意図
この達成基準の目的は、デバイスを動かすこと (例えば、振ることや傾けること) によって、又はデバイスに向かってジェスチャをする (それにより、カメラのようなセンサーがジェスチャを取得して解釈できるようになる) ことによって引き起こされる機能が、より従来型のユーザインターフェースコンポーネントによって操作できることを確実にすることである。
この基準は、デバイスに向かってジェスチャをする、デバイスを傾ける、デバイスを振るなどの動作に直接反応するセンサーを介した入力に関するものである。この基準は、地理的位置センサーもしくはビーコンによって記録されるような空間を通過する利用者の動き、又は利用者による意図的なジェスチャ以外のデバイスで監視されるイベントを扱わない。また、キーボード、ポインタ、又は支援技術の操作に関連した付随的な動作についても扱わない。
デバイスには、電話やタブレットデバイスの加速度センサーやジャイロセンサーなど、入力として機能するセンサーがある。これらのセンサーは、利用者が単に向きを変えるか、又は装置を特定の方法で動かすことで何かを制御することを可能にできる。他の状況では、ウェブコンテンツはカメラ、又は他のセンサーを介して利用者のジェスチャを解釈して機能を作動させることができる。例えば、デバイスを振ると "Undo" コマンドが発行されうる。また、穏やかな手の波 (gentle hand wave) を使い一連のページを前後に移動しうる。デバイスが (おそらく車いすの) 固定マウントにあるため、又は運動障害のために、ある利用者はこれらのデバイスセンサーを (まったくないか、正確には十分ではないかのいずれかしか) 操作できない。したがって、モーションを通じて提供される機能は、別のメカニズムによっても利用可能でなければならない。
日本語訳の穏やかな手の波 (gentle hand wave) はスワイプ動作に相当する。
さらに、ある利用者は、振戦、又は他の運動障害のために誤ってセンサーを作動させる可能性がある。利用者は、このような偶然の機能の起動を防ぐよう動きによる起動をオフにする能力を持たなければならない。 アプリケーションは、利用者がシステムレベルで動きの検出を無効に設定できるオペレーティングシステムをサポートすることでこの要求を満たすことができるであろう。
振戦は医学用語。手、頭、声帯、体幹、脚などの体の一部に起こる、不随意でリズミカルなふるえ。振戦 - 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 - MSDマニュアル家庭版も参照のこと。
機能に動きが必要不可欠である場合、又は動きやジェスチャを使用しないと動作が無効になる場合は例外である。一部のアプリケーションは、デバイスセンサーデータを使用するように特別に作成されている。この要件から除外されるコンテンツの例には、歩数をカウントするためにデバイスの動きに依存する歩数計が含まれる。
メリット
- この達成基準は、デバイスが取り付けられているか、利用者が必要な動きを物理的に実行できないために、特定の動作 (傾斜、揺れ、身振りなど) を実行できない場合がある人々を支援する。この達成基準は、タッチなどの他の手段によって、又は支援技術を通して、依然としてすべての機能を利用者が操作できることを保証する。
- 他の利用者は、デバイスを動かすことができない状況でメリットを得ることができる。
事例
- 利用者は、シェイクして元に戻す機能及びその他の動きによる起動の機能をオフにするアプリケーション設定を選択できる。
- テキストを入力フィールドに入力した後、デバイスを振るとダイアログが表示され、入力を元に戻すことができる。テキストフィールドの隣にあるキャンセルボタンも同じ機能を提供する。
- 利用者はデバイスを傾けて次、又は前のページに進むことができる。ボタンも同じ機能を実行するために提供されている。
- 利用者はデバイスを移動、又はパンして、インタラクティブな写真の表示を変更できる。これらと同じ機能を実行するためのコントロールもある。
- 利用者はデバイスに向かってジェスチャをしてコンテンツをナビゲートできる。ナビゲートするためのコントロールもある。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
- G213: 動きで作動させる入力のために、従来のコントロール及びアプリケーション設定を提供する
- GXXX: 利用者がモーション作動を無効にできるようにするシステムレベルの機能をサポートする
失敗例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。
- F106: 達成基準 2.5.4 の失敗例 - 動きによる起動を解除することができない
- FXXX: 達成基準 2.5.4 の失敗例 - 利用者がモーション作動を無効にできるようにするシステムレベルの機能を中断、又は無効にしている
重要な用語
利用者の支援技術だけでなく、ブラウザ及びその他のユーザエージェントにあるアクセシビリティ機能でサポートされていること。
あるウェブコンテンツ技術 (又は、ある技術の機能) のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法とみなされるためには、そのウェブコンテンツ技術 (又は機能) について、次の 1.と 2.の両方が満たされていなければならない:
そのウェブコンテンツ技術の使用方法が、利用者の支援技術によりサポートされていなければならない。これは、その技術の使用方法が、そのコンテンツの自然言語における利用者の支援技術との相互運用性について検証されていることを意味する。
かつ
そのウェブコンテンツ技術には、利用者が入手できるアクセシビリティ サポーテッドなユーザエージェントがなければならない。これは、次の四つのうち少なくとも一つを満たしていることを意味する:
その技術が、広く配布されているアクセシビリティ サポーテッドなユーザエージェントに標準でサポートされている (HTML、CSS など)。
又は、
その技術が、広く配布されているアクセシビリティ サポーテッドなプラグインでサポートされている。
又は、
そのコンテンツが、大学、企業内ネットワークのような閉じた環境で利用できるものである。この環境で、その技術に必要とされていて、その組織で使用されているユーザエージェントがアクセシビリティ サポーテッドである。
又は、
その技術をサポートするユーザエージェントが、アクセシビリティ サポーテッドであって、次の方法でダウンロード又は購入できる:
- 障害のある人の費用が、障害のない人の費用を上回ることがなく、かつ、
- 障害のある人も、障害のない人と同程度に容易に探して入手できる。
Accessibility Guidelines Working Group 及び W3C は、あるウェブ技術の特定の使用方法がアクセシビリティ サポーテッドであると分類するために、どの支援技術によるどれだけのサポートが必要なのかを定めない (Level of Assistive Technology Support Needed for "Accessibility Support" を参照)。
ウェブ技術がアクセシビリティ サポーテッドな方法で用いられている場合、その技術全体、又はその技術の使用方法すべてがアクセシビリティ サポーテッドであるということを暗に示すわけではない。ほとんどの技術は、HTML を含めてアクセシビリティ サポーテッドではない機能、又は使用方法が少なくとも一つある。ウェブページが WCAG に適合するのは、依存する技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法を用いて WCAG の要件を満たしている場合だけである。
複数のバージョンを有するウェブコンテンツ技術を挙げる際は、アクセシビリティ サポーテッドなバージョンを特定すべきである。
コンテンツ制作者が技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法を見つける方法の一つは、アクセシビリティ サポーテッドであることが文書化されている使用方法の資料を参照することである (ウェブ技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用法を理解する を参照)。コンテンツ制作者、企業、技術ベンダー、又はその他の者が、ウェブコンテンツ技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法を文書化してもよい。しかし、文書中の技術の使用方法はすべて、上記のアクセシビリティ サポーテッドなウェブコンテンツ技術の定義を満たしている必要がある。
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
与えられた規格、ガイドライン、又は仕様のすべての要件を満たすこと。
もし取り除いてしまうと、コンテンツの情報又は機能を根本的に変えてしまい、かつ、適合する他の方法では情報及び機能を実現できない。
利用者の操作により実現可能なプロセス及び結果。
人間とコミュニケーションをとるために話される、書かれる、又は (視覚的もしくは触覚的な手段で) 手話にされる言語。
手話も参照。
結果を得るためのプロセス又は手法。
メカニズムは、宣言する適合レベルのすべての達成基準を満たさなければならない。
ある活動を完了させるために必要な利用者の一連の動作。
ショッピングサイト上の一連のウェブページで目的を果たすためには、利用者が選択肢となりうる製品、価格及び内容を閲覧した後、製品を選択して注文し、配送先情報及び支払情報を入力する必要がある。
アカウント登録ページでは、登録フォームにアクセスする前にチューリングテストに成功する必要がある。
意味を伝えるために、手と腕の動き、顔の表情又は身体の姿勢の組み合わせを用いる言語。
ユーザエージェントがどのようにレンダリング、再生、又は実行するかを符号化するメカニズム。
このガイドラインで用いられている「ウェブ技術」及び (単独で用いられている) 「技術」という用語は、どちらもウェブコンテンツ技術を指す。
ウェブコンテンツ技術には、マークアップ言語、データ形式、及びプログラム言語などがあり、これらをコンテンツ制作者が単独で、又は組み合わせて用いることによって、静的なウェブページや同期したメディアによる提示、さらには動的なウェブアプリケーションに至るまでの様々なエンドユーザ体験を作ることができる。
ウェブコンテンツ技術のよくある事例としては、HTML、CSS、SVG、PNG、PDF、Flash、 JavaScript などがある。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブコンテンツの取得、レンダリング及びインタラクションを支援する、ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム (支援技術も含む)。
コンテンツの一部分で、特定の機能を実現するための単一のコントロールとして利用者が知覚するもの。
複数のユーザインタフェース コンポーネントが、単一のプログラム要素で実装されることもある。ここでいうコンポーネントは、プログラムの手法と結びついたものではなく、利用者が別々のコントロールとして知覚するものを指す。
ユーザインタフェース コンポーネントには、フォーム要素、リンクだけでなく、スクリプトで生成されるコンポーネントが含まれる。
ここでの「コンポーネント」又は「ユーザインタフェース コンポーネント」は、「ユーザインターフェース要素」とも呼ばれる。
アプレットには、コンテンツ内を行単位、ページ単位、又はランダムアクセスで移動するために用いられる「コントロール」がある。これらには、いずれも名前 (name) を割り当て、個別に設定できるようにする必要があるため、それぞれが「ユーザインタフェース コンポーネント」となる。