WCAG 2.0解説書

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エラー回避 (法的、金融、データ) :
達成基準 3.3.4 を理解する

3.3.4 エラー回避 (法的、金融、データ) : 利用者にとって法律行為もしくは金融取引が生じる、利用者が制御可能なデータストレージシステム上のデータを変更もしくは削除する、又は利用者が試験の解答を送信するウェブページでは、次に挙げる事項のうち、少なくとも一つを満たしている: (レベル AA)

  1. 取消: 送信を取り消すことができる。

  2. チェック: 利用者が入力したデータの入力エラーがチェックされ、利用者には修正する機会が提供される。

  3. 確認: 送信を完了する前に、利用者が情報の見直し、確認及び修正をするメカニズムが利用できる。

この達成基準の意図

この達成基準の意図は、障害のある利用者が元の状態に戻すことのできないタスクを行った際、ミスをしたことによる重大な結果を未然に防ぐことができるようにすることである。例えば、払い戻し不可の航空券の購入、又は証券取引口座での株購入の注文は、重大な結果につながる金銭的な取引である。利用者が発着日を間違えれば、その利用者は交換できない誤った日付の航空券を購入したことになってしまう。利用者が購入する株式の数を間違えると、意図した数よりも多くの株式を購入したことになってしまう。どちらのミスも、すぐに処理される取引であり、後から変更することはできないものであり、また非常に高価である。同様に、旅行サービスのウェブサイトにある旅行履歴のように、後からアクセスする必要のあるデータベースのデータを無意識に修正又は削除してしまった場合、そのエラーは回復不能なことがある。「利用者が自分で制御可能な」データの変更又は削除を参照する場合、この達成基準の意図は、ファイル又はレコードの削除のようなデータの大量損失を防ぐことである。各保存コマンド又は単純な作成又はドキュメント、レコードもしくは他のデータの編集するための確認を必要とすることを意図しない。

障害のある利用者は、ミスをしてしまう可能性が高い。読字障害のある利用者は、数字と文字を取り違えてしまうことがあるし、運動障害のある利用者は間違ってキーを押してしまうことがある。元の状態に戻せるようにすることによって、利用者が重大な結果につながる恐れのあるミスを修正できるようになる。また、入力内容を確認して修正できるようにすることで、重大な結果につながることをしてしまう前に、利用者がミスに気づくことができるようになる。

利用者が自分で制御可能なデータというのは、利用者が意図的行為を通して変更及び/又は削除できる利用者が閲覧可能なデータである。そのようなデータを制御する利用者の例としては、利用者のアカウントの電話番号及び住所を更新する、又はウェブサイトから過去の請求書のレコードを削除することが挙げられる。これは、利用者が直接に表示又は情報交換できないインターネットのログ又は検索エンジンの監視データのようなものを指すものではない。

達成基準 3.3.4の具体的なメリット:

  • ミスによる重大な結果を未然に防ぐ手段を提供することによって、ミスをする可能性の高い障害のある利用者すべてに役立つ。

達成基準 3.3.4の事例

関連リソース

リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。

(今のところ、文書化されていない)

達成基準 3.3.4 の達成方法及び不適合事例 - エラー回避 (法的、金融、データ)

この節にある番号付の項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組合せを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。他の達成方法についての情報は、達成基準を満たすための達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。

十分な達成方法

使用法: そのコンテンツに合致する状況を以下から選択すること。それぞれの状況には、WCAG ワーキンググループがその状況において十分であると判断する、番号付の達成方法(又は、達成方法の組合せ)がある。

状況 A: アプリケーションで、購入又は所得税申告の提出のように、法的なトランザクションが発生する場合:

  1. G164: フォームの送信後に、利用者がそのオンラインでのリクエスト(またはトランザクション)を修正またはキャンセルできる一定の時間を提供する

  2. G98: 送信する前に、利用者が解答を確認及び修正できるようにする

  3. G155: 送信ボタンに加えてチェックボックスを提供する

状況 B: 利用者のアクションによって情報が削除される可能性がある場合:

  1. G99: 消去した情報を元に戻せるようにする

  2. G168: 選択されたアクションを続行するために確認を求める

  3. G155: 送信ボタンに加えてチェックボックスを提供する

状況 C: ウェブページに試験を実施するアプリケーションがある場合:

  1. G98: 送信する前に、利用者が解答を確認及び修正できるようにする

  2. G168: 選択されたアクションを続行するために確認を求める

3.3.4 でさらに対応が望まれる達成方法(参考)

適合するためには必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするためには、次の付加的な達成方法もあわせて検討するとよい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、または効果的であるとは限らない。

達成基準 3.3.4 のよくある不適合事例

以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準3.3.4に適合していないとみなした、よくある不適合事例である。

(今のところ、文書化された不適合事例はない)

重要な用語

ウェブページ (Web page)

単一の URI から HTTP で得た埋め込まれていないリソースに加え、 レンダリングに使われる、又はユーザエージェントがこのリソースと一緒にレンダリングすることを意図しているその他のあらゆるリソースを合わせたもの。

注記 1: どのような「その他のリソース」も主たるリソースと一緒にレンダリングされるであろうが、これらのリソースが同時にレンダリングされるとは限らない。

注記 2: このガイドラインの適合範囲に含まれる対象となるウェブページとみなされるためには、リソースが「埋め込まれていない」リソースでなければならない。

事例 1: すべての埋め込まれている画像とメディアを含んだウェブリソース。

事例 2: Asynchronous JavaScript and XML (AJAX) を用いたウェブメールのプログラム。そのプログラム全体は http://example.com/mail に存在しているが、受信箱、アドレス帳、カレンダーがある。リンクまたはボタンがあり、それを押すと受信箱、アドレス帳やカレンダーを表示するが、ページの URI は全体を通して変わらない。

事例 3: カスタマイズ可能なポータルサイトで、利用者が様々なコンテンツモジュールのセットから表示させるコンテンツを選択できるようなもの。

事例 4: ブラウザで"http://shopping.example.com/" へ行くと、映画のようなインタラクティブなショッピング環境になる。そこでは、視覚的に店内を移動して、店内の棚から商品をドラッグして、目の前にある視覚的な買物カゴに商品を入れる。商品をクリックすると、同時に仕様書が浮き上がるように表示される。これは1ページだけのウェブサイトかもしれないし、 ウェブサイトの中のほんの1ページなのかもしれない。

メカニズム (mechanism)

結果を得るためのプロセス又は手法。

注記 1: メカニズムは、コンテンツ内で明示的に提供されることもあれば、プラットフォーム又は支援技術を含むユーザエージェントで提供されるものに 依存することもある。

注記 2: メカニズムは、宣言する適合レベルのすべての達成基準を満たさなければならない。

入力エラー (input error)

利用者が入力した情報で、受け付けられないもの。

注記: 以下のものが含まれる:

  1. そのウェブページでは必須であるが、利用者が入力しなかった情報

  2. 利用者が入力したが、要求されたデータ形式あるいは値ではない情報

利用者が制御可能 (user-controllable)

利用者によってアクセスされることを意図したデータ。

注記: これは、インターネットのログや検索エンジンの監視データのようなものは指していない。

事例: ユーザアカウントのための氏名と住所のフィールド。

法律行為 (legal commitments)

法的に拘束力のある義務あるいは利益が発生する取引。

事例: 結婚許可証、株取引 (金銭上及び法的)、遺言、ローン、採用、軍隊への入隊登録、あらゆる契約、など