意図
この達成基準の意図は、ウェブページ一式で繰り返して表示される機能的なコンポーネントを一貫して識別できるようにすることである。ウェブサイトを操作する際にスクリーンリーダーを使用している利用者は、複数のウェブページで使われている機能に馴染みがあるかどうかに大きく依存している。全く同じ機能が、複数のウェブページ毎に異なるラベル (すなわち、より一般的には、異なる アクセシブルな名前 (accessible name)) を付けられている場合、そのウェブサイトはかなり使いづらいものになってしまう。それは、認知的限界のある人々に混乱をもたらし、認知的負荷を増大させてしまうことがある。したがって、一貫したラベルが役立つ。
この一貫性は、テキストによる代替にも及ぶ。アイコン又はその他の非テキスト項目が同じ機能を持つ場合、そのテキストによる代替も同様に一貫性をもたせることが望ましい。
ウェブページ一式の中で、もしウェブページに二つコンポーネントがあり、そのどちらも別のページにあるコンポーネントと同じ機能を持っているのであれば、三つのコンポーネントは一貫していなければならない。よって、同じページにある二つのコンポーネントは一貫していることになる。
一つのウェブページにおいて一貫性を持つことは望ましく、かつ最善の対応策だが、3.2.4 はウェブページ一式において 1 ページ以上何かが繰り返される場合の一貫性の対処である。
メリット
- あるサイトのあるページで機能を学習した人は、それらが存在する場合、他のページで目的の機能を見つけることができる。
- 非テキストコンテンツが同じ機能を持つコンポーネントを特定するために一貫した方法で使用されている場合、テキストを読むことや、テキストによる代替を見つけることが困難な人は、テキストによる代替を頼りにすることなくウェブとやり取りができる。
- テキストによる代替を頼りにしている人は、より予測可能な体験ができるようになる。異なるページに一貫したラベルがある場合、そのコンポーネントを検索することもできる。
事例
事例 1: 文書のアイコン
文書のアイコンは、サイトの至る所で文書のダウンロードを示すために使用される。そのアイコンのテキストによる代替は、どれも「ダウンロード」という単語で始まっていて、その後に文書のタイトルの短縮形が続いている。異なる文書の異なるタイトルを示すために異なるテキストによる代替を用いることは、テキストによる代替の一貫した使用である。
事例 2: チェックマーク
チェックマークのアイコンは、あるページでは「承認済」として機能しているが、別のページでは「あり」として機能している。異なる意味で使われているので、異なるテキストによる代替を持っている。
事例 3: 他のページへの一貫したリンクのラベル
あるウェブサイトが、オンライン記事を発行している。各記事は複数のウェブページにわたっており、各ページには記事の最初のページ、次のページ、そして前のページへのリンクがある。もし、次のページへのリンクのラベルが、「ページ 2」、「ページ 3」、「ページ 4」などとなっていたとしても、ラベルは同一ではないが、一貫しているといえる。そのため、こういったラベルは、この達成基準の失敗例ではない。
事例 4: 似たような機能のアイコン
e コマース アプリケーションは、利用者が領収書又は請求書を印刷できること許可するプリンタのアイコンを使用している。アプリケーションのある部分では、プリンタのアイコンに「領収書を印刷」のラベルが付けられ、領収書を印刷するために使われており、さらに、他の部分に「請求書を印刷」のラベルが付けられ、請求書を印刷するために使われている。ラベルの付け方 (…を印刷) は一貫しているが、ラベルはアイコンの異なる機能を反映するために異なっている。そのため、この例はこの達成基準の不適合事例ではない。
事例 5: 保存アイコン
共通の「保存」アイコンは、複数のウェブページにページ保存機能が提供されているサイトから使用される。
事例 6: アイコンと隣接した同じ目的地へのリンク
代替テキストの記載されたアイコン及びテキストリンクが隣接して配置されており、かつリンク先は同じである。最善の対応策は、H2: 同じリソースに対して隣接する画像とテキストリンクを結合する による通り、一つのリンクにグループ化することである。しかし、もし視覚的には上下に配置されているが、ソースでは独立している場合、これは不可能であるかもしれない。この達成基準を満たすには、これら二つのリンクテキストが、同一ではなくとも、一貫していれば良い。しかし、最善の対応策は、利用者が二つ目のリンクに遭遇した時、一つ目のリンクと同じリンク先に行くことが明確であるよう、同一のリンクテキストにすることである。
事例 7: 失敗例
あるウェブページにある「検索」ボタンと他のページにある「探す」ボタンは、どちらも用語を入力するためのフィールドがあり、送信された用語に関連するウェブサイト内のトピックを一覧表示する。この場合、ボタンは同じ機能を持っているが、ラベルに一貫性がない。
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事例 8: 主に支援技術の利用者に影響を与える失敗例
同じ機能を持つ二つのボタンは、視覚的には同じテキストであるが、
aria-label="..."
により異なるアクセシブルな名前 (accessible name) が付けられている。支援技術の利用者の場合、これら二つのボタンは異なる方法で一貫性のない方法で通知される。
達成方法
この節にある番号付きの各項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組み合わせを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。その他の達成方法についての詳細は、WCAG 達成基準の達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
- G197: 同じ機能を有するコンテンツに対して、一貫したラベル、名前 (name) 及びテキストによる代替を使用する、かつ、達成基準 1.1.1 を満たすことのできる達成方法かつ達成基準 4.1.2 を満たすことのできる達成方法に従ってラベル、名前 (name)、テキストによる代替を提供する。
「一貫した」テキストによる代替は、常に「同一」であるとは限らない。例えば、次のウェブページへリンクするウェブページの下部にあるグラフィカルな矢印があるとする。テキストによる代替は、「4 ページに移動」と言うかもしれない。当然ながら、次のウェブページでそのままこのテキストによる代替を繰り返すのは適切ではない。「5 ページに移動」と言う方がより適切であろう。これらのテキストによる代替は同一ではないが、一貫しており、この達成基準に適合しているといえる。
単一の非テキストコンテンツのアイテムが、異なる機能のために使われることがある。そのような場合、異なるテキストによる代替が必要であり、用いられるべきである。チェックマーク、クロスマーク、そして交通標識などのアイコンを使用する際によく見られる例である。それらの機能は、ウェブページの文脈によって異なる可能性がある。チェックマークのアイコンは、その状況に応じて、「承認済」、「完了」、又は「あり」という意味で使われることがある。すべてのウェブページを通じてテキストによる代替を「チェックマーク」として用いても、利用者がそのアイコンの機能を理解することができない。同一の非テキストコンテンツが複数の機能を果たしている場合は、異なるテキストによる代替を用いることができる。
失敗例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準の失敗例とみなした、よくある間違いである。
重要な用語
障害のある利用者の要件を満たすために、主流のユーザエージェントが提供する機能を超えた機能を提供するような、ユーザエージェントとして動作する、又は主流のユーザエージェントと共に動作するハードウェア及び/又はソフトウェア。
支援技術が提供する機能としては、代替の提示 (例: 合成音声や拡大表示したコンテンツ)、代替入力手法 (例: 音声認識)、付加的なナビゲーション又は位置確認のメカニズム、及びコンテンツ変換 (例: テーブルをよりアクセシブルにするもの) などを挙げることができる。
支援技術は、API を利用、監視することで、主流のユーザエージェントとデータやメッセージのやりとりをすることが多い。
主流のユーザエージェントと支援技術との区別は、絶対的なものではない。多くの主流のユーザエージェントは、障害者を支援する機能を提供している。基本的な差異は、主流のユーザエージェントが障害のある人もない人も含めて、広く多様な利用者を対象にしているのに対し、支援技術は、特定の障害のある利用者という、より狭く限られた人たちを対象にしているということである。支援技術により提供される支援は、対象とする利用者に特化した、よりニーズに適したものである。主流のユーザエージェントは、プログラムオブジェクトからのウェブコンテンツの抽出、マークアップの識別可能な構造への解釈といった、重要な機能を支援技術に対して提供する場合がある。
この文書の文脈において重要な支援技術としては、以下のものが挙げられる:
- 画面拡大ソフト及びその他の視覚的な表示に関する支援技術。視覚障害、知覚障害、及び読書困難などの障害のある人が、レンダリング後のテキスト及び画像の視覚的な読みやすさを改善するために、テキストのフォント、サイズ、間隔、色、音声との同期などを変更するのに使用している。
- スクリーンリーダー。全盲の人がテキスト情報を合成音声あるいは点字で読み取るために使用している。
- 音声変換ソフトウェア。認知障害、言語障害、及び学習障害のある人が、テキストを合成音声に変換するために使用している。
- 音声認識ソフトウェア。何らかの身体障害のある利用者が使用することがある。
- 代替キーボード。特定の身体障害のある人がキーボード操作をシミュレートするのに使用している (ヘッドポインタ、シングルスイッチ、呼気・吸気スイッチ、及びその他の特別な入力デバイスを使った代替キーボードを含む)。
- 代替ポインティングデバイス。特定の身体障害のある人がマウスポインタとボタンの動きをシミュレートするのに使用している。
使うと同じ結果が得られること。
あるウェブページ上にある "search" ボタンと他のウェブページ上にある "find" ボタンは、どちらもキーワードを入力するテキストフィールドがあり、そのウェブサイトにある入力されたキーワードに関係のあるコンテンツをリスト表示する。この場合、同じ機能を有しながらも、ラベルは一貫していないことになる。
共通の目的を共有し、同じコンテンツ制作者、グループ、又は組織により制作されたウェブページの集合。
他言語版は、異なるウェブページ一式と見なされることもある。
ウェブコンテンツを取得して利用者に提示するあらゆるソフトウェア。
ウェブコンテンツの取得、レンダリング及びインタラクションを支援する、ウェブブラウザ、メディアプレーヤ、プラグイン、及びその他のプログラム (支援技術も含む)。
単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。
どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。
このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。
すべての埋め込まれている画像とメディアを含んだウェブリソース。
Asynchronous JavaScript and XML (AJAX) を用いたウェブメールのプログラム。そのプログラム全体は http://example.com/mailに存在しているが、受信箱、アドレス帳、カレンダーがある。リンク又はボタンがあり、それを押すと受信箱、アドレス帳やカレンダーを表示するが、ページのURIは全体を通して変わらない。
カスタマイズ可能なポータルサイトで、利用者が様々なコンテンツモジュールのセットから表示させるコンテンツを選択できるようなもの。
ブラウザで"http://shopping.example.com/"へ行くと、映画のようなインタラクティブなショッピング環境になる。そこでは、視覚的に店内を移動して、店内の棚から商品をドラッグして、目の前にある視覚的な買物カゴに商品を入れる。商品をクリックすると、同時に仕様書が浮き上がるように表示される。これは1ページだけのウェブサイトかもしれないし、ウェブサイトの中のほんの1ページなのかもしれない。