意図
この達成基準の意図は、形又は大きさを知覚できない、もしくは空間的な位置又は方向に関する情報を利用できない場合でも、すべての利用者がコンテンツを利用するための指示にアクセスできるようにすることである。コンテンツによっては、コンテンツの構造からは入手できない対象の形又は位置の知識 (例えば、「円いボタン」又は「右のボタン」) に依存していることがある。障害のある利用者は、使用している支援技術の性質のために、形又は配置を知覚できないことがある。この達成基準は、このような情報に依存しているあらゆるものを明確にするために、補足の情報を提供することを要求している。
しかし、形及び/又は位置を用いて情報を提供することは、認知能力の低下している利用者を含む多くの利用者に対しては効果的な手法である。この達成基準は、情報が他の方法でも提供されている限り、これらのタイプの手がかりを妨げないほうがよい。
ある言語においては、「上記」はコンテンツのその地点よりも前にあるコンテンツを指し、「下記」はその地点よりも後にあるコンテンツを指すことが共通理解となっている。そのような言語では、参照されているコンテンツが読み上げ順序の中で適切な位置にあり、かつ参照が明確ならば、「下記のリンクのいずれかを選択する」または「上記のすべてを選択する」などの文はこの達成基準に適合するだろう。
WCAG はウェブページ上に表示されたコントロールのみに該当するよう設計された。その意図は、視覚的又は聴覚的な手がかりのみを参考にコントロールを説明をすることを避けるためである。これを物理的なハードウェアコントロール (専用コンテンツのあるウェブキオスクなど) を操作するための手順に適用するとき、おそらく触知できる手がかり (例えば、矢印の形をしたキー、右側の丸いキー) が説明されるだろう。この達成基準は、指示の中で触知できる手がかりの使用を防ぐことを意図したものではない。
メリット
- 全盲及びロービジョンの人々は、説明文がコンテンツの形及び/又は位置の記述のみに依存している場合、その説明文を理解できないことがある。形及び/又は位置以外の追加情報を説明文の中に提供することで、たとえ利用者が形及び/又は位置を知覚できないとしても、説明文を理解できるようになる。
事例
事例 1: 重複した競技のスケジュールを解釈する説明文で、各競技の会場を示すために、異なる形をした色付きアイコンを参照している
テーブルの 1 行目に時間のリストが、1 列目に競技のリストが表示されて、テーブルの下に説明文が提示されている。「青いひし形で示された競技はフィールド A で、緑色の丸で示された競技はフィールド B で行われます。」この説明文は色及び形にのみ依存しており、この達成基準の失敗となる。
事例 2: 複数のページによるオンライン調査
複数のページによるオンライン調査では、あるページから次のページへ遷移するために、緑色の矢印のアイコンとして実装されたリンクを使っていて、それをコンテンツの右下に置いている。矢印には「次へ」というラベルがはっきりと記述されていて、「次の調査へ進むには、最後の質問の右下にある『次へ』というラベルの付いた緑色の矢印のアイコンを選択してください。」という説明文が書かれている。この説明文は、アイコンの識別を助けるために位置及び色を用いているが、こうした感覚的な特徴のみに依存するのではなく、ラベルも参照しているため、この達成基準を満たしている。
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
失敗例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。