音声のみ (ライブ) :
達成基準 1.2.9 を理解する
1.2.9 音声のみ (ライブ) : ライブの音声しか含まないコンテンツに対して、それと同等の情報を提示する、時間依存メディアの代替コンテンツが提供されている。 (レベル AAA)
この達成基準の意図
この達成基準の意図は、例えばテレビ会議のような、ライブの音声、ライブの発話、及びラジオのウェブキャストが伝えている情報を、代替テキストを用いることによってアクセシブルにすることである。ライブのキャプション付加サービスは、デフ又は音声の聞こえづらい利用者、あるいは他のやり方で音声を聞くことのできない利用者に対してライブの音声をアクセシブルにすることが可能であろう。そういったサービスでは、訓練された人間のオペレーターが、話の内容を聞きながら、特殊なキーボードを用いてほんの少しの遅延だけでテキストを入力している。オペレーターは、かなり忠実にライブの出来事をテキストで記録することができる。また、内容を理解する上で不可欠な発話以外の音声に関する注記も挿入することができる。ライブの音声が予め用意された現行通りのものであれば、書き起こしテキストを事前に準備しておけることもある。しかし、ライブのキャプション付加サービスのほうが好まれる。なぜなら、キャプションが音声自体と同じペースで表示され、台本にはないことが起こったとしてもそれに対処できるからである。
訓練されていないオペレーターを使用したり、実際に起こっていることとは明らかに違う書き起こしテキストを提供したりしている場合は、この達成基準を満たしているとはいえない。
この達成基準は、音声の放送に適用することを意図しており、Webアプリケーションを介し2人ないしそれ以上の個人同士で行う双方向のマルチメディア電話に対し、利用者の要求の有無にかかわらずキャプションの提供を求めることは意図していない。キャプションを提供する責任は、コンテンツの提供者(電話をかけた人)または「ホスト」として電話をかけた人に課せられるもので、アプリケーションには課せられない。
達成基準 1.2.9の事例
ある広告会社が、ウェブベースのキャプションサービスを利用して、ライブのイベントのキャプションを提供している。そのサービスによるキャプションは、ストリーミングの音声制御コントロールのあるウェブページのサブフレームに表示されている。
フリンジ劇場のライブのラジオ劇が、ウェブで放送されている。俳優たちが大部分は用意された台本通りに演じていて、番組の予算が限られているため、(脚本家の許諾を得た上で)プロデューサーは劇の台本へのリンクを提供している。
ストリーミングの音声サーバーは、例えば Flash や Silverlight のように、テキスト及びグラフィックも使用可能なメディア形式を利用している。速記者が、あるイベントでライブのキャプションを書き起こしていて、それがその場で組み込まれて、メディアプレーヤーで閲覧可能なメディア配信のライブのキャプションとして使われている。
ある CEO が、ニュース速報の報道に反応して、報道メディア向けに電話による記者発表を行っている。その音声を録音して、インターネット上でも配信したが、時間の制約があって、ウェブ・キャプション付加サービスを間に合わせることができなかった。CEO がそこで読み上げる記者発表の内容は予め準備されていたので、その会社は発表内容の書き起こしテキストを同時に提供することにした。
関連リソース
リソースは、情報提供のみを目的としており、推奨を意味するものではない。
達成基準 1.2.9 の達成方法及び不適合事例 - 音声のみ (ライブ)
この節にある番号付の項目は、WCAG ワーキンググループがこの達成基準を満たすのに十分であると判断する達成方法、又は複数の達成方法の組合せを表している。しかしながら、必ずしもこれらの達成方法を用いる必要はない。他の達成方法についての情報は、達成基準を満たすための達成方法を理解するの「その他の達成方法」を参照のこと。
十分な達成方法
1.2.9 でさらに対応が望まれる達成方法(参考)
適合するためには必須ではないが、コンテンツをよりアクセシブルにするためには、次の付加的な達成方法もあわせて検討するとよい。ただし、すべての状況において、すべての達成方法が使用可能、または効果的であるとは限らない。
テキストトランスクリプションと音声しか含まないコンテンツを関連付けるためにメタデータを使う(リンク追加予定)
事例: 音声ファイルの様々な書き起こしテキスト(英語、フランス語、ドイツ語)を指し示すURIを、メタデータの中で、提供する。
達成基準 1.2.9 のよくある不適合事例
以下に挙げるものは、WCAG ワーキンググループが達成基準1.2.9に適合していないとみなした、よくある不適合事例である。
(今のところ、文書化された不適合事例はない)
重要な用語
- ライブ (live)
現実の出来事から取り込まれ、放送遅延以上の遅延なく受け手に送信される情報。
注記 1: 放送遅延は、短時間の (通常は自動的な) 遅れで、例えば放送局に放送のタイミングの調整や音声 (又は映像) の検閲のための時間を与えるものだが、意味のある編集ができるほどのものではない。
注記 2: もし情報が完全にコンピュータで生成されたものならば、それはライブではない。
- 時間依存メディアに対する代替コンテンツ (alternative for time-based media)
時間依存の視覚的及び聴覚的情報を正しい順序で説明したテキストを含み、あらゆる時間依存のインタラクションによる結果を得る手段を提供している文書。
注記: 同期したメディアのコンテンツを作るために用いられる脚本は、編集が終了した最終版の同期したメディアを正確に描写した脚本に修正されている場合だけ、この定義を満たす。
- 音声しか含まない (audio-only)