WCAG 2.1 解説書は、"Web Content Accessibility Guidelines 2.1" を理解して実践するために不可欠な案内書である。WCAG 2.1 の規定となる定義や要件はすべて WCAG 2.1 自体の文書で読むことができるが、その考え方や条項に馴染みのない方もいるかもしれない。WCAG 2.1 解説書は、読者の皆さんがその意図やどのようにガイドラインと達成基準が連携しているのかをよりよく理解できるように、各ガイドライン、及び、各達成基準について、WCAG 2.1 の規定にはならない詳細な解説を提供している。また、それぞれの達成基準を満たすのに十分であることをワーキンググループが確認した達成方法、及び、達成方法の組合せの事例も紹介している。そして、それぞれの達成方法の詳細にもリンクを提供している。
この文書は、入門書ではなく、ガイドラインとその達成基準に関する詳細な技術解説である。WCAG やその関連技術文書、教育用素材などへのイントロダクションは、Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) Overview を参照のこと。
WCAG 2.1 解説書は、ガイドラインごとに構成されている。各ガイドラインには、ガイドライン X.Xを理解するという節がある。そのガイドラインの意図と、ガイドラインに関係あるが、そのガイドラインの達成基準のいずれにも特に関係のない参考達成方法も同様にそこに列挙されている。
ガイドライン X.Xを理解するという節の後には、そのガイドラインの達成基準ごとに、達成基準 X.X.Xを理解するという節が続いている。これらの節にはそれぞれ以下の情報が提供されている:
WCAG 2.1 に書かれている達成基準
その達成基準の意図
メリット (その達成基準が、どのように障害のある利用者の役に立つのか)
事例
関連リソース
その達成基準の十分な達成方法及び達成方法の組合せ
この達成基準のよくある失敗例
その達成基準を満たすための要求を超えているが、一部のあるいはすべてのコンテンツをさらにアクセシブルにするために用いることのできる参考達成方法。参考達成方法を使用することで、宣言する適合レベルに影響を及ぼすことはない。
この達成基準における重要な用語 (WCAG 2.1 の用語集から引用)
WCAG 2.1 文書の各ガイドラインからは、この文書のガイドライン X.X を理解するという節に直接リンクしている。同様に、WCAG 2.1 文書の各達成基準からも、この文書の達成基準 X.X.X を理解するという節に直接リンクしている。
個々の達成方法に関する情報については、この文書中にあるリンクから、WCAG 2.1 達成方法集で関心のある達成方法を参照のこと。
様々な障害や支援技術に関する情報については、Disabilities on Wikipedia を参照のこと。
アクセシビリティの四つの原則を理解する
ガイドライン及び達成基準は、誰もがウェブコンテンツにアクセスして利用するために必要な土台となる、次の四つの原則を中心に構成されている。ウェブを利用したい誰もが、コンテンツに求めるのは次のことである:
知覚可能 - 情報及びユーザインタフェースコンポーネントは、利用者が知覚できる方法で利用者に提示可能でなければならない。
これは、利用者が提示されている情報を知覚できなければならないことを意味する (利用者の感覚すべてに対して知覚できないものであってはならない)。
操作可能 - ユーザインタフェースコンポーネント及びナビゲーションは操作可能でなければならない。
これは、利用者がインタフェースを操作できなければならないことを意味する (インタフェースが、利用者の実行できないインタラクションを要求してはならない)。
理解可能 - 情報及びユーザインタフェースの操作は理解可能でなければならない。
これは、利用者がユーザインタフェースの操作と情報とを理解できなければならないことを意味する (コンテンツ又は操作が、理解できないものであってはならない)。
堅牢 (robust) - コンテンツは、支援技術を含む様々なユーザエージェントが確実に解釈できるように十分に堅牢でなければならない。
これは、利用者が技術の進歩に応じてコンテンツにアクセスできなければならないことを意味する (技術やユーザエージェントの進化していったとしても、コンテンツはアクセシブルなままであるべきである)。
もし、これらのいずれかが当てはまらなければ、障害のある利用者はウェブを利用することができなくなる。
それぞれの原則の下には、障害のある利用者のためのこれらの原則に対処するのに役立つ、ガイドライン及び達成基準がある。障害のある利用者を含むすべての利用者にとってコンテンツをより使いやすくする一般的なユーザビリティガイドラインは数多く存在する。しかし、WCAG 2.1 においては、障害のある利用者に特有の問題に対処するガイドラインだけが含まれている。これには、障害のある人のウェブへのアクセスを妨げる、またはウェブへのアクセスをより深刻な干渉をする問題が含まれる。
ガイダンスのレイヤー
ガイドライン
それぞれの原則の下には、その原則に対応するガイドラインのリストがある。全部で 12 のガイドラインがある。ガイドラインだけの一覧は、WCAG 2.1 目次で見ることができる。ガイドラインの重要な目的の一つは、コンテンツが、できるだけ多くの利用者にとってそのままでアクセシブルであるようにすることであり、様々な利用者の感覚的、身体的及び認知的能力に合った様々な形態で再提示できるようにすることである。
達成基準
それぞれのガイドラインの下には、WCAG 2.1 に適合するためには何をしなければならないのかを具体的に記述した達成基準がある。それは、WCAG 1.0 における「チェックポイント」によく似たものである。それぞれの達成基準は、特定のウェブコンテンツをその達成基準によってテストしたときに適合もしくは不適合が判別できるように記述されている。そして、達成基準はウェブコンテンツ技術に依存しないように書かれている。
WCAG 2.1 の達成基準はすべて、コンテンツがその達成基準を満たしているかどうかを客観的に判断するテスト可能な基準として記述されている。テストには、評価プログラムのソフトウェアを用いた自動化可能なものもあれば、その一部又は全部に人間によるテストを必要とするものもある。
コンテンツが達成基準を満たしていたとしても、そのコンテンツは様々な障害のある利用者にとって利用可能であるとは限らない。ある利用者にとってのアクセシビリティを確保する上では、専門家による広く認められている定性的なヒューリスティック評価が重要である。さらに、ユーザビリティテスティングが推奨される。ユーザビリティテスティングは、その用途に応じて、利用者がコンテンツをどれだけうまく使えるかを判断することを目的としている。
様々な種類の障害のある人がどのようにウェブを利用しているのかを理解している人が、コンテンツをテストすべきである。人間によるテストを行う際には、障害のある利用者をテストグループに含めることを推奨する。
ガイドラインの各達成基準には、次のものを提供する How to Meet 文書の節へのリンクがある:
その十分な達成方法
任意の参考達成方法
達成基準の意図、及びメリットの説明、事例
十分な達成方法及び参考達成方法、及び失敗例
次の節 WCAG 達成基準の達成方法を理解するでは、達成方法に関する重要な情報を提供している。