意図
この達成基準の意図は、テキストによる特定の視覚的な提示を必要とする人が、必要に応じてテキストによる提示を調整できるようにすることである。これは、テキストに、特定のフォントサイズ、前景色及び背景色、書体、行間、又は配置を必要とする人を含む。
これは、テキストによる提示を変更できるようにそのテキストを実装すること、又は利用者が代替の提示を選択できるメカニズムを提供することを意味する。文字画像を使用することは、利用者がテキストの提示を変更することを許さない実装の一例である。
状況によっては、テキストの特定の視覚的提示がその情報を伝える上で不可欠である。これは、その特定の視覚的提示でないと、その情報が損なわれてしまうことを意味する。この場合は、テキストを変更できるような方法で実装する必要はない。これには、特定の書体のようなテキストの特定の視覚的な側面を示すテキスト、又は企業のロゴ内にあるテキストのようなアイデンティティを伝えるテキストが含まれる。
装飾を目的にした文字は、その提示を変更できるように実装する必要はない。
文字画像の定義には、「注記: テキスト以外の部分が重要な視覚的コンテンツである場合、画像に含まれるテキストは該当しない。」とある。そのような画像の事例としては、グラフ、スクリーンショットやダイアグラムなどが挙げられ、それらは文字以外のものを通じて重要な情報を視覚的に伝えているからである。
メリット
- ロービジョンの利用者 (コンテンツ制作者の指定した書体、サイズ、及び/又は色では、テキストが読みづらいことがある)
- 視線移動に問題のある利用者 (コンテンツ制作者の指定した行間及び/又は配置では、テキストが読みづらいことがある)
- 読字に影響を及ぼす認知の障害のある利用者
事例
引用
あるウェブページに引用がある。その引用部分自体は、イタリックのテキストで、左側をインデントした状態で提示されている。その引用した部分の人名が、引用の下に 1.5 倍の行間を空けて、左側からさらにインデントした状態になっている。そのテキストの配置、行間スペースの指定、そしてテキストの書体、サイズ、色及び装飾には、CSS を用いている。
ナビゲーション
ウェブページに、ナビゲーションリンクのメニューがあり、アイコンとテキストの両方でリンク先を示している。CSS を用いて、テキストの書体、サイズ、前景色及び背景色、そしてナビゲーションリンク間の間隔を指定している。
文字を含んだロゴ
あるウェブサイトには、各ウェブページの左上のコーナーに組織のロゴがある。そのロゴには、ロゴタイプ (ロゴの一部又は全部がテキスト) がある。テキストの視覚的提示は、そのロゴの特定に不可欠であり、そのテキストの特徴を変更することができない GIF 画像として含まていれる。そして、その画像には、テキストによる代替がある。
書体のサンプル
ウェブページに、特定の書体に関する情報がある。その書体を他の書体に置き換えると、サンプルとしての目的が損なわれてしまう。そのサンプルは、その文字の特徴を変更することができない JPEG 画像である。そして、その画像には、テキストによる代替がある。
手紙の写し
ウェブページに、手紙の原本を描写したものがある。オリジナルの体裁でその手紙を見せることが、その手紙の書かれた時代に関する情報を伝える上で不可欠である。その手紙は、その文字の特徴を変更することができない GIF 画像である。そして、その画像には、テキストによる代替がある。
記号的な文字
利用者がテキストのブロックを入力できるフォームがある。そのフォームは、テキストのスタイル指定やスペルチェックなどの機能のボタンをたくさん提供している。ボタンの中には文字を用いたものがあり、その文字に自然言語で何かを表現する並び順はない。例えば、フォントを太字にする機能には "B"、テキストをイタリックにする機能には "I"、そしてスペルチェックの機能には "ABC" が使われている。その記号的な文字は、その文字の特徴を変更することができない GIF 画像としてボタンになっている。そして、そのボタンにはテキストによる代替がある。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
参考達成方法
適合のために必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするために、次の追加の達成方法を検討することが望ましい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、又は効果的であるとは限らない。
重要な用語
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害のある個人を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
もし取り除いてしまうと、コンテンツの情報又は機能を根本的に変えてしまい、かつ、適合する他の方法では情報及び機能を実現できない。
人間とコミュニケーションをとるために話される、書かれる、又は (視覚的もしくは触覚的な手段で) 手話にされる言語。
手話も参照。
特定の視覚的効果を得るために非テキスト形式 (例えば画像) でレンダリングされたテキスト。
テキスト以外の部分が重要な視覚的コンテンツである場合、画像に含まれるテキストは該当しない。
写真に写っている人の名札にある人名。
支援技術を含む様々なユーザエージェントが抽出でき、利用者に様々な感覚モダリティで提示できるような形のデータがコンテンツ制作者によって提供されたとき、そのデータがソフトウェアによって解釈されること。
マークアップ言語で、一般に入手可能な支援技術が直接アクセスできる要素と属性から解釈される。
非マークアップ言語の技術特有のデータ構造から解釈され、一般に入手可能な支援技術がサポートするアクセシビリティ API を通じて支援技術に提供される。
見栄えのためだけのもので、情報は提供せず、機能性も備えていないもの。
テキストが純粋な装飾といえるのは、単語を並べ替え、又は置き換えても意図が変わらないときだけである。
背景にとても淡い文字で単語がランダムに並んでいる辞書の表紙。
意味を伝えるために、手と腕の動き、顔の表情又は身体の姿勢の組み合わせを用いる言語。
プログラムによる解釈が可能な文字の並びで、自然言語で何かを表現しているもの。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブコンテンツの取得、レンダリング及びインタラクションを支援する、ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム (支援技術も含む)。