規格への準拠がゴールではなく、その先へ

WAICでは規格やガイドラインに関するお問い合わせを頂くことも多く、ウェブアクセシビリティへの関心の高まりを感じています。その一方で、お問い合わせいただく内容が「規格に準拠できるかどうか」という観点に偏っていないかと感じることもあります。

規格に準拠することを目標として制作を進めることは、必ずしも悪いことではありません。ガイドラインに沿うことで、アクセシビリティが向上することは間違いありません。さらに、試験を実施して達成状況を確認すれば、取り組みの現在位置を知ることができます。

しかし、規格への準拠そのものは最終ゴールではありません。たとえガイドラインの全ての基準を満たしたとしても、あらゆる人になんの問題もなく使える、ということを意味しません。アクセシビリティに最終ゴールはなく、向上のための取り組みを続けることが重要です。ウェブアクセシビリティ向上のための取り組みの中で、現在の位置や向かうべき方向を知るための道具としてガイドラインを活用するとよいでしょう。

また、ウェブアクセシビリティ向上の取り組みは、ガイドラインへの対応だけではありません。たとえば、実際に当事者の方に使ってみていただいたり、声を聞いたりすることも重要です。WAICとしても、ガイドラインに関する情報だけでなく、より広いアクセシビリティ向上の取り組みについて、さまざまな形で情報を発信していきたいと思っています。

より多くの人や組織との連携

より広いアクセシビリティ向上の取り組みを行うためには、より多くの人や組織との連携が必要になると考えています。今までもWAICは、会員組織の皆様、招聘専門家や作業協力者の皆様、障害当事者団体の皆様、各省庁の皆様など、数多くの方からのご協力をいただいてまいりました。

今後は、これまで以上にさまざまな方と連携し、WAICの活動をさらに発展させていきたいと考えています。新しいJIS規格の発行をきっかけに、WAICを知ってくださる方も増えることかと思います。今まで連携できていなかった方々とも、あらたな関係を築く機会があるのではないかと思います。

ウェブアクセシビリティの重要性がますます高まる中で、WAICがその中核を担えるよう、微力ながら尽力してまいりたいと思います。皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

※この文章は、執筆者個人の見解に基づくものであり、ウェブアクセシビリティ基盤委員会の公式的な見解を示すものではありません。
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